■システムに「配慮」って出来るのか…?
ドライバー側の課題は、手動運転車両に対する間合いのはかり方です。システムが行う車線変更は非常に滑らかで快適です。
一方、そのタイミングは万全とはいかず、後続車両が思わずブレーキを踏んでしまう、そんな状況にも出くわします。
ドライバー主体の運転であれば、”ゴメンナサイ“の意味を込めて後続車に手を挙げるなり、ハザードランプを点滅させて意思疎通を行えば事なきを得ることが多いと思います。
しかし、システム主体の運転時には、こうした安全確保もシステム側の責任という前提があるため、ドライバーが他車(この場合は後続車)への思いやりの心、いわゆる配慮が欠けてしまうことが考えられます。
システムが車両制御を行っている最中でも、ドライバーはいつでも運転操作に介入できますが、そもそも自動化レベル3が実行中の時、どれだけ同乗者であるドライバーが後続車への配慮を行えるのか、ここは判断が難しいところです。
システム側の課題は、手動運転車両に対するコミュニケーションのあり方です。システムが行う「走る、曲がる、止まる」という運転操作はどれも優秀です。しかし、他車から見ると自動運転車両であるかどうか瞬間的に判別できません。ドライバーが運転しているのか、システムが運転しているのか。この周知この先、大きな課題になると筆者は考えています。
とはいえ、他車からはどちらが運転操作の主体であるかどうかは大きな問題ではないように思えます。ただ、一般的にドライバーは、可能な限り周辺の車両などとコミュニケーションを取りながら走ります。その際、コミュニケーションをはかる相手(他車)が人なのか、システムなのか、ここは自身の運転操作にも少なからず影響を与えます。
■隣のクルマのドライバーがDVDを見ていたら…
具体例のひとつが、ドライバーに許される「サブタスク」です。
自動化レベル3が実行中の時、ドライバーには車載モニターでのDVD視聴が許されます。運転操作以外を行うことを「サブタスク」と呼ぶわけですが、わかりやすく他車のドライバーからは「前向いて運転していないな、脇見運転じゃないか!」と誤解されかねません。
たとえば渋滞末尾、自車が減速している最中に、ルームミラーに映る後続車のドライバーが前を向いていなかったとしたら……、皆さんならどう思うでしょうか?
筆者なら「追突される!」と理解して、周囲の安全確認を瞬時に行った上で、可能な限り隣車線へ移動するか、いよいよ間に合わないとなればブレーキを力強く踏みつけて追突時の衝撃に備えます。
でも実際は、ドライバーがテレビやDVD視聴のために画面に視線を落としていても、レベル3が正しく機能している最中であれば、システムがブレーキ操作を行い安全な車間距離を保ち停止します。
Honda SENSING Eliteを搭載したレジェンドでは、車両の前後に青色LEDランプを追加し、イグニッションをオンにした状態では常に青く発光させています(デイタイムランニングランプではないので白色ではない)。
「レベル3の要件にこうした自動運転実行中を示す外的マーカーが必須になると踏んで追加したわけですが、実際のところ、法規には織り込まれませんでした。よって、走行可能状態では常に青色LEDを点灯させています」とはHonda SENSING Eliteの開発を担当した技術者の説明です。
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