最近やたらと耳にする「残価設定ローン」。通常ローンに比べ、どっちがいいのか? また、「あんなに若いのに、どうしてこんな高いクルマを買えるのか?」とビックリすることも多い。そこで、残価設定ローンを徹底研究!
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカーWeb、Adobe Stock
残クレの利用率が高くなった理由
現在、残価設定ローンの利用率が高くなっているという。販売店では「新車を購入するお客様の約半数が残価設定ローンを利用する。価格の高い車種では、7割前後に達することもある」という。
残価設定ローンとは、購入時に数年後の残価(残存価値)を設定して、残価を除いた金額を分割返済するローンだ。例えば3年後の残価が新車価格の45%であれば、残りの55%を3年間で返済する。
返済期間を終えても、車両は自分の所有にならないが、月々の返済額は安く抑えられる。そして返済期間満了時には、車両を返却する、残価を支払って買い取る、改めてローンを組んで返済を続けるという選択の可能なタイプが多い。
日本の平均所得は、過去30年ほどの間にわたり伸び悩むが、クルマの価格は15年前の1.2~1.4倍に高まった。その代わり衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備、運転支援機能、燃費、走行安定性などが大幅に向上したが、値上げによって新車の購入が困難になってきた。残価設定ローンは、月々の返済額が少なく、クルマの購入を容易にするために高い人気を得た。
残価設定ローンは、メーカーや販売会社にとって都合が良い。契約から3~5年を経て返済期間が満了した時、ユーザーに対して車両の返却と残価設定ローンを使った新車の購入を改めて提案できるからだ。そうなれば新車の売れ行きが増えて、返済期間を終えた上質な車両も入手できるため、中古車販売部門も活性化する。
そこでホンダは、2025年2月上旬現在、一部の車種の残価設定ローンに低金利を適用している。通常の金利は年率4.3%だが、WR-VとZR-Vは年率0.9%、フィットとヴェゼルは年率1.9%だ。これらの低金利が適用されると、月々の返済額は一層安くなる。
例えば3年間の残価設定ローンを低金利で組み、返済期間満了時に再びローンを組んで全額を返済しようとすると、再ローンでは通常金利が適用されて返済額が増えることもある。
多くのユーザーは、今までのクルマに乗り続けて返済額が増えるなら、低金利の残価設定ローンで新車を契約したいと考えるだろう。残価設定ローンでは、金利も乗り替えを促す仕組みになっている。
月々の返済額を抑えられる残価設定ローンに低金利まで組み合わせると、中級グレードでも上級でも、返済額にはあまり差が生じない。「返済額の違いがこの程度なら、上級グレードにしようか」と思わせる。残価設定ローンを使うと上級グレードに誘いやすいため、メーカーや販売会社はますます力を入れるのだ。
このようなメーカーや販売会社の狙いがわかると、残価設定ローンのトクする攻め方も見えてくる。まずは残価の高い車種を選ぶことだ。残価設定ローンは、残価を除いた金額を分割返済するから、残価が高ければ月々の返済額を安く抑えられる。
例えばヤリスクロスハイブリッドZ(280万9000円)の価格は、ヤリスハイブリッドZ(249万6000円)よりも31万3000円高い。ところが5年間の残価設定ローンを均等払いで利用すると、月々の返済額はヤリスが4万600円でヤリスクロスは4万1300円だ。
車両価格はヤリスクロスが31万3000円高いのに、月々の返済額はほぼ同額になる。ヤリスの5年後の残価は新車価格の26%だが、ヤリスクロスは37%と高いために返済額を抑えられた。










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