2023年末に登場したレクサス LM。セレブ御用達の豪華な内装を見たテリーさんは、「これは現代の馬車なんだな」と納得の様子。しかし、「セレブを乗せる現代の馬車なら、コレはいただけない!」とご立腹。テリーさん、いったい何が気になった!?
※本稿は2025年1月のものです
文:テリー伊藤/写真:西尾タクト、レクサス
初出:『ベストカー』2025年2月10日号
富裕層御用達! レクサスのミニバン
2000万円もするクルマなのに街でよく見かける。先日も渋谷区のある通りで、7台連続で見ておののいたところである。
レクサス LM500h。2列シート4人乗りの「エグゼクティブ」が2000万円、3列シート6人乗りの「バージョンL」が1500万円のミニバンで、ベースはアルファードだ。
ベンツSクラスやBMW7シリーズなどの欧州高級車よりも街で見かける台数が圧倒的に多い。日本の富裕層にとって、レクサスのミニバンは待ちに待ったクルマなのだろう。
富裕層の世界では、見栄もあって価格は高いほうが売れるし喜ばれる。レクサスLMも、あと3年もすれば3000万円のモデルが登場すると予言しておこう。
中古車を探してばかりの私には無縁の世界だが、こういうクルマは異次元で、極端であるほど面白い。やはり今回乗った2000万円、2列シートの「エグゼクティブ」がこのクルマの本来の姿なのだろう。
フロントシートとリアシートはパーティションで完全に区切られており、リアシートも左右が独立しているタイプで余裕たっぷり。
旅客機のファーストクラスのような空間となっていて、目の前には48インチの大型ワイドディスプレイが鎮座している。この大型ディスプレイに関しては言いたいこともあるのだが、その話はあとにしよう。
エンジンは2.4Lターボのハイブリッドで、システム出力371ps。ミニバンとは思えないパワフルさだが、このクルマの場合、運転してどうかは関係ない。自分が運転するためにこのクルマを購入する人もいないだろう。
つまり、レクサス LMは現代の「馬車」なのだ。従者が馬を操り、車室で寛ぐ主人を目的地まで送り届ける。
そのためにはフロントシートとリアシートは明確に区切られていなければならないし、もっと言えば、運転者は黒子に徹しているのが望ましい。レクサス LMの2列シート車は「お城での舞踏会に向かう馬車」という世界観を作り上げているのだ。そんなクルマはなかなかない。
【画像ギャラリー】富裕層ワールドへようこそ!! 非日常へと誘う現代の馬車・レクサス LMにテリーさんが試乗!!(24枚)画像ギャラリー世界中でジャンジャン売ってほしい!
リアシートに座っていると、「このままどこへでも連れて行ってくれ!」という気分になるが、前述のとおり、目の前に大型ディスプレイがあるのはどうなのか、という思いもある。
ここにディスプレイを置くというのが昭和の発想なのだ。応接間に大きな高級テレビを置いているのと同じで、しかも横長のディスプレイで左右別々の番組を映すこともできると自慢している。そこだけ急に庶民的になっているのである。
今、富裕層が住むおしゃれな家では、部屋にテレビは置かずシアタールームを用意しているのが普通だろう。それなのに、このクルマは座った目の前に巨大な画面がある。そこに何を映すかではなく、目の前に画面があること自体がビジネスホテルの発想。お姫様の乗る馬車が、この一点で台無しになってしまうのだ。
私なら、ここをアートの場所にして、好きな絵を飾るだろう。モニターに絵を写すのではなく、本物の絵を飾るのだ。2カ月に一度くらい絵を入れ替えれば、いつも新鮮な気分で楽しめる。
また、レクサス LMにはスライドドアを開けたところに傘立てもあるのだが、その傘があまりに普通なことも残念だった。
どうせやるならヴィトンやグッチなどとコラボした専用の傘を用意するべきで、それで価格が上がっても、このクルマの場合は気にする必要はない。むしろ、お客さんも歓迎するはずである。
とまぁ、いろいろ言いたいこともあるのだが、現代に甦った「馬車」としての価値は大いに認めたい。クルマは今でこそ普通のものだが、もともとは凄く高価で特別なもので、庶民には手の届かないものだった。レクサス LMはその原点に戻ったとも言えるのだ。
トヨタはこういうクルマを世界中でジャンジャン売って、日本の元気さを発信してほしい。
【画像ギャラリー】富裕層ワールドへようこそ!! 非日常へと誘う現代の馬車・レクサス LMにテリーさんが試乗!!(24枚)画像ギャラリー
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