ペダルの踏み間違えはなぜ起きる? 対処法は?

ペダルの踏み間違えはなぜ起きる? 対処法は?

 自動車のブレーキとアクセルの踏み間違えによる事故が、あとを絶たない。アクセルとブレーキは運転操作の中でも基本中の基本である操作であり、また、踏み違えによる事故はいわゆる「暴走」状態で起こることが多いため、「なぜそうなるのか」と疑問を持つ方も多いだろう。では、なぜ踏み違えは起きるのか、対処法はあるのだろうか。

 元日産自動車の開発エンジニアである自動車ジャーナリストの吉川賢一氏に、そうした原因と対処法について伺った。
文:吉川賢一 イラスト、写真:Adobe stock


■踏み違え事故は、実は若者も起こしている

 交通事故総合分析センター(※1参照)によると、ペダルの踏み違えによる人身事故の割合は、平成24-28年調べにて、24歳以下は約1.5%、25-54歳は0.8%、55-64歳は0.9%、65-74歳は1.5%、75歳以上では3.1%と、加齢の影響が運転応力の低下をもたらしていると考えられる」としている。
※1 https://www.itarda.or.jp/itardainfomation/info124.pdf

 AT車の場合、アクセルとブレーキが並んで配置されており、それぞれ「踏み込む」という同じ動作で操作するペダルが並んでいるため、誰にでも踏み間違える可能性はある。運転経験が絶対的に少ない24歳以下であっても、踏み違えが発生している傾向にあるが、やはり75歳以上の高齢者にて、踏み間違え事故の割合が多いのは事実のようだ。

■踏み違え事故の特徴とは?

 さらに、財団法人 国際交通安全学会の報告書(※2)によると、踏み違え事故は、事故時の車速が20km/h以下が全体の70%と最も多くなっている(図13)。また、特筆すべき特徴として、ペダル踏み違え事故では、発進時の事故の割合が高い。発進時の割合は全事故では 16.3% であるのに対し、ペダル踏み違え事故では 1.9 倍の 30.8% となっている(図12)。
※2 https://www.iatss.or.jp/common/pdf/research/h2294.pdf

 また、事故を起こしたドライバーは、アクセルをブレーキだと思い込んで踏み込んでいるため、かなりのスピードが出てしまい、他の交通事故に比べて大事故に繋がりやすいのも特徴だ。さらには、これらのドライバーは自分の意図しないクルマの動きに動揺し、反射的に間違って踏んだアクセルペダルをさらに踏んでしまう、という傾向もある。

メーカー各社は先進安全装備をウリにしており、ペダル踏み間違い防止装置の標準装備化も進んできた。いずれ装着義務化していただきたい

■もっとも危険なシチュエーションとは?

 踏み違え事故は、とあるシチュエーションで非常に発生しやすい。そのシーンとは、「バックで駐車をするとき」だ。

 バックで駐車をするとき、ドライバーは身体をねじって、後方を確認しながら駐車をする。このとき、身体をねじることで、ブレーキペダルにのせている足首もねじれる。そのため、ブレーキペダルに足をのせていると認識していたはずが、実はアクセルペダルに足がかかっていて踏み違えてしまうのだ。

 また、渋滞時や駐車場内など、ブレーキとアクセルを頻繁に踏みかえている状況でも起こりやすい。ペダル操作を頻繁にしているうちに混乱して左右を間違えてしまうのだ。

■踏み違えをおこさない対策とは?

1. 右足はブレーキペダルを軸にして、動かすようにする。

 右足の位置を、ブレーキペダルに対してまっすぐに配置し、かかとをしっかり床につけ、アクセルを踏むときはブレーキペダルに軸を置いたまま、足先を右へ動かすようにする。これはAT車もMT車も基本は同じだ。アクセルとブレーキの間に支点を置いてしまうと、アクセルとブレーキの間に足が落ちてしまったり、混乱して誤操作に繋がりやすい。

2.発進時にインジケーターのチェックを心がける

 前述したように、踏み間違えによる事故は発進時に起こりやすい。発進する際にはインジケーターをチェックし、進行方向に間違いがないかを確認し、ペダルの位置も再確認をしてからアクセルを踏む、というクセをつけることが大切だ。発進の際は特に慎重に。携帯電話はもちろん、同乗者との会話も注意がそれる原因となるので控えるべきだ。

次ページは : ■まとめ

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