【今さら聞くに聞けない】ポンピングブレーキは今でも必要か? 

 運転免許取得者であれば、おそらく全員が教習所で習った、ポンピングブレーキ

 しかしながら、実際には使っておらず「なんで必要なんだっけ? 」と、その必要性が解らなくなっている方もおられるのではないだろうか。

 自動車教習所では、2019年現在においても、ポンピングブレーキを活用するように、教育されている。そこには先進技術だけではないドライバーとしての心得としての意味があるのだ。

文章:吉川賢一、写真:池之平昌信、ベストカー編集部


ポンピングブレーキとは何のための技術? 

 ポンピングブレーキとは、本来はブレーキング時にタイヤがロックするのを防ぐ

 または、タイヤのロックを解いて、制動距離を縮め、回避行動をとりやすくするためのテクニックを意味するもので、ABSが普及していなかった時代においては、重要な運転技術だった。

 例えば、雪道や雨などの滑りやすい路面で、ブレーキを踏み込んだ時、タイヤはロックを起こしやすくなる。そのような事態にならないよう、ブレーキペダルを一度で踏み込まず、ポンプを踏む様にギュッギュッとブレーキを踏むことで、タイヤがロックしてしまうのを、ある程度避けることができるわけだ。

雪道を走行する際には注意が必要不可欠。

 現在では、後続車に制動を知らせるという意味でも用いられており、現在、自動車教習所では、この目的でポンピングブレーキをするよう、教育されている。

 しかしながら、実際にポンピングブレーキをしているドライバーは、あまり多くない。

 「今やABSは標準装備だし、人間がやるより機械に頼ったほうが安全確実」、「何回もブレーキランプ点灯されるとウザイ」、「ブレーキ緩めると制動距離が伸びて危ない」、「減速Gが変化するのは乗る方がたまったもんじゃない」などという意見を耳にすることがあるが、ポンピングブレーキは本当に必要ないのだろうか。

ABSがあるならポンピングブレーキは必要ないのか? 

ABS本体またはブレーキに異常が発生している時に点灯するランプ。
点灯した際は速やかに修理工場棟にてどこに異常が出たのかを点検すべき。
異常がない場合は点灯しない。

 ABS(アンチロックブレーキシステム)は、制動距離を短くし、ハンドルによる緊急回避行動がとれるよう、タイヤロックを検知してブレーキ液圧をコントロールするシステムだ。

 要は、ポンピングブレーキと同じ動作を、確実に行ってくれるシステムであるわけだが、ABSが装備されていればポンピングブレーキは必要ないというのは、あまりに安直すぎる論理だと筆者は考える。

 もっとも、緊急時だけならばABSがあれば十分だ。しかしながら、ポンピングブレーキのようなブレーキを丁寧にコントロールする技術は、全ドライバーが身に着けたほうが良いと筆者は考える。

 ポンピングブレーキができるほどの手前から、余裕をもって制動を始めることで、前後G変化も少なくなり、同乗者や積載荷物にやさしい運転をすることができる。身に付けておいて損はない技術だ。

 また、ブレーキを緩めると制動距離が伸びて危ないという方もいるが、ポンピングブレーキができるほど、早めに制動を始めるべきであり、減速Gが変化するのは乗る方がたまったもんじゃないというのは、ポンピングブレーキのやり方が間違っているだけである。

ポンピングブレーキはやはり必要

 また、自車の制動を後続車に伝える予備制動の意味でも、やはりポンピングブレーキは重要である。

 渋滞末尾などではハザードランプを点滅させることがスタンダードとなっているが、渋滞まではしていない場合に、ポンピングブレーキを使用することで、後続車に「あれ? 」と思わせることができる。

ブレーキ、ハザードを使うことにより、
注意を促すことができる。

 運転中は周囲のクルマと会話したり、身振り手振りでコミュニケーションをとることができない。後ろに伝えることは、事故に巻き込まれるのを防ぐために、とても重要なことだ。

 前述した「何回もブレーキランプ点灯されるとウザイ」というのは、「自車を意識させる」という意味で、まさにそれが効いている証である。

ポンピングレーキの正しいやり方

 ではここで、ABSが介入しない範囲での、ポンピングブレーキの手順を復習しよう。

 ポンピングブレーキをするのに理想的なのは、クルマもタイヤも、車両の進行方向とまっすぐになっている状態である。ブレーキペダルを踏んで、クルマの減速感を、身体を使って感じる。

 もしタイヤが滑り始めそうな印象を感じたら、ペダルをほんの少しだけ緩める。その動作を繰り返し行って、クルマを停止させる。

 停止距離をもっと短くしたい時は、エンジンブレーキも活用する。ブレーキを踏む前に、低いギアへシフトダウンをしてエンジンブレーキを効かせ、減速を始めてからフットブレーキをかけていく。

 こうすることで、エンジンブレーキとフットブレーキを併用した、最も安定した制動をすることができる。

まとめ

 制動力はタイヤ摩擦円の大きさで決まる。そのため、実は、舵の効きを優先するABS作動よりも、上手なブレーキ操作ができるドライバーの方が、直進ならば制動距離を短くできる可能性はある。

 しかし、緊急時に落ち着いてそれができるドライバーは少ないであろう。筆者もとっさにそれをやれる自信はない。

 ABSとポンピングブレーキのように、それを代用するテクノロジーが開発されると、「いらないんじゃないか? 」と、つい思ってしまう運転技術は他にもある。

 しかし、より安全にクルマを運転するには、こうした先進技術に頼りすぎることなく、自身の運転技術を磨いていくことも必要不可欠だ。あの教習所時代の初心を忘れることなく、安全運転を心がけよう。

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