車検制度は日本の自動車の安全を担ううえで大切な制度だ。しかしカスタムカーなどでは「○○車検場だと通るけど××ではダメだった」なんて事例も多々ある。同じ法律を適用しているはずなのに、なぜこのようなことが起きてしまうのだろう。
今回は自動車行政にも詳しい国沢光宏氏に聞いてみた。
文/国沢光宏、写真/Adobe Stock(トビラ写真=lastpresent@Adobe Stock)
【画像ギャラリー】カスタム車ユーザーは要注意!? 車検場によって合否の判断が異なるのはなぜなのか
■統一規格のハズなのに? 異なる判断が出るのはなぜ??
旧車や、モディファイしたようなクルマ、はたまた並行輸入したクルマなどに乗っていると、車検で苦労することも多い。
もちろん購入した業者に頼めば何とかしてくれるだろうけれど、地理的に遠かったり廃業してしまったりすると不可能。それでは、ということでユーザー車検をしたり、他の業者に頼むと車検が通らなくなることも。
そんなケースでよく話になるのは「車検場によって判断が違う」というもの。
実際、Aという車検場だとOKになるのに、Bという車検場に持ち込むとNGを出されるということは少なからず起きている。車検は全国統一規格のハズ。本来なら日本の車検場全て同じであるべき。なぜ異なる判断になるケースが出てくるのだろうか?
■自動車産業の振興と安全の間で
最も一般的な要因は「車検場の場長や、車検場の伝統でクルマを理解しているかどうか」になると思う。
私も経験あるのだけれど、ラリー車など作る際、シートを必ず交換する。車検場に持ち込む時も装着して行きます。ここで重要なのは車検対応しているシートレールを使っているか、だ。原則としてシートレール買った時の書類が必要。
けれど紛失することだってある。前のオーナーが捨ててしまったケースだって珍しくない。
私の場合、シートに付いていた書類を捨てられちゃったため、車検場に持ち込んだ時は書類無し。これだけで「書類を持ってくるように」と蹴る車検場があるようだ。ただ多くの車検場は、車検対応のシートレールかどうかの判別資料を持ってます。
シートレールを作っているメーカーも車検場にリストの有無と認可ナンバーをまとめた書類を送っているそうな。
ちなみに私がラリー車を持ち込んだ車検場は、基本的にシートレールメーカーが作ったリストを確認してOKを出してくれた。いろいろ調べてみたら、書類なしでも対応をしてくれる車検場が多いという。
この件、1度車検場の責任者と話をしたことがある。
曰く「日本の主幹産業は自動車だと思っています。自動車関連の企業が利益を上げられれば景気だってよくなるでしょう。私たち役人は日本が豊かになってくれるために仕事をしなさいと教えられました。そういった点からすれば、いろんなクルマにナンバーを付けて走ってもありたい」。
続けて「同時に安全性の確保も同じくらい重要な役割です。なので安全基準を通っていないクルマや車検の基準をパス出来ないクルマにナンバーを出すことは絶対に出来ません。ただ灰色の領域というのも必ず出てきます。そこをどう判断するかでけっこうな違いになってくるんじゃないでしょうか」。
この話、けっこう納得しました。
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