【ボディ剛性が高いと何がよくなる?】各社が新しいプラットフォームを採用する訳

軽量化のための素材や加工法、生産方法の開発など日々進化している

マツダ3から次世代車両構造技術スカイアクティブ・ヴィークル・アーキテクチャを採用
マツダ3から次世代車両構造技術スカイアクティブ・ヴィークル・アーキテクチャを採用
マツダ3の1310MPa級高張力鋼板採用部品
マツダ3の1310MPa級高張力鋼板採用部品

 さらに効率を高めるには素材も重要だ。設計による最適化だけでは軽量化にも限界があるし、コスト削減も難しい。

 高張力鋼板は、その名の通り引っ張り強度に優れた合金鋼の鉄板で、通常の鋼板から置き換えることで薄肉化できるため、軽量化が達成できる。Bピラーやスカットルなど強度が必要な部分には特に硬いスーパーハイテン(超高張力鋼)を使うことで、剛性を高めながら重量増を抑えている車種が増えてきた。

 しかし、このスーパーハイテンの採用はいいことばかりではなくて、普通の鋼板より価格が高いのはもちろん、「変形しにくい」ということはボディパネルへの加工性も低下する。

 そのため高級車ではホットスタンプという温間でプレス成形してそのまま冷却する方法が使われる割合が増えているし、スーパーハイテンを冷間のままプレス成形できる技術の開発も進んでいる。

  マツダは、新日鐵住金、JFEスチールの両社と、それぞれ共同で1310MPa級高張力鋼板を用いた車体構造用冷間プレス部品の開発に世界で初めて成功した。マツダでは、この1310MPa級高張力鋼板を取り入れた新世代車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE(スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー)」をマツダ3から順次、採用していくという。

 高張力鋼板を自動車の部材に用いると必要な耐力をより薄肉で確保できるため、車体を軽量化でき、操縦安定性能の向上や燃費性能の改善に貢献できる。また、衝突安全性能を確保するために高い強度も求められており、より高強度な鋼板の適用が期待される。

 これまで冷間プレスで成形した部品を車体構造に採用する場合、成形性や加工後の寸法精度の確保の難しさから、高張力鋼板の強度は1180MPa級の採用に留まっていたが、それぞれ共同で技術開発に取り組み、適正な製造条件を定めることで、1310MPa級高張力鋼板の採用を可能にした。

 従来の1310~1470MPa級高張力鋼板は、バンパー部品などに適用されていたが、ロール成形など加工方法が限定されていた。今回の1310MPaは、冷間プレス成形による車体骨格部品の強度としては世界最高レベルである。

 マツダ3に1310MPa級高張力鋼板を採用した部品は、フロントピラーインナー、ルーフレールインナー、ヒンジピラーレインフォース、ルーフレールレインフォース、No.2クロスメンバー、サイドシルインナーレインフォースで、従来車の同部品と比べると合計で約3kgの軽量化を達成しているという。

 またボディの樹脂化が進められているのも特徴で、エンジンルームは今やプラスチック製の部品ばかりが並んでいるが、ボディを構成する部品にも樹脂製品が増えてきた。

 アウターパネルは構造材ではないから、フロントフェンダーやドアパネル、リアゲートなどを樹脂化するのはボディ剛性には影響はなく、軽量化や衝突安全性への貢献もある。

コペンはドア以外の外板はすべて樹脂製で、フレームにボルト付けされているので、外板の着せ替えが可能。そのほかのダイハツ車にもフロントフェンダーパネルやバックドアパネルなどに樹脂製パネルが採用されている
コペンはドア以外の外板はすべて樹脂製で、フレームにボルト付けされているので、外板の着せ替えが可能。そのほかのダイハツ車にもフロントフェンダーパネルやバックドアパネルなどに樹脂製パネルが採用されている

 以前はボディ剛性を重視してしっかりと鋼板で作って溶接されていたラジエターコアサポート(フロントグリルの奥、ラジエターの前にある、ボディ前端上部の構造材では最前端部材)は、今やボルト止めの樹脂製が当たり前だ。

 設計技術の進化により、その他の部分でボディ剛性を確保して、ボディ前端は衝突安全性や軽量化を重視した作りになっているからだ。

 今後は熱可塑性のCFRTP( 軽量・高強度の炭素繊維強化プラスチック)など炭素繊維を練り込んだ樹脂を使うことにより、さらに強く軽い樹脂部品がボディの構造材にも採用されていくと予想されている。

 このところ乗用車は電動化など燃費への追求が注目される傾向にあるが、クルマはやはり基本となるシャーシが作り込まれていることが大事。

 自動車メーカー、部品メーカー、素材メーカーの研究開発は、いいクルマ作りのためにも日夜進められているのだ。

【画像ギャラリー】各社の新しいプラットフォーム詳細写真

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