昨今は当たり前となったクルマのボディカラーの有料塗装色。例えば日産ノートの場合、ボディカラーは全12色あるうち、半分の6色は有料塗装色で、パール系のカラーは38500円、明るいレッドとオレンジは44000円、ツートンカラーは55000円だ。
ルーフ色を変えるツートンボディの場合、塗りの手間がかかりそうなのでまあ分かるのだが、同じ製造ラインで作っているのに、単色であっても、これほどの価格差が生じているのはなぜだろうか。あまり知られていない、ボディ塗装の謎についてご紹介しよう。
文/吉川賢一、写真/TOYOTA、NISSAN、Audi
【画像ギャラリー】下取り時に20~30万円の価格差も!! ランクル300のボディカラーをチェック(10枚)画像ギャラリー有料になる理由は「工程が多くなるから」
冒頭で触れた日産ノートもそうであるように、一般的にパール系の塗料が高いのは、塗装→焼き付け工程の回数がソリッド系とは異なるからだ。
通常ボディ塗装は、下塗り、中塗り、上塗り、焼き付けの4工程を行っている。下塗りとは、さびを防ぐためのベースとなる塗装のこと。コンベヤーを使って、塗料が入ったプールにボディを沈め、車体の内側まで電着塗装をする工程だ。外板色とは関係がなく、どのボディ色でも塗装後はツヤがない薄いグレーとなる。
次の中塗りとは、ボディ塗料がきれいにのるように、平らな下地をつくる工程だ。ロボットを使って塗料をシャワーのように吹き付けていく(この時点でも色はグレー)。
次の上塗りで、塗装ロボットが注文通りのボディカラーに塗装する(ベース塗装)。最後に、ツヤを出して塗装を保護するクリアコートを上塗りし、最後に焼き付け(日産の場合だと鋼板は140度、樹脂パーツは85度程度)を行う。ソリッド色の場合だと、「上塗り+クリアコート」の2コートで完了だが、パール系の場合だと、「上塗り+パール+クリアコート」の3コートとなる。
さらに2トーンカラーの場合だと、ルーフを中塗り→ベース塗装→焼付→マスキング貼付したあと、ボディの中塗り→ベース塗装→焼付→マスキング剥がし、という工程をとおる。つまり、3度の塗り行程と、2度の焼付行程を通過している。
パール塗装にしても、2トーンカラーにしても、作業行程が増えている分、それが価格差に表れている、ということなのだ。
ベース塗料にパールを混ぜず、わざわざ別工程で塗装する理由は、輝きを放つパールの原料である鉱物の雲母(マイカ)は、ベースカラー用の塗料の粒子よりも重たいために、吹き付けてもパール塗膜が安定して広がらずムラが出やすいからだ。自動車メーカーや塗料メーカーの間で、一度の工程で済むよう研究されているが、まだ実現していない技術テーマとなっている。
ただ、「有料色は下取りも高い」ということはない
塗装に何行程もかけている有料色であれば、下取り価格も期待したいところだが、価格アップの条件は、そのクルマの人気色であるか否かが影響する。一般的には、パールホワイトやブラックの2色は、他のカラーよりも下取り価格は高くなる傾向がある。これは、モノトーンカラーの方が、赤色や黄色といった原色よりやグレー、ガンメタのようなカラーよりも、世界的に見て需要が多いためだ。
なかでも、ランドクルーザーは、「高級車の証」としてパールホワイトとブラックが大変好まれており、「好きなクルマを好きな色でキメたい!!」という強い想いがなく、下取りを意識するのであれば、パールホワイトかダイヤモンドブラックを選んでおくことがポイントだ。
ただし、なかにはホワイトよりも、ワインレッドやダークパープルのカラーの方が、ホワイト系よりも20~30万円も中古車相場が高くなる国もある。これも、輸出先の国のカラーに対する認識の違いによるものだ。すべてをお伝えすることは出来ないが、意外なカラーリングが人気となる場合もあるので、非常に面白い。
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