かつては、高性能車に必須だった、ボンネットのエアインテーク。走行中の空気の流れを分断する位置に装備されるエアインテークは、大きな空気抵抗となっていたが、エンジンの廃熱のためには必要なものだった。
しかし昨今は、ごく小さな穴になっていたり、そもそもエアインテークがない高性能スポーツカーも増えてきた。ボンネットのエアインテークはなぜ必要なくなったのかをご紹介しながら、それでも必要なクルマもあること、また、空力設計の最新事情についてもご紹介しよう。
文:吉川賢一
写真:HONDA、NISSAN、TOYOTA、LOTUS、INFINITI、SUBARU、ベストカー編集部
技術の進化で必要なくなった
ボンネットのエアインテークが減ってきた最大の理由は、シミュレーションの飛躍的な進化だ。シミュレーション技術が進化したことで、エンジンルーム内の空気の流れをコントロールすることが可能となり、エアインテークを設けなくても、エンジン廃熱をすることができるようになったのだ。
たとえば、2017年1月に登場した、ボンネットに大きなエアインテークがあるFK8型シビックタイプRでは、フロントグリルから取り込まれてラジエーターを通過した熱い空気を、アルミボンネット上に設定したインテークダクトからエンジンルーム内へ取り込んだ走行風によって、車外へ放出する方式をとっていた。ただ、それから5年半後となる2022年9月に登場したFL5型シビックタイプRでは、FK8型のようなド派手なエアインテークの代わりにエアアウトレットが装備されており、大開口グリルから取り込んだ空気を、大径・高性能ラジエーターに送り込み、廃熱をフロントフード上のベントから逃がすエアフローレイアウトを採用している。
冷却技術の進化も、ボンネットのエアインテークが不要となった理由だ。400ps超というハイパワーV6ツインターボエンジンを積むスカイラインNISMOやフェアレディZ NISMOには、ボンネットにエアインテークやダクトなどが設けられていないが、これらには強化ウォーターポンプを採用した水冷式インタークーラーが採用されており、これによって、エアインテークを設けなくても、限界領域までターボエンジン性能を使うことができるとのこと。ボンネットのエアインテークは、さまざまな技術の進化によって、必ずしも必要ではなくなってきたのだ。
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