新型車の納期が軒並み長期化している。コロナや半導体不足が数年前から問題となり、大きな納期遅延が発生しているが、遅延の原因は他にもありそうだ。
日本の自動車メーカー全体で問題となっている、新車の納期長期化について、メーカー、販売店、そしてエンドユーザーの目線から考えていきたい。
文/佐々木亘
アイキャッチ写真/安琦 王 – stock.adobe.com
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新型車や人気車は1年以上待つのが当たり前になっていくのか
2022年も折り返してから早1カ月が経過する。以前の8月は「夏の商戦」といって、年末までに納車するクルマの注文を多く受ける大事な時期だった。しかし今は、夏の商戦はもちろん、年間を通してクルマの売り時(売れ時)が分からなくなっている。
2022年に登場したモデルは、ほとんどが2023年以降の納期となるのが確実だ。1月に登場したノア・ヴォクシーはガソリンモデルでも2023年1月、HEV(ハイブリッド)に関しては2023年4月以降となる。ライバルのステップワゴンもガソリンターボは2023年1月以降、HEVは2023年3月以降といった具合だ。
また、注文停止や取消といった事態も増えてきた。トヨタ・レクサスではランドクルーザー300やNX等の注文を現在停止しており、再開の目途は立っていない。また、ハリアーでは一部受注済みの注文を取り消すという異常事態が起きている。日産に目を向けると、フェアレディZの納期が4年といわれ、発表から間もなく注文停止した。
新型発表や改良など、クルマを良くしていこうという動きが活発であればあるほど、納期が長くなり、注文ができなくなるという負のループに陥る。こうした影響は一部メーカーの人気車種にとどまらず、今後あらゆるメーカーの車種に広がっていく可能性は非常に高い。
作れないのか作らないのか正確に分析してほしい
まず、自動車メーカー各社には、「作らない」のか、「作れない」のかをハッキリと示してほしい。1年ほど前までは、確かにコロナによる人員不足や半導体不足で、作れない状況が続いていた。新型ウイルスへの罹患(りかん)や濃厚接触者に定義され、社会活動が行えず、経済がほぼ止まりかけたのは記憶に新しい。
では、現在はどうか。政府はコロナと戦いながらも経済活動は止めずに優先させていくという方針を出している。生産工場の稼働停止は、現在も相次いでいるが、多くは人員不足ではなく部品不足が原因だろう。
これは工場に勤務する人がいなくなり「作れない」わけではない。規定の金額や数量で部品が入ってこないから、工場を動かすパワーはあるが「作らない」というようにも見えてくるのだ。
コロナ禍で一時期、食料品や生活必需品が品薄となり、生活が不安定になったが、現在は大きく解消している。なかには、大幅に値上げを行いながらも供給量を維持しているものがあるが、原材料費高騰の昨今、こうした値上げも致し方ないところだろう。
値上げは消費者に対しての打撃となるが、それ以上にモノがなくて買えない(手に入らない)という状況は衝撃を与え、不安をあおる。
もしも原材料の不足が「お金」でどうにかなるのであれば、高くなっても作るという方向にシフトするべきではないだろうか。経済の仕組みでは、需要が増え供給量が下がれば、モノの値段は上がる。現状、値上げは至極当然の行いだ。
価格を上げても安定供給をしてもらうほうが、販売店やエンドユーザーも安心する。いつまでもクルマが届かないという不安を取り除くのが、生産を機能させるメーカーの最優先課題ではないだろうか。
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