新型エクリプスクロスがフロントマスクの一新と、PHEV投入という大幅改良を加えられて登場した。PHEVの追加が発表された当初は、ガソリン、ディーゼル、PHEVという3つのパワートレーンが用意されると思ったが、フタを開けてみるとなんと登場わずか1年のディーゼルモデルは、新型の登場とともに廃止となってしまった。
なぜ三菱はあれだけPRしていたディーゼルモデルをあっさり終了させたのか? もっと大切に育てるべきではなかったのか? なぜ迷走とも捉えられかねない状況に至ったのか? 考察をしていきたい。
文/渡辺陽一郎
写真/編集部
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■待望のPHEVモデル登場の陰でディーゼルモデルは廃止に
「エクリプスクロスにPHEV(充電の可能なプラグインハイブリッド)が搭載される」
この話を聞いた時は、いよいよ三菱の代表車種らしくなると思った。SUVで、なおかつエンジンは、1.5Lガソリンターボ、2.2Lクリーンディーゼルターボ、2.4LのPHEVがそろうからだ。1車種でこれだけ豊富なエンジンを選べる日本車はなく、技術指向の三菱らしい個性にもなる。
ところが、エクリプスクロスが2020年12月4日に大幅なマイナーチェンジを実施して、PHEVが加わると、入れ替わりにディーゼルを廃止されてしまった。これはマイナス要素ではないのか? エクリプスクロスに限らず、ディーゼルはSUVと相性がいいからだ。
そこで三菱にディーゼルを廃止する理由を尋ねると「エクリプスクロスでは、ガソリンターボの人気が高く、ディーゼルの販売比率は低かったです。ディーゼルは後から追加されたので、認知度が不十分だったかも知れません」という。
そうなると『デリカD:5』も心配になる。エクリプスクロスのディーゼルと同型のエンジンを搭載するからだ。この点について三菱は「デリカD:5は、今後もディーゼルを搭載していきます。デリカD:5では以前からディーゼルの人気が高く、今ではガソリンエンジンはありません」という。
つまりディーゼルの国内販売を全面的に終了するのではなく、エクリプスクロスについては、PHEVに置き換えたわけだ。生産効率を考えて、エンジンの選択肢を抑えたのだ。
またエクリプスクロスのディーゼルを廃止した背景には、今後の三菱が、PHEVを中心的な技術に位置付ける事情もある。PHEVはアウトランダーに採用されて十分な実績を積んでおり、プラグインハイブリッドは、三菱に限らず海外を中心に多くのメーカーが採用する環境技術でもあるからだ。
しかも三菱のPHEVでは、エンジンは主に発電機を作動させ、駆動は前後別々に搭載されたモーターが担当する。モーター駆動が基本の4WDだから、エンジン駆動の4WDシステムとは異なり、前後の駆動系が独立している。そのために、前後輪の駆動力配分を自由に変えることが可能だ。
例えば峠道のカーブを曲がる時などは、後輪駆動車のように、旋回軌跡を拡大させず積極的に回り込める。駆動用電池が低い位置に搭載されて低重心になることも、走行安定性を高める要素だ。
このように、三菱のPHEVは、環境/燃費性能を高める技術でありながら、セッティング次第でスポーツ走行でも威力を発揮できる。環境性能と走る楽しさの両立は、今後の三菱が目指すクルマ造りの方向性とも合致するわけだ。そこでエクリプスクロスも、PHEVを中心的な技術に据える。
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