ついに2019年のF1がスタート。ホンダにとって勝負の一年となるシーズンは、3月15日からオーストラリアグランプリで幕を開ける。
2018年からレッドブルグループ傘下のトロロッソに、そして今季から満を持して強豪レッドブル本体にもパワーユニット供給を開始するホンダ。レッドブルは2018年シーズンに4勝をあげた強豪チームだけにその期待は高まっている。
2015年の復帰後、未勝利が続くホンダにとってF1での優勝となれば2006年第13戦ハンガリーグランプリ以来の快挙。新生「レッドブル・ホンダ」が今季、表彰台の頂点に立つ可能性はどれほどのものなのか? F1ジャーナリストの津川哲夫氏が解説する。
文:津川哲夫
写真:Getty images/Red Bull Content Pool、Mobility land
「優勝」への挑戦が今季の課題の全て
いよいよ待望のレッドブル・ホンダが走り出す。
2015年から発進したホンダF1、最初の3年間はマクラーレンとのタッグで苦しんだものの、2018年からレッドブル傘下のトロロッソにパワーユニットを供給、目標とした信頼性と確実なパフォーマンスの向上を成し遂げ、まだトップ勢には届かぬものの、パワーユニット全域の総合性能を向上させ、その差を縮めてきた。
今シーズンは咋年にホンダがやってきた成果を実戦で確実に発揮させること、信頼性の高次元での確立、パフォーマンスの高度安定、そして優勝を含めた上位への挑戦が課題の全てだ。
もちろん、上位への挑戦は、ホンダのパワーユニットだけに懸かっているわけではない。昨年“最高の車体”と言われたレッドブルだが、リタイアなどで失ったポイントは大きかった。ルノーのパワーユニットにトラブルが多かったのは確かだが、ギアボックストラブルやアクシデントなど、車体やチーム、そしてドライバーに起因する問題も多かった。
したがって「車体とチームは良いがパワーユニットがダメ」という理屈は通らない。もちろん、どんな引き算をしても、レッドブルの車体性能が極めてハイレベルであることに間違いはなく、今シーズンもパフォーマンスを極端に落とす可能性は極めて少ないのも確かだが、レッドブル側にもまだまだ開発向上の余地が残されているというわけだ。
それゆえ今シーズン、レッドブルがこれらの問題を解決し、ホンダが安定したパフォーマンスを確保できれば、昨年レッドブルがルノーのパワーユニットを搭載して勝ち得た4勝をホンダで取れない理由は何もないはずだ。
ホンダと“トップ2”との差は確実に縮まる
さらに今年、ホンダのパワーユニット開発は、これまで以上に強化されることになる。なぜなら今シーズンは、レッドブルとトロロッソのマシンが“実に親密な関係”となったからだ。それはレッドブルが、かつてミナルディを買い取ってチーム名をトロロッソとした時に目論んだ“完全Bチーム体勢”の確立だ。
フェラーリと技術提携を結ぶ新興チーム「ハース」の登場以来、(関係の深い傘下のチームに対して)車体とボディワークを除く全てのパーツを供給することが事実上認められたので、トロロッソは、ついにレッドブルのクローンに近い車体を準備できた。
実際に今季を戦うトロロッソの「STR14」は、レッドブルの「RB14/15」マシンといってよい。つまり、レッドブル・ホンダ陣営は、戦闘力の高い4台のマシンでの連携開発が可能になったのだ。
もちろん、レッドブル・ホンダ陣営だけではなく、ライバルチームの向上も間違いないはずだが、パワーユニットに限っていえば、現状での伸びしろはトップ2(=メルセデス、フェラーリ)よりもホンダのほうに分があるはず。少なくともホンダのパワーユニットは、これまで以上にトップ2との差を縮めているはずだ。
さらに、これまで圧倒的な強さを見せてきたメルセデスは、昨年からフェラーリ、そしてレッドブルに追い上げられ、徐々にそのアドバンテージは失われ始めてきている。これは追いすがるチームの伸びしろと、頂点を極めてしまったチームとの向上率の違いが成せる技なのだ。
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