トヨタのプリウスは世界各地で人気だが、ヨーロッパ向けの2025年モデルに画期的な機能が搭載された。それが「ジオフェンシング」。まったく聞いたことない言葉だが、実は将来活用される重要な技術。ジオフェンシングっていったい何なのよ?
文:ベストカーWeb編集部/写真:トヨタ、ベストカーWeb編集部
現実世界に「電子の」囲いを作る!
2023年に登場した5代目(60系)プリウス。すでに世界各地で人気だが、欧州ではプラグイン・ハイブリッド専用車として販売されている。
その欧州仕様プリウスの2025年モデルに未来的な機能が搭載された。名前を「ジオフェンシング」という。
ITに興味のある人なら「ジオフェンシング」という言葉は聞いたことがあるかもしれない。
改めて説明すると、ジオフェンシングとは、GPSやその補正技術(Wifiや基地局電波)を使って、実世界の中に仮想敵な境界(フェンス)を作る技術。すでにスマホの位置情報ゲームやリマインダーアプリ、ドローンの空域制御などに活用されている。
たとえばポケモンGOのような位置情報ゲームは、ある場所を訪れることで報酬を得る。そこでは当然「ある場所にいる」という判定が必要なわけだが、それには予めその場所を緯度経度情報などで「電子的に囲って」おき、その情報をスマホが察知して判断するのだ。
【画像ギャラリー】日本でもジオフェンシングを実現してほしいプリウスのお姿がこれ!(6枚)画像ギャラリー将来日本でも絶対役立つ!
それにしてもそんな技術をいったいなんでプリウスが必要とするのか? これには欧州特有の事情がある。実は欧州各国には、低排出ゾーン(LEZ)というルールがあるのだ。
これは大気中のNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)の濃度を減らすために、おもに都市部などで行われている自動車規制のこと。規制値以上の汚染物質を排出するクルマは、規制区域への乗り入れができなかったり、高額な罰金を課せられたりする。
欧州仕様のプリウスはPHEVだから、とりたててNOxやPMを排出するわけではないのだが、国や地域によってはハイブリッドですら厳しい目を向けられる。そこでプリウスは、このLEZをジオフェンシングで検知して、その地域に入ったら自動的にEVモードで走行できるようにしたのだ。
それだけで驚いちゃいけない。プリウスがさらにすごいのはカーナビを使ったとき。ルート設定を行い、目的地や経由地にLEZがあると判断した場合、そこへ至るまでにバッテリーの充電量を調整し、LEZ内をできるだけEVモードで走れるようコントロールしてくれる。こりゃスゴイじゃないの!
さてこのジオフェンシング、日本ではどうだろう。考えてみればわが国でも、上高地や知床など多くの観光地でマイカー規制がなされているし、近年は富士山5合目に至る「富士山スカイライン」や「ふじあざみライン」「富士スバルライン」などがBEV専用道路となっている(バス・タクシーを除く)。将来、東京や大阪などがLEZに指定されることがあっても不思議ではない。
そんな時、プリウスのジオフェンシングは必ずや意味を持つだろう。クルマの知能化とはこういうことをいうのか、と腹落ちするエピソードといえよう。
【画像ギャラリー】日本でもジオフェンシングを実現してほしいプリウスのお姿がこれ!(6枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方ルート上の低排出ゾーンに備えてバッテリマネジメントして走ってくれるとは、既にエージェント機能と言えますね。
プリウス等現行のTコネクトの良い所は、何でもAI任せではなく、要望別の目的地や経由地決定などは、人間のオペレーターによって数多くの情報やニュアンスから総合的に案内してくれて
ルートはビッグデータ使って走行中も随時、新情報で更新するという、使い分けが上手い事です