■トヨタらしいおもてなしと徹底してこだわった品質
インテリアは仕立てのよさと見栄え、そして手触りの部分にもこだわり、グローブボックスの開閉速度やウインドーの昇降スピード、スイッチの操作感やクリック感などを絶妙にチューニングしている。
トヨタらしい「おもてなし」が強く感じられた。ヤマハが納入した木目パネルは、アメリカ産のウォールナットだが、環境に配慮して植林したものを薄くスライスして張り込んでいる。しかも模様が同じような木目を厳選し、各部に使用したから、美しさは際立っていた。
また、ウールやレザーシート、モケットなどの品質にも徹底してこだわっている。経年変化や退色を考えて、品質を高め、素材を吟味した。
メーターは、指針が白く発光する自発光式の電子式アナログ表示のオプティトロンメーターだ。虚像を使って奥行きが深いように見せているから判読しやすいし、目にも優しい。Fパッケージは後席を優先したVIP仕様だ。
■時代の先端を行く電子制御エアサスペンションを主役とした設計
パワーユニットは1UZ-FE型を名乗る総アルミ製の精緻なV型8気筒DOHCを搭載している。
バランスのいいレイアウトだが、クランクシャフトやピストンなどの精度をレーシングエンジン並みに高め、スムースさを際立たせるとともに不快な振動とノイズも封じた。ちなみに排気量は3968ccで、最高出力は260ps/5400rpm、最大トルクは36.0kg- m/4600rpmだ。
トランスミッションはロックアップ機構付きの電子制御4速ATを採用する。車重は1.7トンあるが、ヨーロッパ仕様は難なく250km/hに達した。
サスペンションは4輪とも設計自由度の高いダブルウイッシュボーンで、3タイプを設定している。
主役は、C仕様に採用した時代の先端を行く電子制御エアサスペンション仕様だ。が、ピエゾ素子を用いた画期的な電子制御サスペンションを採用したB仕様の乗り味も高く評価された。A仕様はコンベンショナルなコイルスプリングのサスペンションだ。ブレーキは、4輪にベンチレーテッドディスクを配した。
■世界のトップレベルに君臨した「トヨタの作った高級車」
ひと桁レベルが違う快適性と走りを実現したセルシオ(とレクサスLS400)は、発売されるや高級車ファンを魅了している。
その年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、賞を総ナメにした。
この新しい価値観を持つ高級車の出現は、この手の高級車を造り慣れたメルセデスベンツやBMW、キャデラックなどの名門メーカーの首脳陣を驚愕させ、震えさせた。
セルシオとLS400は登場した瞬間から世界の高級車の新しいベンチマークとなり、当時あらゆる高級車メーカーは「セルシオを凌駕すること」に情熱を燃やすようになる。
「トヨタの作った高級車」が世界のトップレベルに君臨し、自動車史にその名を刻んだ瞬間だった。
21世紀の高級セダンの姿を先取りし、エンジニアの技術水準を大きく引き上げた初代セルシオが果たした役割は限りなく大きい。
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