■いま公道には「レベル0」と「レベル3」が混在中
日本にはナンバープレートが交付された走行可能な車両が約8,100万台あります。その大部分、というより現(2021年4月19日)時点ではHonda SENSING Elite搭載車以外はすべて手動運転車両、もしくは運転支援車両ですから、この先、数十年かけて手動運転車両たちの渦に自動運転車両が溶け込んでいくわけです。
「すでに部分的な自動化が進んでいるではないか」とのご指摘もあるかと思います。しかし、普及が進む自動化レベル2の段階は世界的に「運転支援車」との位置づけです。部分的であっても自動運転とは呼べません。
“自動化レベル”とややこしい言い方をするので誤解されやすいのですが、自動運転はレベル3以降と覚えてください。
では、その自動化レベル2の技術とは何か。
改めておさらいすると、アクセルとブレーキの各ペダル操作をシステムがサポートするアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)機能と、ステアリングに同じくシステムによるサポート力が加わる車線中央維持(LK)機能の組み合わせであり、自動化レベル2とはその総称です。
ステアリングにサポート力が加わる技術にはLK機能のほかに、車線からのはみ出し(逸脱)を抑制する車線逸脱抑制(LDP)機能があります。LK機能が車線の中央を保持するよう常にステアリングへのサポート力を加えるのに対して、LDP機能は車線を逸脱しそうになった際にはじめてステアリングにサポート力が加わり、可能な限り車線内に留めます。
このACC機能とLK機能が合体された自動化レベル2技術を実装した車両が市場に導入されてから8年ほどが経過しました。しかし、手動運転車両との大きなトラブルはなく、コミュニケーションは問題なく行われていると言います。
これは自動化レベル2が機能している場合であっても、運転操作の主体はドライバーであり、周辺の交通状況に合わせてシステムを解除することが容易に行えることがプラス要因として働いています。
言い換えれば、隣車線の車両が急接近してくるなど、万が一の際にはドライバーが回避行動をとることが前提で成り立っていることから、システムに対する過信が小さいとも言えるでしょう。
■「完全自動運転対応機能」…って…
しかしながらアメリカでは、とある「テスラ」のドライバーが自動化レベル2技術であるにも関わらず、走行中に運転席から離れて事故を引き起こしたとの報道が後を絶ちません。ただし報道によれば、これはドライバーの過信と誤解が招いた不幸な事故であり、車両や自動化レベル2技術そのものに疑問符が付いたわけではありません。
とはいえ、頻発する事故を見る限り、テスラ社にも問題があるように思います。各モデルが実装する現時点での運転支援技術を、あたかも自動運転技術であるかのように紹介する手法(例/「テスラの新車は、現在のオートパイロット機能や将来利用可能となる完全自動運転対応機能を提供できる先進のハードウェアを標準装備」/テスラのHP文言ママ)には、やはり賛成できません。搭載技術で「実現可能なこと、できないこと」を明確にすることが普及期の今こそ大切です。
こうした状況を踏まえ、この先、自動化レベル3以上の車両が増え出すと、手動運転車両との混合交通において考慮すべき点が発生します。これまでになかった新たな議論です。その課題はドライバーとシステム、その両方に発生します。
以下、現時点での自動化レベル3技術と、数年先に実用化される、より高度な自動化技術を例に考えます。
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