トランスミッションメーカーとして世界的に名高いJATCO(ジヤトコ)が、近年、EVに熱心に取り組んでいる。今回、マーチに前後eAxleを搭載した4WD仕様に試乗することができた。JATCOが目指すEV時代の技術革新の狙いとは!?
※本稿は2024年12月のものです
文:片岡英明/写真:ホンダ、トヨタ、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年1月26日号
JATCO(ジヤトコ)が描く電動化戦略
今、自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えている。
これまで眠りほうけていたバッテリーEVが目を覚まし、内燃機関に挑戦状を突きつけたのだ。政情不安によってBEV普及の伸びは鈍ったが、クルマの電動化、知能化は必然で、待ったなしである。
電動化は、自動車産業の足場を支えているサプライヤーにとっても存続を左右する死活問題だ。エンジンに代わって電気モーターが主役になれば、トランスミッションなどの補機類も不要になる。無段変速機のCVTとトルコンATの分野で高い技術力を誇るJATCO(ジヤトコ)にとっては対岸の火事ではない。
危機感を抱いたジヤトコの首脳陣は、テスラなどが大きく販売を伸ばしていた時期に、近い将来の電動化戦略を論議している。
そして導き出したのが、BEVの実力を左右するeアクスル(eAxle)の開発だ。eアクスルは、モーターとインバーター、ギアボックス、コントローラーなどの総称で、内燃機関のパワートレーンに相当する。
【画像ギャラリー】EVでシフトチェンジも駆動配分もできる!! 電気自動車時代を面白くしてくれそうなJATCOの技術革新(20枚)画像ギャラリーBEV時代はまさに死活問題となる
ご存知のようにJATCOは日産グループのサプライヤーだ。多くのクルマにCVTを供給し、リーフやノートなどの電動車の変速機も手がけている。だから次世代の電動パワートレーンを日産に提案した。
また、2023年春に開催した「人とくるまのテクノロジー展YOKOHAMA」で、研究開発中の電動車両用の超小型eアクスルと変速機能付きのeアクスルを初公開している。
待ちに待った取材会は、2023年の秋に実現。タイタンに3速ATを組み合わせたeアクスルを積んだ試作車を走らせたのだ。
そして今回の第2弾取材会に姿を表したのがK12型マーチのBEVだ。この意欲作は、フロントとリアにeアクスルを搭載したツインモーター、駆動配分型の試作車だ。
FF、4WD、そしてRRと駆動配分を自在に変えることができ、さまざまな駆動方式での車体側の要求検証を行うことができる。もちろん簡単にアップデートに対応できる設計だ。
並行軸タイプのモーター駆動ユニットであるeアクスルのコンセプトモデルを見せてもらって驚いた。モーターと減速機を組み合わせる2軸の並行軸ユニットの高さは、15インチのパソコンとほとんど同じだ。
開発陣は、高さ方向を250mm以下に抑え込み、ユニット全体の大きさも40L以下の体積に抑えていると述べている。これはスゴイ。
搭載を想定しているのは軽自動車からコンパクトカーまでだ。小型のモーターを使いながら減速機の回転数を調整して多くのクルマに搭載できるように設計している。
JATCOのイメージカラーであるグリーンにイエローのボディカラーが映えるEVマーチは、ツーリングカーっぽい演出が効いてカッコいい。ボンネット内とトランクの低い位置に搭載されているのは1基が60kW(82ps)レベルのモーターだ。前後輪の駆動力配分を前輪駆動寄りにセットしてスタート。
モーターはすぐにパワーとトルクが立ち上がり、段付きのない滑らかな加速を披露した。前輪が暴れない品のいい加速フィールだ。
次は40対60の配分にして4WDで走ってみる。パンチが増し、蹴りも強いように感じた。トラクションのかかりがよく、挙動も安定している印象だ。リア駆動に変更すると後輪の蹴り出しを強く感じる。
【画像ギャラリー】EVでシフトチェンジも駆動配分もできる!! 電気自動車時代を面白くしてくれそうなJATCOの技術革新(20枚)画像ギャラリー
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