上品で上質。それはわかるがいまひとつ大きな「ウリ」が伝わってこないマツダ3(旧アクセラ)。
テストコースでの試乗でも、正直言って強いインパクトを感じることはできなかった。“リアルワールド”、つまり実際の公道での魅力はどうなのか?
というわけで、自動車評論家 鈴木直也氏による一般公道での試乗レポートを、満を持してお届け。
なお、試乗に使用されたのは「マツダ3 FASTBACK 1.8Lクリーンディーゼル」。最上級グレードの「XDバーガンディセレクション」(オプション込み315万100円)で、一般道、高速道路、渋滞路など、さまざまなステージでの実力を試すことができた。
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※本稿は2019年8月のものです
試乗・文:鈴木 直也/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年9月26日号
※記事初出時、写真のキャプションに誤りがありました。読者の方よりご指摘があり、修正いたしました。慎んでお詫び申し上げます。(2019.9.27 13:20)
■いよいよ公道で評価を下す マツダ3の“本当の実力”はどうなのか!?
注目のマツダ3にようやく一般公道で試乗する機会を得た。テストコースでの試乗のチャンスはあったが、ロードカーは一般公道で評価すべしというのがぼくの持論。
さまざまな路面、さまざまな速度レンジ、そしてほかの車両と入り混じって流れる交通状況。こういった“リアルワールド”で「イイな!」と思えるクルマこそが本物だ。
これまで何回かマツダ3に関する原稿を書いてきたが、すべて「結論は公道で試すまで保留」としてきたのもそれが理由。そういう意味では、やっとマツダ3に一定の評価を下す時がきたというわけだ。
用意されたのは、ファストバックXD Lパッケージ。価格は“素”で298万9200円だが、360°セーフティパッケージやBOSEサウンドシステムなどのオプションを装備した試乗車は315万100円となる。
まず、誰もが高く評価するデザインについてだが、ここは何度見てもスゴイと思う。
デザインは「好き嫌い」で評価が分かれるが、デザインの“クォリティ”には普遍的な優劣がある。
微妙なカーブで連続した曲面に映り込むハイライトは美しいが、それがショーカーだけなら絵に描いた餅。量産車にはドアやボンネットなどのパーティングラインが不可避だが、そういうラインを横切って美しい連続局面を成形するのは、高度な生産技術と精密なプレス金型が不可欠だ。
マツダ3はショーカーなみの高度なデザインクォリティを、量産車で実現しているところが素晴らしい。そして、そこにはそれなりのコストがかかっているものと思われる。
インテリアについても、クォリティは期待を裏切らない。ふんだんにステッチをあしらった全面ソフトフェイシアのインパネ造形の質感は、この分野ではベンチマークとされるアウディに匹敵するレベル。
国産Cセグはおろか、欧州Dセグと混じっても少しも見劣りしないプレミアム感がある。
また、見栄えだけではなくマツダコネクトの起動スピードやシートの座り心地など、内容的にも大幅グレードアップが実感できる仕上がり。
内外装などのいわゆる「ショールーム品質」については、価格の値上がり分を納得させる実力を備えている。
しかし、デザイン品質で感じたこの高揚感は、残念ながらエンジン、パワートレーンまでは持続しなかった。
外から見て、乗り込んで、ハンドルを握って、徐々に盛り上がってきた期待感は、走り出すと一気に現実に引き戻される。
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