2015年当時のアロンソが、“マクラーレンの車体は最高でチャンピオンカー、しかしホンダのPUはGP2並のパワーしか出ていない”と大袈裟に騒ぎ、ホンダへの誹謗を繰り返した。それは事実なのか? 元F1メカニックの津川哲夫氏に私的解説してもらった。
文/津川哲夫、写真/津川哲夫,Red Bull Content Pool
■快進撃! 現在のホンダと暗黒時代だったマクラーレン・ホンダとの違い
2021年F1シーズンは終盤戦、僅差でのチャンピオン争いは佳境を迎えている。もちろん戦いの最大の見所は7年連続でチャンピオンシップを席巻してきたメルセデスとその王者に敢然と立ち向かうレッドブル・ホンダとの激戦だ。
この2チームの拮抗した力にいまや甲乙はつけ難い。ただレッドブルは王者メルセデスに真正面から堂々と挑み、7年王者を下せるところまできたわけだ。ここに至ったのはレッドブルRB16Bの車体性能向上は当然だが、これにも増してホンダPUのパフォーマンス向上が大きく貢献している。
今シーズンのホンダPUはF1のPUの中でもトップパフォーマンスを発揮。エンジン出力、ハイブリッド性能・制御、信頼性、軽量小型化……等を総合的に向上させたことで、これまでトップに君臨してきたメルセデスPUと肩を並べ……いや、それを上回るハイエンドPUに成長したのだ。もちろんそれは簡単になし得たことではなく、紆余曲折を経て現在の力を持つに至ったのだ。
2013年にホンダはマクラーレンでF1に復帰することを発表、ホンダF1第四期のスタートを切った。2014年を開発年とし2015年からマクラーレンに搭載して参戦。他のPUメーカーが皆新レギュレーションに対処して複数年以上のPU開発期間を経てきたが、ホンダは事実上僅か1年、したがって2015年ホンダのデビューPUがまだ未完成であったことは想像に難くない。
第三期以降、近代F1から離れていたホンダは、この新PU開発の方向として規則を額面通りに受け取るいわば一般社会型の思考を基に開発のスタートが切られた。ライバルは百戦錬磨のF1思考型の老舗達、その中で過去の栄光だけを信じて現状を把握しないままのデビューは、いわば無謀な行為であった。
しかし過去の栄光に惑わされたのはホンダだけではなく、マクラーレンも同じ。ホンダF1の過去の栄光を信じ、それが一時代前のものでホンダの現状とはかけ離れていることを理解しようとはしなかった。
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