日本の自動車業界を見てみると、新機軸となる新たな何かを始めることは多い。また、突如何かに襲われることもある。それらにより「前とは違う」の姿に変化していることもあるにちがいない。
「それ」によりどう変わったのか? この先の予測も含め、8本のテーマについて探っていく。
●トピック
・国産メーカー、提携の前と後ではクルマはどう変わったか?
・トヨタのカンパニー制導入。この先も含め、導入後の変化はないのか?
・日産、カルロス・ゴーン体制時とその後で社内変化はあるのか?
・トヨタ全店の全車扱いが実施されて、販売現場で起こった変化とは?
・トヨタがダイハツを完全子会社化。ダイハツのクルマは変わったのか?
・フルモデルチェンジを経て販売が大きく伸びたモデル、逆に低速したモデル
・リーマンショックの前と後業界は「何が」一番変わったのか?
・コロナ蔓延の前と後、クルマ界はどう変わった?
※本稿は2021年2月のものです
文/桃田健史、国沢光宏、渡辺陽一郎、井元康一郎 写真/NISSAN、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2021年3月10日号
【画像ギャラリー】本文で出てきた以外にも…フルモデルチェンジで沈んだクルマ&浮上したクルマ
■国産メーカー、提携の前と後ではクルマはどう変わったか?
この先の企業成長のため、国内メーカーや外資と提携するメーカーは多い。その提携の「前と後」ではクルマはどう変化したのか? 今後は? トヨタ、スバル、マツダ、三菱、ホンダについて追ってみた。
* * *
スバルがトヨタから頼まれた。2社の関係の第一歩は、そうしたイメージだ。その象徴はもちろん、2012年に登場した「86/BRZ」である。
豊田章男社長の時代となり「トヨタ車で走りを楽しむこと」を、トヨタ改革の中核に置き、社長自らが評価ドライバーとして開発の前面に出るようになった。
86/BRZ初号機のステアリングを握ったあとに“トヨタ車らしさの要望”をスバルエンジニアに伝えた……、といわれている。
また、豊田社長はSTIに対して強い関心を持ち、東京モーターショーなどでSTI関係者らと楽しそうに会話するシーンを見かけたものだ。
両社の提携後、こうしたトヨタとスバルの、人と人との繋がりが、のちのGRヤリスへと進む道を築いた。
一方、スバルは提携後、トヨタから開発面の厳しいコストと時間の管理など、企業として多くのものを学んだ。
むろん、この先、電動化の共同開発への期待も大きい。
●提携後、刺激を受けるトヨタ
では、2017年に資本提携したトヨタとマツダはどうなのか。
マツダもロードスターというキラーコンテンツがあるが、トヨタの関心はそこではなく「一括企画」にある。一括企画とは、車体などを共通化するコモンアーキテクチャーと、フレキシブル(臨機応変)な生産の構想が、実際の開発と生産を動かすという企業としての概念であり、かつ事業戦略である。
トヨタにもTNGAという技術的な基盤はあるが、マツダのように短期間で商品改良を行うことに対する大きな刺激を受けたことは確かだ。
それが、レクサスの「ALWAYS ON」という開発方針に直結している。
一方で、マツダのトヨタに対する最大の関心事は、スバルと同じく電動化対応だ。
ただ、これもスバルとマツダの同じ悩みだが、スバルなら水平対向型、マツダならSKYACTIVと、トヨタ主体のEV(e-TNGA)を、今後どう両立させていくのだろうか?
●「餅は餅屋」の3社
次に、ルノー・日産・三菱だが、2019年からの関係強化で「餅は餅屋」の戦略がはっきりし、商品企画、開発、製造、営業の各社の各部門で、自分たちがやるべきことが見える化された。
三菱にとっては、PHEVの量産効果や、軽の生産技術での特化がプラス効果を生んだ。
今後も、3社で聖域なきドラスティックな組織再編が進む可能性も考えられ、結果的に三菱もしっかりと生き残っていくことになるだろう。
最後にホンダとgm(※)だ。
ホンダ主導で進んできた燃料電池車での連携から、北米向けEVプラットフォーム「アルティウム」採用や、自動運転技術開発企業クルーズとの連携など、次世代技術の中核をgm主導へと大きく軌道修正したホンダ。
ホンダ経営陣は、自前主義からの転換を掲げるが、ホンダ愛の強いエンジニアたちはこれからのホンダをどう考えるのか。
ここがホンダの将来を決める大きなポイント、となるだろう。電動化へとどう舵を切るか、注目したい。
(TEXT/桃田健史)※GMは今年(2021年)から社名を小文字表記に変更
コメント
コメントの使い方