■モータースポーツからの市販車へのフィードバック
エボIVから採用されたAYCはWRCに参戦していたエボIIやエボIII由来のもの、アクセルオフの際もタービンの回転を維持しレスポンスを向上させるアンチラグシステムもエボIIIから市販車にも装着されており(市販車では作動はしてない)、こういった走りのアイテムがファンの心をくすぐった。
■WRCでの活躍とユーザーの間に一体感があった
ランエボのWRC全盛期は、1996年から1999年のトミー・マキネン選手によるドライバーズタイトル四連覇、1998年にメーカータイトルを取得した頃である。
当時のWRCを走るエボVIまでのランエボは、(1997年にWRCのトップカテゴリーがベース車の生産台数などが緩和されたWRカー規定となっていたにも関わらず)グループAで参戦していた。グループAでの参戦はラリーで有利に戦うための進化を市販車にも盛り込む必要があるなど、メーカーには不利な面が多い。
その代わり進化したランエボが毎年登場し、ランエボを買ったユーザーは三菱チームの上級サポーターになれ、このことはランエボユーザーにとって誇りだった。
■競技ユーザーへの対応のよさ
この利点は大きく2つに分けられる。ひとつ目はスバルならSTIに相当する「RALLI ART(ラリーアート)」が活動していた2010年あたりまでのことなるが、ラリーアートは競技の現場も含めパーツ供給に熱心で、この点はランエボを含めた競技での三菱ユーザーの多さの理由のひとつだった。
もうひとつは主にエボIVからエボIXに掛けての、競技ベース仕様であるRSが、きめ細かい走りの仕様を選べた点だ。具体的な例を第二世代のランエボで挙げると、エボIV以降のハイとローの2つのレシオがあるスーパークロスミッション、エボV以降の軽量な薄板ボディ、ブレンボブレーキ仕様、エボVI以降のAYC付などがある。
つまり「競技ユーザーと一口に言ってもいろいろな競技があるのだから、競技に合った仕様が最初から選べる」ということで、この点も競技ユーザーにはありがたかった。
これだけの魅力が揃えば、特にエボIX MRまでは限定車として発売すれば飛ぶように売れたのもよく分かり、むしろこれだけの財産を三菱自動車が絶版にしてしまったことのほうが不思議なくらいだ。
■まとめ
ランエボの復活は現在の三菱自動車の状況や100年に一度と言われる自動車業界の大きな変化を考えると、絶望的なのかもしれない。
しかし見方によってはクルマの電動化が追い風となって、形はともかくとしてS-AWC思想をさらに進めたランエボのスピリッツを受け継いだクルマが登場する可能性も、ないとはいえないだろう。
かつての栄光をよく知るファンとしては、三菱自動車の再建を暖かく見守りながら、その日を心待ちにしたいところだ。
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