ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブ」。今回は2014年の企画から、パワーユニット別に国産車と世界のクルマたちを比較した「世界一の技術を載せたクルマたち」をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2014年3月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文:国沢光宏、松田秀士、石川真禧照、斎藤 聡、鈴木直也、片岡英明/表の見方:6人の評論家がそれぞれ「世界トップ」と評価したものを表の左側に配置。右側は、「世界トップ」が日本車の場合は輸入車のトップ、輸入車の場合は日本車のトップを記載しています
■クリーンディーゼル編
BMW320dのディーゼルエンジンの出来は秀逸だ。今ヨーロッパで人気のディーゼルエンジンの魅力をすべて備えているといっていい。X5シリーズの523d、530dも同様で、この一連のディーゼルはスムーズな吹き上がり方や低回転域からフワッと膨らむように立ち上がるトルクによって滑らかで余裕のある走りを提供してくれる。
この15年ほど日本国内は「ディーゼルエンジン=悪」といった風潮があり、またハイブリッド車や電気自動車を推し進めていた関係でほとんどディーゼル鎖国状態となっていた。
その間欧州ではディーゼルの開発が進められており、滑らかに、かつ力強く加速する燃費のいいディーゼルエンジンが多く開発されていた。
日本ではポスト新長期規制というディーゼルにとっては世界一厳しい排ガス規制が敷かれ、これが欧州のディーゼルエンジン搭載車の輸入を妨げる高いハードルにもなっていた。
BMWのディーゼルは当然ポスト新長期規制をクリアする。尿素などを使わず、シンプルな形で排ガス規制をクリアしている点もいい。
しかし、それを超えるのがマツダのSKYACTIV-Dだ。このエンジンの開発にあたっては、その発想がとても面白い。SKYACTIV-Dの特徴でもあるのだが、圧縮比がディーゼルエンジンとしては突出して低いのだ。
自然発火によって燃焼するディーゼルは高圧縮比が常識だと考えられていたが、マツダは、圧縮比を低くするメリットをまず考えた。圧縮比が低ければエンジン構成パーツの剛性が低く済み軽くできるうえ、エンジンがスムーズに回る。圧縮比が低いので、点火タイミングのコントロールが効き、上死点爆発が可能になる。実現すれば燃焼時間が長くでき、燃焼ガスはクリーンになる。
その結果が14対1という圧縮比であり、NOx後処理を必要とせずに欧州のユーロ6、日本のポスト新長期規制、北米のTier3Bin5をクリア。クリーンなエンジンでありながら、ディーゼルとは思えないスムーズで軽やかな吹き上がりを実現したエンジンに仕上がった。
(TEXT/斎藤 聡)
■ハイブリッド編
今まではプリウスに搭載されているTHSIIが世界一の技術を持つハイブリッドだった。プリウスほど総合熱効率の高いクルマなど存在せず。ボディサイズ&重量を考えれば、同じシステムを使うアクアも寄せつけない。多数のライバルが登場してきたけれど返り討ち。ホンダがフィットハイブリッド用に開発した1モーターも、アクアに勝てぬ。そんなTHSIIながら、車重が増えるに従って厳しくなっていく。安価なニッケル水素電池を使っているためだ。
逆にニッケル水素電池を使っていてもライバルたちに勝る燃費を実現していたワケです。トヨタの盤石だったハイブリッド技術に待ったをかけたのがアコードハイブリッドに搭載されたホンダの2モーター式ハイブリッドである。同じ車格のカムリHVのJC08モード燃費は23.4km/L。新鋭アコードハイブリッドときたら30.0km/Lという驚くべき数値をカタログに載せてきたのだった。両車を同じ条件で走らせてみてもアコード優勢。カムリハイブリッドはまったく届かず。
カムリハイブリッドが走行用電池をニッケル水素からリチウムにグレードアップし、さらにハイブリッドシステムに改良を加えてもアコードハイブリッドにゃ届かないと考える。システムそのものが勝てていないのだ。さすがのトヨタもアコードハイブリッドに勝てるシステムを開発するのに下を見て2年くらいかかるだろう。もちろん世界規模で対抗馬を探してもアコードハイブリッドに勝てるモデルやシステムは存在しない。当面世界一をキープできそう。
ただ最近になってハイブリッドの新しい使い方が出てきた。F1のKERSから始まった「速く走るためのデバイス」でございます。現在ニュルで市販車最速はハイブリッドシステムを搭載するポルシェ918かマクラーレンP1だといわれている。どちらもどんなタイヤを履いているのか不明だし、勝ち負けを明らかにしていないからナンバーワンがドッチかなのかわからないけれど、ハイブリッド時代に投入したことは間違いない。次期型NSXどうなる?
(TEXT/国沢光宏)
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