クルマはどうすりゃいいのか……取り締まり急増中の「横断歩行者妨害」と、増える「歩行者にも過失アリ」での最適解

クルマはどうすりゃいいのか……取り締まり急増中の「横断歩行者妨害」と、増える「歩行者にも過失アリ」での最適解

 信号の有無にかかわらず、横断歩道は歩行者優先であり、運転者には横断歩道手前での減速義務や停止義務がある。ここでいうところの「横断歩道」には、白線が引かれていない歩道をクルマが横切る場合も同様に含まれる。白線や信号がなくても歩道であれば歩行者優先というルールは変わらない。

 そして近年、急増しているのが「横断歩行者等妨害等違反」の取り締まり件数だ。最新の警察白書(令和4年版)によると、2021年の取り締まり件数は(平成29年(2017年)は14万5292件だったのが、令和3年では2倍以上の)32万5796件まで増えている。取り締まり全体の件数は約93万件以上減少しているのに、横断妨害の取り締まりが急増しているのはどういう理由なのだろうか。

文/加藤久美子、写真/加藤博人、AdobeStock(アイキャッチ画像は@Photographee.eu)

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■「歩行者横断妨害」の取り締まりが急増している!

 横断妨害の取り締まり件数が急増しているのは、「歩行者が道路を横断する際の事故」が急増しているからである。

 もちろん歩行者とクルマの事故ではクルマだけが全面的に悪いわけではない。横断歩道以外の場所を横断している歩行者や、ななめ横断、走行する自動車等の直前直後の横断など法令に違反する歩行者が犠牲になる事故も多く発生している。

『警察白書』令和4年版より
『警察白書』令和4年版より

 クルマも歩行者も、改めて「道路の渡り方、渡らせ方」について理解しておく必要があるだろう。

 警察庁の調べによると、この5年間で、自動車と歩行者が衝突した交通死亡事故は5,052件発生しており、そのうち約7割の3,588件は歩行者が横断中の事故だという。

 さらに3,588件のうち2,406件は「歩行者が横断歩道以外の場所を横断している時」に発生しており、うち約7割は、走っているクルマの直前や直後を横断するなどの法令違反があった。

 クルマと道路横断中の歩行者による事故も自転車死亡事故と同様、ドラレコや交差点の防犯カメラなどの普及によって「歩行者の法令違反」が明らかになってきたのだ。

 歩行者が信号無視をした状態で横断歩道を渡っている際の事故は過去の判例等から一般的には「歩行者7:自動車3」という過失割合になる。また、衝撃的な判決なので覚えている方もいらっしゃるだろう。平成29年12月27日に新潟地裁長岡支部で出された車道横断中の歩行者とクルマとの衝突事故は、歩行者の過失がなんと10割とされた。

 つまり自動車側の過失はゼロ。ドライバーは自賠法3条の運行供用者責任も民法709条の不法行為責任も負う必要はないとされた。夜間、照明がほとんどない片側3車線の国道を走って横断しようとした51歳の女性は、道路幅が約30mある国道の中央分離帯から反対側へ渡ろうとしていた時に、直進してきたクルマと衝突した。歩行者の女性は大けがを負い、入院は115日にも及び、治療は約2年間かかったとされる。

 しかし、この女性は示談では気が済まず、裁判を起こしたわけだが、これが逆に「歩行者側の過失が10割」という非常に珍しい結果を出すことになった。歩行者も交通社会の一員としてルールを守ることの大切さを考えさせられる。

次ページは : ■「横断歩行者等妨害等」はどのような違反になるのか。

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