2008年5月に、モビリオの後継車として登場したホンダのフリードが、国内累計販売台数100万台を突破した。デビュー当時、CMで流れていたキャッチコピーは「This is 最高にちょうどいいホンダ」である。
この「ちょうどいい」というコピーは現在も使用されており、フリードの魅力を的確に言い表しているだろう。
2008年のデビュー以降、フリードは順調に販売台数を伸ばしていく。トヨタで営業マンをしていた筆者も、販売現場でフリードの脅威を感じていた一人だ。フリードはいったい何が魅力的で、どこがちょうどいいのだろうか。その凄さの根源を考えていきたい。
文/佐々木亘、写真/HONDA、TOYOTA
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フリードは核家族にハマった“ちょうどいい提案”
当時、5ナンバーミニバンといえば、トヨタのヴォクシーやホンダのステップワゴンなど、ハイトな箱型が主流だった。スタイリッシュでコンパクトなミニバンとなると、ヒンジドアで全高の低い、ウィッシュやストリームのようなクルマになる。
この時代に、スタイリッシュな外観ながら、室内は箱型ミニバンに負けない広さを誇り、両側スライドドアで、利便性も高いフリードは、ミニバンの新しい形を提案した一台だ。
ホンダの「ちょうどいい」クルマの提案は、日本の核家族にピタリとハマった。デビューからおよそ半年で、販売台数は5万台を超えていく。2011年にはハイブリッドモデルを追加し人気はさらに加速。2012年、年間販売台数が10万台を超えた。
ライバルのトヨタ シエンタが現れた2015年には、年間販売台数は5万台を下回ったが、直近3年間は7万台以上の販売台数を記録し、復活を果たしている。好調に販売を続けるフリードの凄さは、2つの点に集約されていると筆者は考える。
「お父さんの支持」を掴み取るフリードの凄さ
フリードを強く支持するユーザー層は、ライバルのシエンタとは少し違う。どちらもファミリー層ではあるのだが、シエンタはお母さんから支持され、フリードはお父さんの支持が強い。支持層の違いは、実際に販売現場で仕事をしていると、強く感じる点である。
コンパクトミニバンは、核家族化が顕著な日本に、ぴったりのクルマなのだが、メインカーとして使用する場合、運転するお父さんの気持ちは少々複雑。
クルマは「コンパクト」という言葉がつくと、途端に女性向けになりがちだ。実際に、初代シエンタやパッソセッテ、日産のキューブキュービックなどは、どこか可愛らしく、柔らかいデザインになっている。現行のシエンタも例外ではない。
「もう少しかっこいいクルマを運転したい」、「可愛らしいクルマでは恥ずかしい」、「俺は家族の運転手ではない」という、お父さんたちの悲痛な叫びを、筆者は商談時に何度も聞いてきた。
そこに、彗星のように現れたのが、フリードである。「小さい」、「かわいい」に不満を持っていた世のお父さんに、スタイリッシュな外観がズバリ刺さった。コンパクトミニバンでも、女性ではなく男性からの人気が高いフリードは、定石を崩し、マーケットニーズをしっかりと把握して作られたクルマだ。
コンパクトミニバンに対して不支持に回っていたお父さん層を、一気に支持層へ変えたのが、フリードの凄さの1つ目である。
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