脚光を浴び続けたカローラと脇役的存在だったスプリンターの明と暗

スプリンター トレノが誕生! 通好みの一台だったが……

悲しき兄弟格差!! カローラとスプリンターの明と暗
スプリンターシリーズとして最後のFR車となってしまったAE86型スプリンタートレノ。姉妹車の「カローラ レビン」が固定式ヘッドライトだったのに対してスポーティなリトラクタブルライトを採用。ドアミラーが採用されたのもこのモデルからとなる

 カローラの陰に隠れ、いまひとつパッとしない印象だったスプリンターだったが、そのイメージが一変することに。それが1983年にセリカの1.6リッターDOHCエンジンを搭載したグレードのひとつとして登場した5代目のスプリンター トレノ、通称”ハチロク”だ。

 ハチロク以外はカローラとともにスプリンターは5代目からセダン系統のモデルは駆動方式を従来のFR方式からFF方式に一斉に変更された。しかし、トレノはスポーティな走行特性を重視するクルマとして引き続き、FR方式を採用。

 ちなみに、それまでDOHCエンジン搭載車だけに用いてきた「レビン」「トレノ」という名称をクーペ系全車のものとし、代わりにDOHCエンジン搭載車には「GT」バッジを装着するなどシリーズ車種の整理が行われた。

 姉妹車であるカローラはレビンという名称で販売されたが、レビンが固定式ヘッドライトだったのに対し、トレノにはリトラクタブル式が採用されることでレビンよりもスポーティな印象に。

 しかし、当初はレビンのほうが圧倒的な人気を博し、トレノは陰の存在となっていた。しかし、人気コミック「頭文字D」の影響でトレノは走り重視派たちから熱狂的な支持を受けることとなり、一躍、日向の存在となった。

 とはいえ、注目を浴びたのは登場から約10年後、すでにスプリンターは7代目に移行していた……。

機を逸した!? 高級路線に舵を切ったことが仇に……

悲しき兄弟格差!! カローラとスプリンターの明と暗
設計はバブル期、発売は崩壊後と厳しいタイミングで世に出たAE100 /101型スプリンタートレノ

 1987年にはフルモデルチェンジが行われ、トレノもセダン同様にFR方式からFF方式に転換された。

 エンジンは1.6リッターDOHC16バルブの自然吸気と併せて145psの最高出力を誇るスーパーチャージャー仕様も用意、電子制御式サスペンションTEMS(TOYOTA ELECTRONIC MODULATED SUSPENSION)も採用するなど、スペックを向上。バブル景気の中にあって高級クーペ、ソアラよりも手が届きやすいモデルとして好評だった。

 同年には5ドアセダンタイプのスプリンター リフトバックの後継となるシエロが、翌年にはスプリンターをベースにしたステーションワゴンであるカリブの2代目や、スプリンターシリーズで初となるバンが登場するなど、シリーズの好調ぶりが続いた。

 1991年には高級路線に舵を切ったスプリンターはホイールベース、全長、全幅を拡大し大型化。AE101系のレビン/トレノが発売された一方で、5ドアのシエロが廃止、また翌年には4ドアハードトップのマリノが登場するものの苦戦するなど、拡大傾向にあったスプリンターの派生モデルに影が差しはじめた。

 1995年にはスーパーチャージャー仕様のグレードは廃止され、NAながら最高出力165psを発揮する4A-GE型エンジンを搭載したAE111系のトレノが販売開始。旧モデルから70㎏もの軽量化を図るなど、話題性の高いモデルだった。

 しかし、クーペ、スペシャルティカーの市場縮小に伴い、カリブなど一部の派生モデルを除き2000年にスプリンター トレノやセダンの生産が終了、2002年にはすべてのスプリンターシリーズの生産が終了。約34年の歴史に幕を下ろした。

 このスプリンターの凋落を尻目に、カローラはそれまでの主要ユーザーであった中高年に向けたデザインを転換するなど、時流、環境に合わせたクルマづくりを展開して好調ぶりをキープ。2021年にはシリーズ全体でグローバル累計販売台数が5000万台を突破するなど、いまだトヨタの基幹車種として存在感を放ち続けている。

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