2017年10月23日に発売され、ちょうど一年が経過。あっという間に日本の風景に溶け込んだ感のあるトヨタJPNタクシー。
トヨタに問い合わせてみたところ、発売から2018年9月までの累計販売台数は約7540台。グレードによる販売比率は上級グレードの「匠(たくみ)」が82%、標準グレードの「和(なごみ・327万7800円)」が18%。またカラー別の販売比率は深藍が80%、ブラックが12%、スーパーホワイト2が8%となっている(スーパーホワイト2に乗れた人、なかなかレアです。ラッキーかもしれない)。
ところでタクシーといえば、ふだん運転席に座るのはなかなか難しい乗り物だが、東京のお台場 MEGA WEBではこのJPNタクシーに試乗が可能だ。
今回は自動車評論家の国沢光宏氏に、新しい日本の顔の乗り心地を試してもらった。
ちなみにこのJPNタクシー、個人での購入も可能。価格は「匠」が349万9200円、「和」が327万7800円となっている。これまでの(クラウンコンフォートなどの)タクシー専用車との最大の違いはずばり「安全性」。アクティブセーフティ、パッシブセーフティともに大幅に向上していることを考えると、「どうせならJPNタクシーに乗りたい」という願いもよくわかる。
実際ちょっと得した気分になりますよね。そんなわけで、試乗記をどうぞ。
文:国沢光宏/写真:平野 陽
初出:『ベストカー』 2018年9月26日号
■LPGながらハイブリッドでパワーも納得。バランス良し。
ここにきて街中で見かけることが多くなったこともあり、すでにJPNタクシーの「リアシート」に乗ったという人は多いと思う。さすがタクシー専用設計だけあり、キャビンスペース広く、けっこう快適。普通のタクシーよりJPNタクシーのほうに手を上げちゃいますね。
しかし! ハンドル握ったことのある人って少ないと思う。はたしてどんなクルマなのだろうか? 実はお台場のメガウェブに行くと誰でも試乗できます。
早速走らせてみたい。私らみたいな専門家でもタクシー仕様車のハンドル握る機会は少ない。興味津々だ。
運転席に座ってみると、囲まれ感があり、まさに「仕事場」という雰囲気。普通の乗用車はドライバーだけでなく、助手席の人がメーター見たり、エアコンの調整やオーディオ操作などすることも考えたデザインになっている。けれどタクシー仕様車の場合、すべてがドライバーの管理下。トラックやバスなどと同じで、プロのスペックです。
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真剣にインプレする国沢氏。トップの画像ほどロールしているJPNタクシーはなかなか見られない
■ベースのシエンタ同様バランスのよい走り
Dレンジをセレクトして走り出す。1500ccのLPG仕様ということでパワー不足と思っている人も多いようだけれど(実際普通のガソリンエンジンと比べ3分の2くらいのパワーしか出ない)、ベースになったシエンタのハイブリッドと“ほぼ”同じ。
なぜか? そもそもシエンタのハイブリッド車が搭載する1500ccってアトキンソンサイクルのため74馬力しかない。普通のガソリンエンジンの3分の2程度。奇しくもLPG仕様と同じようなもの。
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業務に必要な小物を収納する際に便利なスペースが、多く作られたインパネまわり
加えてTHS2というトヨタのハイブリッドシステム、エンジン出力が同じじゃないと成立しない。だからこそアクセラハイブリッドのエンジンスペックはトヨタの1800ccとまったく同じ。ということで、JPNタクシーの動力性能やドライバビリティも、シエンタのハイブリッドと同じなのだった。参考までに書いておくと、燃費はシエンタハイブリッドより20%前後落ちるらしい。
乗った感じ&ハンドリングまでシエンタとよ〜く似ている。おそらく重心的にも近いんだと思う。トヨタ車のなかではよく動くサスペンションで、乗り心地も私が納得できるのだからまぁまぁです。
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ボンネット内は見慣れた雰囲気。が、ラゲッジからアクセスできるLPGタンクの無骨さには惚れ惚れする
試乗コースの関係で派手なコーナリングなど試していないものの、メガウェブの「ライドワン」コースはベルジアンロード(敷石路)など、テストコースのような種々の路面がある。占有走行のため可能なかぎり攻めたが、バランスよい仕上がり!
興味深かったのは巨大なフェンダーミラー! なんでコダワルのか不明ながら、ドアミラーと「景色」からして違う。よいか悪いか不明ながら、普通のクルマと違う感覚なのは間違いなし。
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センターコンソール周辺も収納スペースが優先されたため、エアコンの操作スイッチなどはステアリング右奧、キーシリンダー横に集中。これはこれで、けっこう便利かも
以上、総合的な評価をするなら、今までのクラウン系タクシー仕様車と違い、サイド&カーテンエアバッグ付きだし自動ブレーキも装備。安心して乗れるようになったのが素晴らしい!
そうそう。JPNタクシー、普通の人でも買えます。
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運転席と助手席で形状が異なる、意外に凝っている前席。後席はごらんのとおり、圧巻の広さ。ひざの前に大型トランクを置くお客さんもいるという、実際のタクシードライバーの話も納得だ
〈JPNタクシー「匠」主要諸元〉
全長×全幅×全高:4400×1695×1750mm
ホイールベース:2750mm
車両重量:1410kg
エンジン:直4 DOHC 1496cc+モーター
最高出力:74ps/4800rpm
最大トルク:11.3kgm/2800‒4400rpm
モーター出力:61ps/17.2kgm
JC08モード燃費:19.4km/L
使用燃料:LPG
価格:349万9200円
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