一部品に複数の機能を持たせ、超高密度レイアウトを実現
スペース問題は、各部品に複数の役割を持たせることで解決した。
通常は各々の部品を保持するステーなどで組み付け、スペースレイアウトをするが、ダックスではその手法では内容物が到底収まりきらなかった。そこでエアクリーナーにバッテリーボックスやキャニスターを固定する機能を持たせたり、エアクリーナーを燃料タンクで支えたりといった構造を採用。驚異的な高密度レイアウトを実現している。
「当初はエアクリーナーボックスをモンキーのようにエンジン前方へ配置する案もありましたが、やはりダックスはプレスフレーム内に収めるべき。ただでさえスペースがないのに容量2.6Lほどのエアボックスを内蔵させるため苦労しました」と吸排気設計PLの倉沢侑史氏。
吸気口もプレスフレーム内部にあり、空気を導入しにくい構造だが、スロットルカバー形状の工夫などで高効率化を図った。
「パズルのようでしたが(笑)、量産化への配慮もしながら造り込みました」(倉沢氏)。
「面の表情」にこだわり、工芸品の趣が漂うデザイン
そしてデザインは、フレーム内に部品をキレイに入れることと、「面の表情にこだわった」とデザインPLの横山悠一氏。
「シンプルな形状なので、簡単につくると安っぽい仕上がりになってしまう。そこで工芸品のようなイメージを目指し、データ上で調整を繰り返しました」と話す。どこか温かみのある雰囲気は、微妙なラインや面の積み重ねで生み出されている。
デザイン面で最も苦労したのはガソリンタンクの収め方。開発当初はもっと前方に位置していたが、搭載スペースの関係でどんどん後ろになってしまった。
よく見るとリヤフェンダーが複雑な形状となっているが、これはタンクの搭載スペースをギリギリまで稼いだ末の産物だ。
熱い開発者をまとめつつ、コロナ禍以降で初の世界展開モデルを量産化
全体の開発として「チーム全体のバランスを取るのが大変だった」と話すのは、テスト担当とPL代行の佐藤康氏だ。
思い入れの強い人たちがとりわけ多かった上に、レジャーバイクという性格上、目指す性能が漠然としていたのが理由だ。スポーティすぎても走らなくてもダメだし、快適性も重要。もちろん外見はダックスである必要がある。
「目指すべきポイントがぼけてしまい、チームのベクトルを合わせるのが大変でしたね。プレスフレームの性能が目標から大きく外れなかったのが幸いでした。ダックスのカタチという守るべきポイントをしっかり決めながら性能をアジャストしていきました」。
最終的には社内の試乗会で「まとまりのいいパッケージと評価いただけた」という。
こうした開発を“コロナ禍”で行うことも異例だった。
直近のブランニューであるホーク11は国内専用モデル。一方ダックスほかホンダの125レジャーバイクはタイで生産され、グローバルモデルとなる。コロナ禍以降で世界展開する新規設計モデルとしてはダックスが初だ。
「タイで量産に移行していだたく中で、通常はメンバーが現地に飛び、その場で現物を見て判断しながら量産へのチューニングを行います。しかし今回は全てテレビ会議で通訳を介して進めました。コミュニケーションが取りにくく、大変時間がかかりました」とPLの八木氏が話す。
ダックスはまさに異例尽くしの開発だったが、「あれだけの品質で送り出せたのは自慢できます」と八木氏は胸を張る。
コメント
コメントの使い方