電気自動車の普及が課題のひとつである日本。電気自動車の普及と共に欠かせないのが、充電インフラの整備だ。充電インフラが整備され、今よりも使いやすい環境へと変化していけば、EVに乗ることへのハードルが下がることは確実である。
そこで今回は、EV向けの充電設備はどこにどれだけ必要なのか? 海外で普及している高性能急速充電器は日本でも普及する? など「充電インフラの整備」について、自身も電気自動車を所有する国沢光宏氏が解説する。
※本稿は2022年10月のものです
文/国沢光宏、写真/日産、AdobeStock(メイン写真:yu_photo@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2022年11月10日号
■日本で高性能急速充電器の普及は難しい!?
7年後に迫った2030年のCO2排出量46%減を達成するには、ハイブリッド車の割合を増やすだけじゃ不可能。電気自動車の普及が必須条件となる。
電気自動車を便利に使おうとすれば、必ず外出先での充電設備など必要になってくる。エンジン搭載車だってガソリスタンドないと使えないですから。
改めて書くまでもなく、充電器の設置はガソリンスタンド作るよりずっと低コストで済む。普通充電なら飲料の自動販売機なんかよりはるかに安価で簡単だ。
参考までに書いておくと、数千円のコンセントを付けるだけで済む200Vの普通充電は、1時間あたり3kWh充電できる。
勤め先が普通充電器を設置してくれると8時間なら24kWh。150km以上走れる。
企業にとっても交通費を「会社で充電無料」にすれば妙味あるかと。
また、数万円出せば1時間あたり6kWhの200V普通充電器も導入可能。
毎日40km程度の使用だったら、買い物に行った時に1時間充電するだけで足りてしまう。こうなると自宅に充電器なくても何ら問題なし!
少し脱線する。
現在、家庭用の2倍以上の太陽光発電施設で作った電力の買い取り値は、1kWhあたり10円にしかならない。
その電力を電気自動車の充電用として販売すれば、電力会社の電力料金である40円くらいで売っても儲かる。買う側だってガソリン代よりずっと安価。
ショッピングセンターの周囲に土地があれば、そこで作った電気を駐車場で売るなんて面白いかと。いずれにしろ普通充電なら簡単に増やせます。
急速充電器はどうか? 世界規模で見ると順調に増えている。
5年前の2017年における海外の急速充電器数は7000程度。我が国も健闘しており、同じくらいあった。
直近の数字だとどうか? 日本を見ると横ばいの7800。この5年でほとんど増えていない。一方、海外は順調に増えている。アメリカとヨーロッパだけで4万2000。
中国なんかすでに22万あると言われており、現在進行形でドンドン作られていると考えていい。先行していた我が国ながら、もはやブチ抜かれた。
ただ急速充電器は難しいと思う。
電源の確保すら「キュービクル」と呼ばれる大容量電力を引っ張る装備が必要で、維持にもお金掛かる。
だからこそ増えないし、直近だと初期型の急速充電器を撤去して廃止というケースも出てきた。
かといって急速充電器で利益を上げようとすれば、ガソリンより圧倒的に高い単価にしなければならない。実状を知らない人は「日本も高性能急速充電器を入れろ!」と言う。
150kWだの350kWだのという性能を持たせたら、もはや実用的な電気料金じゃ無理。1000万円する高性能電気自動車に乗れるお金持ち専用です。
というか、少なくとも2050年までは350kWの急速充電器使うよりガソリン入れて走ったほうが安い。我が国では緊急用という位置づけしかできないと思う。
ということで、二酸化炭素の排出量を本気で減らそうとするなら、羽田空港に200V普通充電器が5つしかないことから考え直すべきでしょう。
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コメント
コメントの使い方無理だって。
言い出しっぺのヨーロッパだって全部がEVになったら量というより給電が間に合わないよ。
こんな流れで慌てて電気に全振りしちゃったら土壇場でやっぱ無理、やめるわ、ってことになりかねない。慎重にね。
この人の議論はいつも電気代とガソリン代の比較をしているが、電気代には揮発油税が入っていない。
税金抜きのガソリンと電気代で比較すべき。
EVにも今後、走行課税なり何らかの課税がされるはず。
EVの普及とかEVの充電施設以前にまず電力不足をどうにかしろとは思う。
EVはかなりの電力消費するのにも関わらず、EVがほとんど普及してない現在でも政府が節電要請出してる時点でEV普及とか無理だろうよ。
電気代の安さ・長い充電時間・維持コストの高さという三重苦で、充電インフラは商業的に成り立たないです。
その上、莫大な環境負荷が掛かります。BEVの普及なんていうアンチSDGs行為さえしなければ、充電インフラなんて必要ないのです。欲しい人が家庭に設置すればいいだけになる。
本当に考え直すべきは、国沢さんや意固地に普及狙う利権者たちです。