■高価なわりに使い勝手は「?」 JPNタクシーの意外な評価

しかし、“和製ロンドンタクシー”とも呼ばれたJPNタクシーであったが、ラゲッジスペースの積載性能はMPVスタイルの割にはクラウンコンフォート並みにとどまり、ロンドンタクシーは最大6名まで乗車できるのに、JPNタクシーは助手席と合わせて4名となるなどMPVスタイルの恩恵が少ないとの声も出ていた。
また、車いすのままでの車内乗り入れも、“ロンドンスタイル”とも呼ばれる、ボディサイドからの乗り入れを採用しているが、タクシー乗務員の間からは、“日本の道路事情を考えればリアラゲッジドアから乗り入れができるほうがよい”との声もある。
そして、価格も高いということもあり、一部地域では不買運動のようなものが起きたり、クラウンコンフォートの新車を生産終了間際に大量に仕入れ、ナンバープレートをつけずに自社でストックする事業者まで出てきた。
業界の要望もあって開発されたJPNタクシーだが、運行現場の声を十分すくい上げることはできなかったようである。
■現場の不満はこれで解決? シエンタに2列シート仕様が追加設定!

事業者の間ではJPNタクシーの正式発売前から、JPNタクシーがシエンタベースということで、ハイブリッドで3列シートのシエンタを購入し、サンプルとして営業運行に使う事業者もいた。
そしてシエンタに2列シート仕様が追加設定された。2列シート仕様のハイブリッドモデルを購入し、LPガスも燃料として使えるように改造し、ガソリンも使えるバイフューエル仕様に改造しても、JPNタクシーを導入するより安くあがるということで、シエンタタクシーはある意味順調に街なかに増えていった。
皮肉な話だが、燃費性能に優れるJPNタクシーの登場により、LPガススタンドのニーズが激減。東京23区内ですら、LPガススタンド空白地帯が生まれることとなった。
地方部におけるLPガススタンドの廃業はさらに深刻な状況にあり、いまではガソリンハイブリッド車がタクシー車両のメインとなっている地域もある。そのため地域によってはLPガスが使えるようにする改造を必要としない地域もあるので、ますますシエンタタクシーの魅力が高まっている。
■本当に便利なのはベース車両のほう? 高まるシエンタへのニーズ

都市部でも東京都内大手の事業者が、シエンタタクシーを一気に100台増やす(入れ換え)といった動きもあり、シエンタタクシー人気はまだまだ拡大していきそうである。
タクシー業界に近いある事情通は、
「ユニバーサルデザインを採用し、車いすに乗ったまま乗降できるJPNタクシーは、車いすを使われているひととの間での乗車拒否などのクレーム(乗務員が車いす乗降のためのスロープ設置を面倒くさがったり、その設置に時間がかかるなどが理由)が多く、時おりメディアでもその様子が取り上げられることがあります」
と語る。さらに、
「しかしユニバーサルデザイン対応していないシエンタでは、そのようなクレームを心配する必要がないとの理由でシエンタタクシーを積極採用するといった動きもあるようです」
と語ってくれた。
「シエンタにそのままタクシー仕様を設ければよかった」、このような声もタクシー業界内では聞かれるようになっている。
いまは新型コロナウイルスの感染拡大が収束を見せないこともあり、一時的にタクシー車両自体の入れ換えを手控える動きが出ているものの、シエンタタクシーを導入する動きは今後もまだまだ盛り上がりを見せていきそうである。
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