■トヨタ全店の全車扱いが実施されて、販売現場で起こった変化とは?
トヨタの販売店が全国的に全店で全トヨタ車を扱い始めてもうすぐ1年。販売現場で起こった変化とは?
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2020年5月以降、トヨタのすべての販売店でトヨタの全車を買えるようになった。この変更で生じた最も大きな変化は、トヨタ車同士の競争と販売格差が広がったことだ。
一番顕著なのはアルファードとヴェルファイアの登録台数。
現行型の登場時はヴェルファイアが多く売れたが、マイナーチェンジでフロントマスクを変更するとアルファードが上まわった。
さらに全店が全車を扱うようになり、2020年12月の登録台数はアルファードが前年の1.5倍に増えて、実質的に同じ内容のヴェルファイアは半減している。
登録台数に8倍の差が生じた。以前はヴェルファイアを専門に販売していたネッツトヨタ店からも「最近はアルファードに乗り換えるお客様が増えた」という話が聞かれる。
同様の理由でハリアーも登録台数を伸ばし、以前から全店で販売していたプリウスやアクアは、顧客を奪われて売れゆきを下げた。
ルーミーも1.5倍に伸びたが、姉妹車のタンクは廃止された。
このように販売格差が広がると、人気車は生産が間に合わず納期が遅れる。販売店では「アルファードの納期は3カ月を要しており、ヤリスクロスもハイブリッドは半年以上に達する」という。
また、トヨタの販売会社同士の競争が激しくなった。例えばアルファードやハリアーは、以前はトヨペット店だけが扱ったから、ユーザーは販売系列を選べなかった。
しかし今は全店が扱うため、より自宅に近い店舗でも購入できる。
取り扱い車種が共通になったので、店舗の立地条件を含め、販売会社の実力が従来以上に問われるようになった。
トヨタ店とネッツトヨタ店が隣接する場合など、従来は販売車種が異なるから併存できたが、今後は競争に負けて廃止される店舗も生じる。
「取り扱い車種が一気に増えて商品知識が追いつかない。特に修理を行うメカニックが苦労している」と話す販売店員もいる。販売と修理の両方で手間を要するだろう。
このように全店が全車を扱うようになり、車種の売れゆきから販売店の実績まで、トヨタ同士の競争と格差が進んだ。その結果、車種や店舗数の減少、納期の遅延などユーザーの不利益も生じている。
(TEXT/渡辺陽一郎)
■トヨタがダイハツを完全子会社化。ダイハツのクルマは変わったのか?
2016年にダイハツはトヨタの完全子会社となったが、その後、ダイハツとダイハツ車に変化はあったのか?
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2015年のダイハツの小型/普通車登録台数は1年間で1624台だった。ところが2016年には、前年の4倍以上になる6859台に増えている。
販売店では「2016年にダイハツがトヨタの完全子会社になり、4月に新型ブーン、11月にはトールも加わって売れゆきを伸ばした。従来と違って小型車の試乗車も用意され、テレビCMも活発に放映している。ダイハツがトヨタの完全子会社になり、小型車に力を入れるようになった」という。
今ではロッキーも堅調に売れて、2020年のダイハツの小型/普通車登録台数は5万6054台だ。5年前の35倍に達する。
ダイハツの小型車にも変化が生じた。従来はトヨタに供給するOEM車と同じ内容だったが、現在のロッキーはトヨタのライズにはないソフトレザー調シート内装の最上級グレードを設定している。
ダイハツが小型車に力を入れる背景には、近年は軽自動車とリッターカーの自動車税の差が小さくなっているのに加え、今後はトヨタが主導して小型・普通車の販売に力を入れるため。
これらにより将来的に軽自動車の販売低下が懸念され、ダイハツも軽自動車偏重の売り方を抑えている。
(TEXT/渡辺陽一郎)
【閑話休題】ダイハツ社員へ聞いてみた!
トヨタの完全子会社化によってダイハツでの仕事の変化は? ダイハツ広報によると、もともとトヨタグループの一員という位置づけだったので大きな変化はなく、「広報業務も以前からトヨタさんと常にやり取りをしていました。その頻度が増えた面はありますが、ダイハツ車のPRという意味では変わらない形でやっています」とのこと。
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