■国沢光宏が選ぶ直線番長No.1 ─── ブガッティヴェイロン
「直線番長」とは「コーナー番長」の対極ということである。コーナー番長の定義は、最高速が遅いにもかかわらずサーキットで速いタイムを出すクルマのこと。コーナリングと直線の速さのバランスから考えるなら、圧倒的な曲がる性能を持っているワケです。
実際のクルマだとスーパー7のような存在か。直線番長は「最高速凄いのにサーキット走ると速くない」モデルだ。とりあえず最高速が速いクルマに有利なニュルブルクリンクサーキットのタイムをチェックしてみたい。
市販車No.1は最高速325km/hのレクサスLFAで7分16秒。こいつをベンチマークとしておく。GT-Rなどどうか? 最高速310km/hのラップタイム7分18秒。こいつぁコーナーでタイムを稼いでいると考えていいだろう。
さて、最高速431km/hと、市販車世界一のブガッティヴェイロンはどうだろう。ニュルのラップタイムは7分40秒と、GT-Rより22秒も遅い。最高速で100km/h遅いクルマと同等。参考までに書いておくと、0~100km/h加速は2.5秒で強烈!
ブレーキ性能だって文句なし。高速域じゃエアブレーキまで併用します(400km/hからのブレーキも10秒で停止する)。つまりラップタイムが遅いの、コーナーで大幅に速度を落とさなければならないからなのだった。
といったことを考えるなら、やっぱしヴェイロンが最強の直線番長だと思う。実際、最高速を出したら“ほぼ〟曲がらないそうな”というか、まっすぐ走らせることが最大のテーマになっている。曲がるようなクルマじゃ怖くて仕方あるまい! 直線にイノチを懸けたクルマだと言って間違いなし!
■石川真禧照が選ぶ直線番長No.1 ─── GM EV1
今でこそ、アメリカのテスラが2シーターのEVスポーツカーを出すなど、EVでもスポーツ走行ができる、ということがわかっている人がいる。
リーフでもそうだが、EVはスタートからのトルクの立ち上がりが一気にMAXに達する。この時の加速は、スーパースポーツカーもビックリの速さ。体験した人はわかってもらえるはずだ。
しかし、1996年、今から17年前に、EVの加速の凄さを体験したら、それは本当に“じぇじぇじぇ”だったのだ。当時、この仕事をして、世界各メーカーのいろいろな最新モデルやプロトタイプに乗っていたボクにとっても、EVは車速の遅い、シティコミューターくらいにしか思っていなかった。
だから、サターンの試乗会の時、GMの開発センターで、最新のEVです、とクルマを見せられてもあまり関心が湧かなかったのは当然だった。
一応スタイリングは2シーターのスポーツクーペだった。1990年に公開されたものの、ようやく1997年からリースで販売するというインフォメーション。そのクルマにひと足先に試乗させてくれたのだ。
赤いEV1に乗り込み、開発センター内の短いテストコースを走る。試乗前のブリーフィングで、EV1の電池は鉛であること、駆動は前輪であることが判明した。
で、いよいよスタート。アクセルを踏み込む。いきなり体にGを感じ、EV1は急加速を開始。最初、目がついて行かなかった。
体がシートに押し付けられ、スピードメーターはアッという間に55マイル。あわててブレーキング。パワーアシストのないステアリングはかなり重く、Uターンするのにひと苦労したのを覚えている。本当に、直線だけのクルマだった。
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