国内で唯一、正規販売されているピックアップトラックのハイラックスが好調だ。これまで様々なメーカーがピックアップトラックを国内に導入してきたが、ことごとく失敗してきた例がある。
なぜハイラックスだけがここまで好調に売れ続けているのか。その謎と理由に迫っていきたい。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA
■カローラと同じペースで売れ続けるハイラックス
2015年にタイとオーストラリアで販売を開始、2017年には日本仕様が発売された。ハイラックスの名が日本で復活するのは13年ぶりの事だ。
おそらく30代以下の世代で、先代のピックアップトラックだったハイラックスを知っているという人は、ほとんどいないと思う。(ハイラックスサーフは知っていると思うが。)筆者も現役で走っているハイラックスを見たのはわずか1台。勤めていたトヨタディーラーで保有されていたものだ。
後述するが、現在のハイラックス人気を支えているのは、若年層のユーザーである。今、ハイラックスを支えているユーザーたちには、先代の存在がイメージできない。つまり、ハイラックスは、突然登場した新型モデルに近い存在なのだ。
2022年7月の月販台数は890台だった。これはカローラセダンやカローラスポーツの販売台数を上回る。2022年の累計販売でも7月までで6,690台。こちらもカローラやカローラスポーツより多く、1ナンバーのピックアップトラックでは、十分すぎる実績だろう。
しかし、ピックアップトラックは既にオワコンだったはず。こうした人気はどこからやってくるのだろうか。
■クルマらしくないクルマが売れる? ランクル70復刻で雰囲気を感じたトヨタ
若者のクルマ離れと言われ続けてかなりの年月が経つ。実際に、好きな(興味のある)クルマを保有する若年層の数は、かなり減っているだろう。
単純な移動手段であれば、公共交通機関を使用し、クルマを運転する機会は、年に数回借りるレンタカーのみ。仮にクルマを持っていても、それは単なる足車であり、カッコよさやステータス性を求めることはない。
セダンはダサい、スポーツカーは体裁が悪い、SUVやミニバンを選べばいいわけだが車種ごとの格差は大きい。こうしたクルマヒエラルキーに巻き込まれたくないと、所有をためらう若年層は少なくないだろう。
そんな中でトヨタは一度、特別な体験をしている。2014年に1年間限定で復活したランクル70を覚えているだろうか。この時、バンに加えてピックアップトラックが販売されたのだ。
ランクル70の復刻は、多くのバックオーダーを抱え、大成功に終わった。中でもピックアップトラックを購入していったユーザーでは、若年層の割合が高かったのである。
当時、70ピックアップを購入したユーザーからは、次のような話が聞けた。
「ランクルのピックアップが欲しくなりました。クルマっぽくないのが選んだ一番の理由。乗っているのはもちろん、持っているだけで絵になる感じですよね」
若者文化の中では、旧世代のものを、全く新しいカタチで使用する。それが大きくバズるというのは、珍しいことでは無い。
クルマは4つの車輪がついていて、快適に人を移動させるものという概念では、既にダサい。デカいし四角くないし、変なトラックだけど、どこかカッコいい。それがいいということだろう。
昔のピックアップトラックを知っている世代にとってはオワコンだったわけだが、それを知らない世代にとって、ピックアップトラックは目新しい存在であるということだ。
コメント
コメントの使い方90年代後半に道具として新車購入し長年乗った後現行型に買い替えた者としては複雑な気分だ