日産のコンパクトスペシャルティカー、S15型シルビアの人気ぶりが異常だ。中古車市場において、過走行でも150万円前後、程度の良いものなら500万円以上と、販売終了から20年も経つクルマとは思えない価格帯で取引されており、その値段はさらに上昇傾向にあるという。
S15シルビアが、なぜここまで人気となっているのか、その秘密を探っていこう。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN
デートカーとしてだけでなく、スポーツカーとしても成功したS13
シルビアの初代モデルが登場したのは、1965年のこと。当時のダットサンブランドのスポーツカー、ダットサン・フェアレディのスペシャルティカー版という位置づけで登場した。その後、一度絶版となったものの、1975年に2代目が登場し、復活。その後は、最終型S15の生産終了となる2002年まで、小型FRスポーツクーペとして活躍した。
シルビアが高い人気を得るようになったのは、当時「デートカー」と呼ばれた市場を狙って開発された、1988年登場の5代目S13からのことだ。S13は、グッドデザイン大賞も受賞するほどの美しく近未来的なスタイリングに加えて、トランプをイメージしたおしゃれなグレード呼称、世界初の4灯プロジェクター式ヘッドランプ搭載といったトピックでデートカー市場のニーズに見事に応えた。
「デートカー」として成功をおさめたS13シルビアだったが、「5ナンバーサイズの軽量ボディに1.8LのNAとターボエンジン(後期型は2.0LのSR型を搭載)、後輪駆動、ハイキャスIIも設定されるこだわりのハンドリング性能」という、パッケージングとメカニズムにスポーツカー好きも注目。当時すでに希少となっていたFRレイアウトのシルビアはデートカーとしてだけでなく、スポーツカーとしても大ヒットを記録する。
大型化と時代の変化で低迷したS14
S13で成功を収めたシルビアは、1993年にS14へとモデルチェンジ。メカニズム、コンセプト共にS13を継承して登場したS14だが、ボディサイズは、デザインの自由度を広げつつ、走りの性能を引き上げるため、3ナンバーサイズのワイドボディへと拡大。
エンジンは同じSR型でパワーアップしたものの、ボディが大きくなったことで、S13の魅力であった軽快感が損なわれてしまっていた。デザインも、曲線の多い柔らかい雰囲気のデザインで、クセがないものの強いインパクトもなく、S14の人気は低迷。
時代の変化も、S14にとって向かい風となった。先代同様スペシャルティカーとして登場したS14だが、バブル崩壊によって、スペシャルティカーに代わってミニバンやコンパクトカーの人気が上昇。クルマの価値観が変化する過渡期に投入されたため、スペシャルティカーS14のあらゆる要素が裏目に出てしまったのだ。
1996年にマイナーチェンジが実施され、ヘッドライトを角ばったデザインにするなど、エクステリアを大幅に変更。かなり攻めたデザインで個人的には好みだったが、拡大したボディサイズのネガをリカバリーするまでには至らず、人気の低迷が続いたまま生産終了。1999年に登場するS15にバトンタッチした。
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