2018年10月2日、マツダは「電動化とコネクティビティの技術戦略発表会」を実施した。その第一報を聞いて、「マツダの魂、ロータリーエンジン復活だ!!!」と期待したクルマ好きは多いのではないだろうか。
確かに今回の発表には「ロータリーエンジンを搭載したレンジエクステンダー」の開発ロードマップと技術解説が含まれている。
しかしそれは、たとえば一部のスポーツカーファンが期待しているような「!マーク付き」の「復活!!!!」と言えるようなものとはだいぶ違う(自動車メディアとしては「ロータリー復活だーー!」と大騒ぎしたいところだが、無駄に煽るのはよくない)。
最初に本稿の要点を書いておく。
◎今回発表された「ロータリーエンジン搭載のレンジエクステンダー」がスポーツカーに搭載される可能性は低い
◎じゃあどんなモデルに搭載される可能性が高いかというと、コンパクトクラスのシティコミューター、もしくは量販車が狙い目ではなかろうか
◎そういう(量産中心技術になる可能性があるという)意味で、今回発表された技術は今後マツダの将来に大きく影響を及ぼすことになるだろう
◎2019年には試乗会が開催され、2020年頃に市販化となるようだ
この4点が本稿で最も重要な点となる。以下、その事情を、メカニズムに詳しい自動車ジャーナリスト、鈴木直也氏がじっくり解説してくれた。
文:鈴木直也
■ロータリーの利点は「小ささ」と「静粛性」
マツダがロータリーエンジンを使ったレンジエクステンダーEVを公式に発表した(編集部注/マツダはガソリンエンジンを搭載していてもモーターで駆動する車両は「EV」もしくは「xEV」と表記する。また発電用・駆動用問わず、いっさいエンジンを搭載しない車種を「バッテリーEV」、「ピュアEV」と呼ぶ)。
当日配布された資料によると、レンジエクステンダー用としてロータリーエンジンの復活を明記している。
商品化の時期については、以前から2020年のEV発売を公表していたが、マツダ初の本格的電動車はピュアEVとレンジエクステンダーEVの2本立てになるものと思われる(同じシステムでPHEVも可能)。
レンジエクステンダー用のモーターに組み合わされるガソリンエンジンユニットに、ロータリーエンジンを採用するメリットとして資料で強調されているのは、第一にコンパクトさを生かしたパッケージング、第二に燃料の種類を選ばないロータリーエンジンの“雑食性”を活かした、CNG、LPG、水素などの代替燃料を利用できること。
まずパッケージングのメリットだが、ピュアEVとレンジエクステンダーEVの2種類をラインナップしようとした場合、発電用エンジンをどこにどう搭載するかが大きな問題となる。
発電用エンジンの要らないピュアEV仕様ならエンジン搭載空間はまったくのデッドスペースだし、発電用エンジンに大きなスペースを割くくらいなら、ノートe‐POWERみたいなシリーズハイブリッドを目指したほうがコストも楽だしドライバビリティもいい。
現在、同一パッケージングでEVとレンジエクステンダーを両方用意しているのはBMWのi3くらいだが、タイトなスペースの中に発電用エンジンを押し込むため、手持ちのスクーター用600cc、2気筒エンジンを転用して凌いでいる。
ただ、レシプロ2気筒エンジンでは騒音や振動がいまひとつ。i3でレンジエクステンダー用エンジンが作動し始めた時の「ブーン」というノイズは、EV走行時が静粛だっただけにかなり興醒めといった印象がある。
ロータリーエンジンならこういったデメリットを解決できる。
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