■V8エンジン編
単純にパワー/トルクで比べても、アウディRS6のV8ツインターボユニットが世界一だろう。4L、V8直噴ツインターボで、560ps/71.3kgmのパワーとトルクを発揮。パワーもさることながら、直噴によるクリーンな排ガス性能と、気筒休止システムによる燃費のよさを備えている点が凄い。
0~100km/h加速はわずか3.9秒。71.5kgmの最大トルクは1750回転(~5500回転)で発生するから感覚的にはアクセルを踏み込んだ瞬間から強烈な力でシートに体が押し付けられた状態となる。
そのいっぽうでエンジン回転が960回転から3500回転の間で3速以上の時、エンジンが休止モードとなり、わりと頻繁に気筒休止する。例えば100km/h巡航していてエンジンの負荷が少なくなると2、3、5、8番シリンダーの吸排気バルブを閉じ燃料をカットして4気筒モードとなる。その結果、CO2排出量は223g/km、JC08モード燃費は10.4km/hを達成している。
日本のナンバーワンV8は、レクサスIS FのV8だろう。直噴+ポート噴射のメカニズムを持つD-4Sに可変バルブタイミング機能のVVT-iEを装備してCO2排出量200g/km、JC08モード燃費11.5km/hを実現。かなり良好なデータといえるが、まだまだ飛び抜けた性能、とは言えない。
(TEXT/斎藤 聡)
【番外コラム】日本車の独断場!? 電気自動車&燃料電池車
何事によらず「戦いは数が決め手」だから、日本勢が現在クルマ電動化の時代をリードしていることは間違いない。
なんたって、日産がEVのリーフを10万台以上、トヨタがハイブリッドカーを600万台以上販売した実績をそれぞれ持っている。
これはつまり、電池、モーター、パワー半導体など、電動化の核心となる重要部品の開発/生産では日本は世界一ということだし、電動エアコンコンプレッサーや電子制御ブレーキなど電動車両に必須の補機類についても、層の厚いサプライヤーが存在する。いま、まともなEVを造ろうとしたら、日本企業抜きに仕事をするのは不可能だ。
ただ、じゃEV/FCV(燃料電池車)については将来的にも日本の独壇場なのか? といわれると、どうもそんなに楽観視はしていられないと思う。
いい例がテスラだ。自動車にまったく縁のないベンチャー企業がゼロから立ち上げたこのEV製造会社は、ホンの数年で株式時価総額200億ドル企業に成長。GMが400億ドル台、フォードが600億ドル台ってことを考えると、とてつもない急成長だ。
つまり、コア技術を握っているから安心というわけではなく、自動車ビジネスというのはやっぱり「魅力的なクルマ」をどうやって作るかがキモ。それを、テスラの成功が如実に示していると思うのだ。
そういう意味じゃ、クルマの電動化は異業種からの参入障壁が低くなるってことで、既存の自動車メーカーにとっては競争がさらに激しくなるってこと。電池やモーターなどのコア技術を握っていても、コスト面以外ではそんなに強力なカードとはなり得ない可能性が高い。
これはFCVについても少なからず同じことがいえる。
いまはまだFCスタックのコストダウンや信頼性が発展途上だから、トヨタやホンダなど巨額の開発費を負担できる大企業が開発をリードしている。けれど、FCスタックもやがてはEVと同様に普及期がやってる。100kW級スタックが原価20万円くらいでポンポン作れる時代がきたら、必ずテスラと同じようなベンチャー企業が登場すると思いませんか?
テスラは本来ノートパソコン用だった18650規格のリチウムイオン電池をパナソニックから買ってEVに進出した。まごまごしてると、日本メーカーは汎用FCスタックを使った第二のテスラに美味しいところを攫われちゃいますよ。
(TEXT/鈴木直也)
(写真、内容はすべて『ベストカー』本誌掲載時のものですが、必要に応じて注釈等を加えている場合があります)





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