セダン人気が陰りを見せた2000年代初頭、多くの名車が姿を消していった。トヨタ・マークX(マークII)もその1台だ。
1968年にコロナ・マークIIとして登場し、51年もの間トヨタの中上位層向けFRセダンとして愛された。2019年12月に生産終了となり、同時に日本のFRセダンを引っ張る存在が消えてしまったように感じる。
マークXの存在意義や、マークXを失ったトヨタ販売現場の状況を考えながら、これから、FRセダンが生きていく道について探っていきたい。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA、ベストカー編集部
■階段を昇る様に、セダンを買い替える時代
昭和の終わりから平成の初めにかけて起こった、「ハイオーナーカーブーム(ハイソカーブーム)」と呼ばれる現象は、上級車の購入を大きく促進させた。
この時代、とりわけセダンには明らかな序列が存在し、年齢や収入の上昇とともに、より上流の車種へ乗り換えるという動きが、一種のステータスになっていた。
こうした時代の流れによって、各社のFRセダンは大きく成長していく。とりわけ人気が集まったのが、クラウン・マークII・クレスタ・チェイサー・ソアラといった、6気筒エンジンを搭載するFRセダンである。
上級FRセダンは、バブル経済崩壊後、人気が衰退していき車種統合・廃止が進められた。中核としてトヨタラインナップに残ったのは、クラウンとマークII(のちにマークXとなる)だけだ。
とりわけ、トヨペット店で専売されていたマークII(マークX)は、トヨタラインナップの中で、他の専売車種に比べて大きな存在意義を持っていたクルマだったと思う。
■クラウンの手前だからこそ、愛され、選ばれる存在
「いつかは」と言われ、トヨタラインナップの最高峰に位置するクラウン。「高級」を掲げ、トヨタとは別世界を作り上げたレクサス。共にトヨタブランドのトップであり、一種の憧れを抱く存在である。
こうした存在の次点にいたのがマークXだ。クラウンに負けずとも劣らない上質感を出しながら、スポーティさを併せ持ち、スポーツセダンという言葉が良く似合った。
AVS(減衰力可変ダンパーサスペンション)や、VDIM(車両姿勢制御安定化システム)を積極的に採用し、「走り」のイメージを強めている。
2012年に追加されたスポーツコンバージョンモデル「G`s(現GR SPORT)」や、6速MTを搭載しさらに深くチューニングされたGRMNモデルが製作されたことでも、トヨタ自身がマークXにスポーツイメージを付けていたことが良くわかるだろう。
車両本体価格は200万円台半ばから400万円程度に収まり、安すぎも高すぎもしない絶妙なラインだった。「クラウンでは周りに角が立つが、マークXならその心配も少ない」と、購入していた層も多い。マークXは、奥ゆかしさを大切にする、日本人には必要なセダンだったと思う。
頂点ではないからこそ選ばれ、コンフォートもスポーティも対応できることから、オーナーの年齢層も広い。マークXは、様々なユーザーの選択肢に入る、最後のFRセダンだったのではないだろうか。
コメント
コメントの使い方