東京都でバイクの死亡事故が急増! 重要な胸部プロテクターが普及しない意外なワケ

東京都でバイクの死亡事故が急増! 重要な胸部プロテクターが普及しない意外なワケ

 東京都内でバイク乗車中の交通事故死者数が増えているという。警視庁に取材すると、今年から3月末日現在まで既に12人が命を落としており、全員が胸部プロテクターを装着していなかったことがわかった。

 バイクの死亡事故では頭部に次いで胸部の損傷が多いが、なぜプロテクターの導入は進まないのか? その辺の事情も探ってみた。

文/沼尾宏明、写真/警視庁、ホンダ、岡田商事(トップ画像)、RSタイチ

【画像ギャラリー】胸部プロテクターの普及率はたったの8.9%、詳細な統計を見る!(10枚)画像ギャラリー

「胸部」が原因で死亡したライダーが最多だった

二輪事故では、衝突したクルマをはじめ、ガードレールなどの構造物に胸部を強打することで致命傷に至るケースも多い。この被害を最小限に抑えるのが胸部プロテクターの役目だ ※画像はRSタイチHPより
二輪事故では、衝突したクルマをはじめ、ガードレールなどの構造物に胸部を強打することで致命傷に至るケースも多い。この被害を最小限に抑えるのが胸部プロテクターの役目だ ※画像はRSタイチHPより

 東京都内で二輪乗車中の死亡事故が急増している。今年1月から3月末日までの間に、都内の交通事故で死亡したのは26人(前年同月比は同数)。このうちバイクの死亡者数は12人(同3人増)と約半数を占める。

 特に3月は前年の1人対し、7人と大幅に増加した。

 警視庁に取材してみると、死亡者の損傷主部位は次のとおり「胸部」が「頭部」を上回っていた。

 頭部……4人
 胸部……5人
 腹部……3人

 「損傷主部位」とは、損傷程度が最も重く、致命傷になった部位を指す。これまでの損傷主部位に関する統計では頭部が最も多く、胸部が次点だったが、今回の統計では胸部がワースト1となっている。

 頭部はヘルメットが義務化されており、きちんと着用していれば防護できる確率が高まる。一方、胸部はプロテクターが普及していないのが現状。このたびの統計で死亡した12人のうち胸部プロテクターを装着していた人はゼロ。12人全員が非着用だった。

40~50代が通勤時の右直事故で命を落とすケースが多い

バイクはクルマより小さく見えがち。対向車のドライバーは遠くにいるように見えて右折や直進するケースがある。互いに対向車の動きに注意し、無理な右折や直進を避けたい。※画像は警視庁より
バイクはクルマより小さく見えがち。対向車のドライバーは遠くにいるように見えて右折や直進するケースがある。互いに対向車の動きに注意し、無理な右折や直進を避けたい。※画像は警視庁より

 さらに事故の状況を詳しく訊いてみた。警視庁によると、今年、二輪車乗車中の事故で死亡した12人全員が対四輪車の事故で、事故類型(事故のパターン)は次のとおり。

 進行中の追突……2件
 出会い頭……2件
 追越追抜時……3件
 右折直進……5件

 さらに「二輪死亡事故が増加した要因」を訊ねてみると、「事故の原因はそれぞれ異なりますが、二輪乗車中の事故で亡くなった12名のうち、通勤時の発生が75%を占めています」とのこと。

 また、死亡した方の年代やバイクの排気量などを訊ねたところ、以下のように年代のみ回答があった。

 20代……2名
 30代……1名
 40代……4名
 50代……4名
 60代……1名

 つまり40~50代のライダーが通勤中にクルマと事故に遭い、胸部にダメージを受けて命を落とした方が最も多かったことになる。もし胸部プロテクターを装着していれば命を救えたケースも少なからずあったはずだ。

 なぜ3月に死亡事故が急増したのかは不明だが、春が近づいて気温が高くなり、これまで電車通勤していた方が久々にバイク通勤を再開したケースが多いと思われる。

 ちなみに2022年通年での二輪乗車中交通死亡者は40名で、致命傷部位は「頭部」(18人、45%)に次いで「胸部」(10人、25%)が多かった(警視庁統計より)。

 二輪乗車中の死亡事故が増加傾向にあることに関して、警視庁にコメントを求めたところ、次の回答を得られた。

「二輪乗車中の死亡事故で多いのが『単独事故』と『右直事故』です。事故の原因は様々ですが、その一つとして速度超過が考えられます。急いでいるときこそスピードを控え、余裕を持った運転を心がけましょう。
 また、二輪乗車中の事故で亡くなった方の多くが、『頭部』と『胸部』に致命傷を負っています。自分の命を守るため、ヘルメットが事故の衝撃で脱落しないように、あごひもをしっかりと締め、普段から胸部プロテクターを着用しましょう」。

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