ヤマハY-AMTとホンダE-クラッチを比較試乗! スポーツバイクの楽しさをよりアップするのはどっち?

ヤマハY-AMTとホンダE-クラッチを比較試乗! スポーツバイクの楽しさをよりアップするのはどっち?

 ヤマハのY-AMTとホンダのE-クラッチ。いずれも、シフト操作をよりイージーとし、幅広いライダーが、スポーツライディングをさらに楽しめることが期待できる注目の最新技術ですよね。

 Y-AMTがMT-09、E-クラッチはCBR650R/CB650Rに搭載しますが、実際に、この2つのシステムには、どういった違いがあり、それぞれどんな乗り味を体感できるのでしょうか? ヤマハが主催したMT-09Y-AMT試乗会に参加し、CB650RなどのE-クラッチ搭載車との比較試乗をやってみました。

文/平塚直樹 Webikeプラス
 
 

ヤマハY-AMTとホンダEクラッチは何が違う?

 Y-AMTは、4輪車でいえばセミオートマ(セミオートマチック)的な機構です。4輪車の場合は、ステアリングに装備したパドルシフトで変速操作を行いますが、Y-AMTでは、左ハンドルに備えたシフトレバーで実施。一般的なバイクのMT(マニュアル・トランスミッション)車は、変速操作にクラッチレバーやシフトペダルを使いますが、Y-AMTは、それらを廃止した新開発の自動変速トランスミッションだといえます。

 また、フルオートで変速するAT(オートマチック・トランスミッション)機能も備え、ライダーが任意に選択することが可能。これらにより、ライダーは、クラッチやシフトペダルの操作が不要となり、体重移動やスロットル開閉、ブレーキングなど、ほかの操作に集中できることで、よりバイクを操る楽しさを堪能できるといいます。

 なお、ヤマハでは、このシステムを搭載したスポーツネイキッドMT-09 Y-AMTを2024年内に国内販売する予定。スタンダードのMT-09と上級グレードMT-09 SPの間に位置する中間グレードとして発売します。

 

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今回試乗したMT-09 Y-AMT

 

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MT-09 Y-AMTではクラッチレバーはなし

 

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シフトペダルも未装着となるMT-09 Y-AMT

 

 一方、CBR650R/CB650Rの2024年モデルに搭載されたホンダEクラッチ。こちらは、クラッチレバーやシフトペダルを備えつつ、操作を自動化した新機構です。発進、変速、停止などでクラッチレバーの操作が一切。ただし、変速操作にシフトペダルを使うことは、従来のバイクと同様です。

 また、ライダーがクラッチレバーを使った操作を行いたい場合は、レバーを握るだけで手動操作へ変更可能。さまざまなスキルや嗜好のライダーに対応している点では、ヤマハのY-AMTと同じといえます。

 

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CBR650R(右)とCB650R(左)のホンダEクラッチ搭載車

 

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ホンダEクラッチ搭載車はクラッチレバーも装備

 

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ホンダEクラッチ搭載車には、シフトペダルも備えている

 

 
 
 

発進はY-AMTの方がスムーズ

 まずは、停止状態からの発進。MT-09 Y-AMTには、ATモードとMTモードがあり、右ハンドルのスイッチで切り替えが可能。また、ATモードには、穏やかな走りとなる「D」と、スポーティで俊敏な走行が可能な「D+」といった2つのモードも用意しています。

 MT-09 Y-AMTでは、特に、ATとMTのどちらのモードでも、発進時の加速がかなりスムーズなのが印象的です。今回は、クローズドコースでの試乗でしたが、おそらく、一般道でも、アクセルをひねるだけで十分に交通の流れに乗れるほど余裕ある走りですね。

 

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MT-09 Y-AMTは発進時の加速がかなりスムーズ

 

 

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Y-AMTは右ハンドルのスイッチでATモードとMTモードを切り替えられる

 

 一方、CB650RなどのホンダEクラッチ搭載車も、発進時の加速はかなりスムーズ。クラッチレバーを駆使し、手動の半クラッチ操作を行うよりも、さらに余裕ある加速を味わえます。特に、登り坂で停車し、再発進する際は、違いが顕著。通常は、リアブレーキを徐々にリリースしながら、半クラッチも上手く使わないと車体が後退する場合もありますよね。そうしたシーンでも、ホンダE-クラッチなら、不安なく発進できます。

 

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ホンダEクラッチ搭載車も、発進時の加速は手動の半クラッチ操作を行うよりも余裕ある加速を味わえる

 

 ただし、例えば、サーキットなどでロケットスタートを決めたいときなど、より鋭い加速をみせてくれるのはMT-09 Y-AMTの方だといえます。ホンダE-クラッチを搭載するCB650RやCBR650Rが648cc・4気筒エンジンなのに対し、MT-09 Y-AMTのエンジンは、より排気量の大きい888cc・3気筒を搭載。低い回転数から発生するトルクが太いなどで、発進時の加速にも余裕があるためでしょう。

 また、CB650RなどのホンダE-クラッチ搭載車では、3000rpm付近でクラッチが自動でつながった後、エンジン回転が一瞬伸びにくくなる傾向もあります。その点、MT-09 Y-AMTでは、アクセルを開けた分、エンジン回転がシャープに伸びる感じ。ヤマハによれば、テスト時のデータでは0-400m加速で10.9秒というタイムも実現。大型バイクらしい、鋭い加速力を堪能できます。

コーナーでのスポーティなシフト操作感は互角

 発進し、直線である程度の車速になったらシフトアップ、コーナーが近づくと減速やシフトダウンを実施。こうした一連の動作を、MT-09 Y-AMTは、ATモードにするとバイクが勝手にシフトアップやシフトダウンを行ってくれます。

 また、MTモードにすると、左ハンドルのシフトレバーで変速操作を行えます。「+」レバーを人さし指で引けばシフトアップ、「-」レバーを親指で押せばシフトダウン。さらに、「+」レバーと人さし指のみの操作も可能で、引けばシフトアップ、外側に弾けばシフトダウンとなります。シフトアップ時はアクセルを戻すなどの操作も不要で、クイックシフターと同等以上の素早い変速操作を可能とします。

 

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シフトレバーを使って軽快な走りを味わえるMT-09 Y-AMT

 

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左ハンドルに装備された「+」レバー

 

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左ハンドルに装備された「ー」レバー

 

 ちなみに、筆者の場合は、人さし指のみを使う操作方法の方が楽でしたね。理由は、減速時に上体が前のめりになり過ぎないようにするには、親指でもハンドルをしっかりとホールドしたいから。そのため、減速と一緒にシフトダウンする際は、できれば親指をレバー操作に使いたくないのです。

 一方、ホンダE-クラッチ搭載車の変速操作は、シフトペダルでアップやダウンを行いますが、シフトアップ時にシフトレバーを切ったり、アクセルを戻す操作は不要。また、シフトダウン時は、アクセルを戻し、前後ブレーキをかけながら、シフトペダルを踏み込めばよく、クラッチ操作は不要です。このあたりの操作は、シフトアップとシフトダウンの両方に対応するクイックシフターと同じですね。

 

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ホンダE-クラッチは、シフトアップとシフトダウンの両方に対応するクイックシフターに近い操作感

 

 MT-09 Y-AMTのMTモードでは指、ホンダEクラッチ搭載車は足を使って変速操作を行うという違いはあります。でも、どちらも、慣れの問題。いずれも、スムーズで素早い変速操作ができる点では、同等といったイメージでしたね。

 ただし、シフトレバーとシフトペダルのないMT-09 Y-AMTでは、筆者の場合、慣れないと、無意識に左足でシフトペダルの位置を探ってしまい、最初は、ライディングにやや集中できない感じでした。その点、シフトレバーとシフトペダルを装備しているホンダE-クラッチ搭載車の方が、ぱっと乗った際の違和感は少ないといえるでしょう。このあたりは、好みの問題もあるので、一概にどちらがいいのかは言えませんけれど。

MT-09 Y-AMTがアシスト&スリッパークラッチ不採用のワケ

 ほかにも、ヤマハのY-AMTとホンダEクラッチでは、特に、コーナー進入時に、減速しながら高いギアから一気に低いギアへシフトダウンした時の安定性が高いことも印象的でした。いずれも、過度なエンジンブレーキなどが発生せず、後輪がホッピングするなどの挙動が出づらいのです。

 ちなみに、MT-09 Y-AMTは、ベースとなったスタンダードのMT-09に採用しているアシスト&スリッパークラッチをあえて外しているそうです。理由は、ヤマハの開発者いわく、元々MT-09には電子制御スロットルを搭載しており、MT-09 Y-AMTでは、シフトダウン時にシステム上でエンジン回転数を制御し、過度なエンジンブレーキなどを抑える設定にしているのだとか。

 ただし、そうした電子制御システムとアシスト&スリッパークラッチを両方装備すると、それぞれの制御が干渉しあうなどで、うまく作動しないケースも出てくるのだとか。そのため、MT-09 Y-AMTでは、電子制御システムのみを活かしているのだそうです。

 CBR650RやCB650RのホンダEクラッチ搭載車は、いずれも電子制御スロットルはなく、シフトダウン時の過度なエンジンブレーキなどにはアシスト&スリッパークラッチで対応。つまり、より「電動化」されているのはMT-09 Y-AMTの方だといえます。このあたりは、ひとクラス上で、価格もより高い900ccクラスならではの優位性といえるかもしれません。

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MT-09 Y-AMTのエンジン(構造を分かりやすくしたカットモデル)

 

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MT-09 Y-AMTでは、あえてアシスト&スリッパークラッチを未装着としている

 

極低速のUターンではY-AMTの安心感が上

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