すべてのドライバーが、いずれは直面する(加齢による)運転免許の返納。もしかしたら自動運転技術が発達して「自分で運転するということ」のパラダイムシフトが起こるかもしれませんが、どうもそれには(短く見積もっても)十数年はかかりそうです。
だとしたら、自分と自分の家族のために、「自分の順番が回ってきたらどうすればいいか」、「どういう制度を整えておけばいいか」を考えておくべきでしょう。
警察庁の統計によると、2018年から2019年にかけて、高齢者の運転免許自主返納者は急増したそうです(421,190件→601,022件で142.6%)。
もちろん人口が集中する都市部での免許返納も大事ですが、高齢化が進み、公共交通が行き届いておらず、「クルマがないと買い物にも年金をおろしにいくこともできない」という地方でも、免許返納は深刻な問題となっています。
ではどうすればいいか。どんな制度がいいか。モータージャーナリストの諸星陽一氏に、現状の問題点と考える材料を伺いました。
文/諸星陽一 写真/Adobe Stock(jörn buchheim@Adobe Stock)
■免許返納急増のキッカケとなった事故
「運転免許自主返納制度」は1998年に始まりましたが、この年の返納数はわずか2596件でしかありませんでした。2002年には「運転経歴証明書」の導入が始まりましたが、それでも返納数は8073件と伸び悩みといった具合です。
しかし、その後、加速度的に返納数は増え、2012年には11万7613件、2016年には34万5313件、2017年には42万3800件と増えていきました。
しかし、2018年には42万1190件と微減に転じます。
2018年に微減した理由は不明ですが、どちらからというと横ばい局面に転じたと見てもいい程度の微減でした。しかし、翌年にあたる2019年には60万1022件とそれまでになく大量の返納数を記録します。
この返納数に大きな影響を及ぼしたと言われているのが、2019年4月、東京東池袋で発生した旧通産省・工業技術院の飯塚幸三元院長(事故当時88歳)が運転するクルマが赤信号を無視し、横断歩道を渡っていた母子を死亡させたいわゆる“東池袋自動車暴走死傷事故”です。
この事故では亡くなった母子のほかに、暴走したクルマを運転していた飯塚元院長を含め10名のけが人が発生しています。
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