空冷Zの最速伝説を受け継いだ、ローソンレプリカこと「Z1000R」

空冷Zの最速伝説を受け継いだ、ローソンレプリカこと「Z1000R」

取材協力:バイク王つくば絶版車館

 「ローソンレプリカ」として知られる「Z1000R」は、AMAスーパーバイク選手権でのエディ・ローソンの優勝を記念して発売された。ライムグリーンのカワサキワークスカラーを纏った「Z1000R」は、カワサキが初めてリリースした「レーサーレプリカ」であった。

文/後藤秀之
 

第二世代のZを象徴する「Z1000R」

 1976年から2015年までアメリカで開催されていたAMAスーパーバイク選手権は、多くのアメリカ人WGPライダーを生み出した。その中でも「ステディ・エディ」と呼ばれたエディ・ローソンは、ヤマハで3回とホンダでも1回世界チャンピオンを獲得したレジェンドライダーである。

 エディローソンがAMAスーパーバイクに参戦を開始したのは1980年のシーズンからで、並行してGP250ccクラスにも参戦していた。AMAスーパーバイクではカワサキと契約していたローソンは、1980年のシーズンはZ1000MKIIで参戦。1981年のシーズンはZ1000Jで参戦し、ホンダのCBを駆るフレディ・スペンサーを抑えてチャンピオンを獲得した。

 

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AMAスーパーバイク選手権におけるエディ・ローソンのゼッケンは「21」。1981年シーズンはスペンサーの3勝に対して、ローソンが4勝してチャンピオンとなる。

 

 

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第二世代の空冷Zのファーストモデルとなった「Z1000J」の北米モデル。このバイクをベースにロブ・マジーがローソンのチャンピオンマシンを作り上げた。

 

 1980年シーズンにローソンが走らせたのはロブ・マジーが手がけた「Z1000J」ベースのレーサーで、ゼッケンナンバーは21。この年のチャンピオンを記念して北米で発売された「Z1000R」は、同年にデビューした「Z1100GP」と同じ角タンクとビキニカウルが装備されていた。1982年シーズンはこの「Z1000R」をベースにした「Z1000S1」でローソンは再びチャンピオンとなり、1983年に北米、ヨーロッパなどに向けて「Z1000R2」が発売された。1982年にはプライベーター用にZ1000J/Rにキットパーツを組み込んだコンプリートマシン「Z1000S1」を発売。このS1キットにはツインプラグ化されたヘッドや、後のZRXシリーズなどでも再現された「S1タイプスイングアーム」などが含まれていた。

 

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1981年のローソンのチャンピオンを記念して発売された「Z1000R」は、北米で900台ほどか販売されたという。

 

 

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カワサキのワークスカラーであるライムグリーンでペイントされ、KERKER製の集合管や専用のシートなどを装備していた。

 

 

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1982年のシーズンはZ1000Rベースの「Z1000S1」でローソンは参戦し、2年連続のチャンピオンとなる。また、プライベーター用にS1キットを組み込んだコンプリートも発売された。

 

 ローソンはヤマハへ移籍して1983年からWGPへと戦場を移したが、この年GPz1100ベースのエンジンを搭載した「Z1100R」も発売されている。

 

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ローソンがカワサキを去った後も、「Z1000R2」そして「Z1100R」が発売された。

 

 
 
 

AMAスーパーバイクと世界耐久を制したエンジン

 「Z1000R」は1980年に登場した「Z1000J」がベースになっている。「Z1000J」は「Z1000MKII」の後継モデルとして開発され、新設計のフレームに大幅にリファインされたエンジンを搭載した第二世代最初のZである。「Z1000MKII」までの旧Z1000系はボア×ストロークが70×66mmの1015ccだったが、「Z1000J」ではレースレギュレーションの変更に合わせて69.4×66mmの998ccへと変更。最高出力は93PS/8000rpmから102PS/8500rpmへと高回転・高出力化してZ系として初めて100PSをオーバー、最大トルクも9.1kgm/6500rpmから9.3kgm/7000rpmへとアップした。「Z1000R」は基本的に「Z1000J」と同スペックのエンジンを搭載している。このエンジンは耐久レーサー「KR1000」のベースとしても使用され、1981年から1983年まで3年連続で世界耐久選手権のメーカータイトルを獲得している。

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ハンドルはアップタイプで上半身はかなり起きた状態となり、ステップもほぼ体の真下にあるストリースバイクらしいポジションとなっている。

 

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身長171cm、体重65kgのライダーが跨った状態。シート高はそれほど高くないが、シートの幅があるため両足を着くとかかとがかなり浮いた状態になる。

 

 

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Z1系のエンジンをベースとして入るが、腰上を中心に大幅に手が入れられた第二世代と言える空冷4気筒エンジン。

 

 

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レースレギュレーションの変更に合わせてボア×ストロークを69.4×66mmとした998ccながら、最高出力は93PSから102PSへアップした。

 

 

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Z1000Jのエンジンがそれ以前の1015ccから998ccに変更されたのは、レースのレギュレーションに合わせてのこと。このエンジンをベースにした「KR1000」は、耐久レースで無敵を誇った。

 

 「Z1000R」には角形ライト+ビキニカウルと角タンク、そしてライダーとパッセンジャーの間に大きな段差がつけられたシートなどが装備される、また、リアショックはリザーバータンク付きとされ、タンクの上面にチャンピオンステッカーが貼られ、エキゾーストシステムもKERKER製のメガホンタイプが装着された。

 1983年に発売された「Z1000R2」はタンクからシートカウルにかけてのグラフィックが変更され、ライムグリーンの他にホワイトもラインナップ。チャンピオンステッカーは貼られず、ヨーロッパ仕様はマフラーもKERKER製ではなく通常の2本出しとなり、エンジンのスペックは最高出力104PS/8500rpm、最大トルク9.1kgm/7000rpmと若干ではあるがパワーがアップしトルクがダウンしている。発売時にはローソンがヤマハへ移籍していたため、R2以降は「ローソンレプリカ」とは呼ばず、「スーパーバイクレプリカ」とされた。

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Z1100GPに装着されていた角形ライト+ビキニカウルを装着し、スタイリッシュなデザインに仕立てられる。

 

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メーターはセンターに小径のフューエルゲージを備えた三眼タイプ。インジケーター類はメータ内に収められ、距離計は別に設けられている。

 

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容量21.4Lのいわゆる角タンクを装備する。Z1000Jは北米仕様は丸タンク、欧州仕様にはこの角タンクが装備されていた。

 

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タンクの上面のエディ・ローソンのサインが入ったチャンピオンステッカーは、最初の「Z1000R」のみに貼られた。

 

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パッセンジャーシートと間に大きな段差を持つシートは、スーパーバイクレーサーに装着されていたシートのデザインを踏襲したものだ。

 

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シートカウルにも、タンクと同じホワイトとブルーのストライブが入る。「Z1000R2」ではストライプの配置が変更されている。

 

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かなりゴツい印象を受けるステップホルダーに、同じくゴツいラバー付きのステップが取り付けられる。

 

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KERKER製の集合タイプエキゾーストシステムが標準で装備された。メーカーが社外製のエキゾーストシステムが採用するのは、当時としては極めて珍しいことだった。

 

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フロントホイールは19インチで、ゴールドにペイントされた7本スポークタイプのキャストホイールが採用された。

 

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フロントブレーキは280mm径のディスクローターと1ポットキャリパーの組み合わせとなり、これをダブルで装着している。

 

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スイングアームはシンプルな丸型スチール製で、リアホイールはフロントと同じ7スポークタイプのキャストホイールだが、サイズは17インチとなる。

 

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リアショックはゴールドペイントされたリザーバータンク付きが装着され、リアブレーキは270mm径のディスクローター+1ポットキャリパーの組み合わせ。

 

 現在のように「レースありきの市販車」ではなく「市販車ベースのレース」で争われていたスーパーバイクを象徴する「レーサーレプリカ」であり、カワサキのレーシングヒストリーにおけるレガシーと言えるだろう。

 
 

Z1000R主要諸元(1981)

・全長×全幅×全高:2240×845×1230mm

・ホイールベース:1520mm

・シート高:775mm

・乾燥重量:222kg

・エンジン:空冷4ストロークDOHC2バルブ直列4気筒998cc

・最高出力:102PS/8500rpm

・最大トルク:8.5kgm/7000rpm
・変速機:5段リターン

・燃料タンク容量:21.4L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク

・タイヤ:F=100/90-19、R=120/90-18

撮影協力:バイク王つくば絶版車館

 

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あらゆるジャンルの絶版車が揃うショールーム。カラーリング違いなども数多くストックされ、好みの1台が見つかるはずだ。

 

住所:茨城県つくばみらい市小絹120

電話:0297-21-8190

営業時間:10:00~19:00

定休日:木曜日

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/441753/

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