三菱の至宝「ランサーエボリューション」の偉業と軌跡を振り返る

■第三世代(2001年から2007年)

 ランエボは2001年登場のエボVIIからベースのランサーのフルモデルチェンジにより、第三世代となった。

 ボディサイズを拡大し、車重も若干重くなったエボVIIだったが、ボディ剛性の向上やインプレッサWRX STIのDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)に相当するACD(アクティブセンターデフ。センターデフの拘束力を状況によって変えられるよう3つのモードを持ち、ジムカーナのようなパーキングブレーキを使ったスピンターンもしやすくなった)などにより、戦闘力を向上させた。

 第3世代のランエボは、後述する2002年のエボXの思想に通じるところのあるATのエボVII GT-A、6速MTも加わった2003年のエボVIII、ルーフをアルミとするなどさらに進化した2004年のエボVIII MR(通称エボ8.5)、可変バルブタイミング機構MIVECを採用した2005年のエボIX、第三世代の集大成となる2006年のエボIX MR(通称9.5)と進化を続けた。

 また第三世代のランエボではIX以降、ワゴンボディがあった点も覚えておきたい。

日本自動車界の奇跡 三菱の至宝「ランサーエボリューション」の偉業
2006年、第三世代の集大成であるランエボ9 MR ワゴン(通称9.5)へと進化

■第四世代(2007年から2016年)

 ギャランフォルティスをベースとした第四世代となるランエボXは限定車ではないカタログモデルとなり、さらなるボディサイズ拡大と重量増というハンデもあった。しかし、エンジンは鉄ブロックで重かった4G型から一新。根本設計が新しく、軽量な4B型に変更されて、車体も一新した。

 そして4WDシステムはACD、AYCにASC(アクティブスタビリティコントロール、横滑り防止装置)も加わり、三菱自動車の純エンジン車ではS-AWC思想の究極となるものに進化した。

 さらにエボXではツインクラッチSSTと呼ばれる2ペダルのDCTも加わり、第三世代までに比べるとGTカー的なキャラクターになったところもあって、誰もが安全に速く走れるスポーツ4WDとなった。

 ランエボⅩは車名を変えずに、2008年に280馬力から300馬力へのパワーアップしたあとは、細かな改良を毎年のように繰り返し、2015年に5速MT車で313馬力にパワーアップした1000台限定のファイナルエディションを発売。これを最後に、惜しまれながら絶版となった。

■ランエボの凄さとは?

 ランエボの性能に関する情報は、現在YouTubeを発信の場としている(かつてはビデオマガジンだった)「ベストモータリング」から得ている人も多いだろう。筆者もその一人で、ベストモータリングでは毎号市販車をサーキットで走らせるという、今では信じられないくらい厳しいテストが行われており、ランエボはその主役の1台だった。

 当時を知るジャーナリストに話を聞くと、最初のランエボはパワーだけ強烈な乱暴なクルマ、エボIVはターボ関係の配管抜けや夏場のオーバーヒートなどのトラブルが頻発するなど、問題も少なくなかったそうだ。それがエボVIIIあたりからサーキットテストでもトラブルを起こすことが本当になくなり、速いだけでなく「強いクルマ」となったとのこと。

 その理由としては、WRCを代表としたラリー、サーキットではスーパー耐久レースや一般ユーザーの使用(ランエボが多く集まるサーキット走行会に三菱自動車の開発スタッフが足を運ぶこともあったという)、インプレッサとのたび重なる開発競争などが要因として考えられ、真摯な開発姿勢と競技を通じたスパルタ教育によってクルマが鍛えられたことに尽きる。

 また、ランエボはひたすら速さを追求していた時代もあったが、ビルシュタインダンパーを採用するようになったエボVIII MRあたりから、乗り心地に代表される質感も配慮するようになった点も進化のひとつと言える。

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