「ロータリー復活」の意味 レンジエクステンダーはマツダの救世主になるか

■パッケージングの妙は小型車でこそ生きる

じつは、マツダは2013年の暮れに、先代デミオをベースとしたロータリーエンジンレンジエクステンダーEVの試作車をジャーナリストに試乗させているが、その時に話題となったのもパッケージのすばらしさと騒音/振動の低さだった。

専用設計された330ccシングルローターロータリーエンジンは、エンジン、ジェネレータ、燃料タンクなどが手際よくパッケージングされ、現行デミオよりひと回り小さい旧デミオのリア床下にすっぽり収まるほどコンパクト。

しかも、走行中にエンジンが始動してもきわめてスムーズで、これはまさに「ロータリーエンジンでなければ不可能なパッケージングと静粛さ!」と大いに感心したことを覚えている。

こちらも発表資料。右側が従来のレシプロエンジンだが、ロータリーエンジンなら左図のようにコンパクトにできる

このレンジエクステンダーユニットでユニークだったのは、ロータリーエンジンを平置きにマウントして(エキセントリックシャフトが垂直となる)、ベルトで発電機を回していたこと。このレイアウトゆえ、旧デミオのトランク床下に収まるほど、全体を薄べったくパッケージングすることが可能だったわけだ。

ただ、今回発表された資料に掲載されている外寸比較図を見ると、レンジエクステンダー用ロータリーエンジンはモーター同軸横置きマウントが採用されている模様。やはり、エキセントリックシャフト垂直・発電機ベルト駆動というレイアウトは、さすがに量産モデルでは冒険的すぎたのかもしれない。

■ロータリーはガソリンや軽油以外でも回る

もうひとつ、ロータリーエンジンのメリットとしてあげられている燃料の多様性については、CO2排出量低減や排ガスのクリーン化の他に非常用の電源インフラとして活用することが提案されている。

CNGや水素で走るロータリーエンジン実験車はずいぶん前から走っているから、原理的には停電中でもガスインフラが生きて入ればロータリーエンジンレンジエクステンダーによる発電で電気が利用できる。もちろん、実際にはマルチフューエル用の燃料供給システムの追加が必要ではあるが、この点については技術的なハードルは低い。

■シンプルなシティコミューターに適したシステム

では、このロータリーエンジン搭載のレンジエクステンダーがどういう車種に搭載されてデビューするのかという問題だが、これまでのマツダとEVの取り組みを考えれば、トヨタ、マツダ、デンソーの3社合弁で設立された「EV C.A. Spirit 株式会社」が開発する新規EV車種というのが常識的な線だろう。

「EV C.A. Spirit 株式会社」はトヨタとマツダとデンソーが2017年9月に共同出資で立ち上げた、EV開発会社。公式サイトがわりと20世紀っぽくてほのぼのする

トヨタもマツダも、当分ピュアEVは採算の取れない赤字事業と考えている。

しかし、既存車種のプラットフォームを流用する中途半端なEVでは、競争の厳しくなる今後のEV市場で通用しないのは明らかだ。

また、EVの弱点は連続航続距離だが、そのレンジを伸ばそうとすれば大量の電池搭載が必要となり、それは即コストに跳ね返る。

こういう事情を考慮して、まったくゼロからコスト競争力のあるEVを考えると、おおむね答えは見えてくる。

つまり、EV専用パッケージの新規車種で、電池搭載量は実用十分なレベルにとどめ、販売価格はなるべく安価に。

そして、どうしても足りない航続距離はレンジエクステンダー機能でカバーする。個人的には、BMWi3をよりシンプルにしたような専用EVを考えているのではないかと予想するがいかがだろう。

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