日本車は世界と渡り合えていたのか? 世界一の技術を載せたクルマたち│パワーユニット編【ベストカーアーカイブス2014】

■小排気量ターボ編

ホンダの新開発直3、1L直噴ターボは革命児の素養あり
ホンダの新開発直3、1L直噴ターボは革命児の素養あり

 最近のダウンサイジング過給エンジンは、トルク曲線のピークが真っ平らの直線。アイドリング直後から急角度でトルクが上昇し、ピークトルクを維持したまま最高出力付近までそれを保つ。

 パワー追求のように派手さはなく一見地味に映るがこういう特性のエンジンを作ろうとするといくつもの難題に直面するが、その技術的課題はひと昔前の高性能ターボエンジンよりよっぽどシビアだといっていい。

 エンジン本体の低速トルク特性やタービンのレスポンス向上はもちろんとして、低回転域で高いブースト圧をかけるから、耐ノック特性、ピストンや排気バルブの冷却、インタークーラーの効率など、エンジンの局部的なストレスがレースエンジンなみにシビア。

VWゴルフ1.4TSIハイライン(299万円)…ダウンサイジングターボの権化と化しているのがVWで、この分野で世界を牽引。ゴルフはその代表でバランスに優れているのが人気の要因
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 さらに、めったにパワーゾーンを使わないスポーツターボと違って、実用ダウンサイジングターボは高ブーストのシビア領域を常用する。それでいて燃費問題があるから空燃比をリッチにして燃料冷却に頼ることもできない。ファミリーカー用のエンジンなのに、使用条件はスポーツカー用のソレよりよっぽど過酷なのだ。

 こういう厳しいハードルを乗り越えて、年間100万台以上生産されるVWの1.4L TSIはやっぱりスゴいとしかいいようがない。最新モデルではさらに気筒休止機構を備えて、さらに燃費効率を向上させるなど、まさに燃費志向ダウンサイジングターボのトップランナーの座は不動のものといえる。

 国産でこのエンジンにチャレンジするダウンサイジングターボが出てこないのはクヤシイかぎりだが、試作段階のエンジンでもよければ昨年のホンダミーティングで乗った3気筒1Lターボがすばらしかった。

 このエンジン、ターボで過給してパワーは130psながらトルクが200Nm(20.4kgm)もある。リッターあたり100Nm(10.2kgm)というのは市販車ではひとつの大きなハードルで、これをクリアして市販化できれば世界レベルで見ても最強のダウンサイジングターボとなり得る。

 さらに、未確認情報ながらこのエンジンはレギュラー対応になるとの噂もあり、もしそれが事実ならフォードのエコブーストもビックリの1Lクラスの新チャンピオン誕生となるかも!?

(TEXT/鈴木直也)

世界一のターボエンジン(ダウンサイジング型)を搭載するクルマ ※ホンダの1.5L、1Lは開発中のもの
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■3気筒エンジン編

フィエスタ(229万円)…1L、3気筒ターボをひっさげて日本再上陸となったフィエスタ。3気筒ながら質感も高いのが魅力
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ハスラー(104万8950~157万6050円)…スズキが誇る史上最強の3気筒エンジンを搭載するハスラー。燃費、ドライバビリティとも秀逸
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 スズキの3気筒エンジンの歴史は古く、1967年のフロンテからだ。この頃は2ストロークだった。4ストロークになったのは1978年のことだった。この頃からスズキの3気筒はバランサーシャフトを採用していないのが特徴。これにより、軽量、低コストを実現している。

 で、ハスラーに搭載されている3気筒だが(ワゴンRなどにも搭載されるスズキの主力)、このエンジンは3気筒では文句なく世界一といえる。エンジン本体も振動や音の低減は行われているが、エンジンに付属する各種のメカニズムが凄い。

 まず、エネチャージ。これは燃料カット中の減速時に、タイヤの回転を利用して、ガソリン(エンジン)を使わずに、オルタネーターで発電し、リチウムイオンバッテリーとアイドリングストップ専用鉛バッテリーに充電するシステム。発電によるエンジン負荷を軽減させている。

 アイドリングストップもハスラーではブレーキを踏んで13km/h以下になると自動でエンジンを停止、アクセルを離してからエンジンが再始動するまで、ガソリンを使わない。このアイドリングストップの始動時でも、振動は少ない。アイドリングストップ状態からエンジンを再始動させるタイミングを変更できる機能も採用している。

 こうしたいろいろな機能と連動している3気筒エンジンは、世界でもスズキ製だけ。文句なく世界一の3気筒エンジンだ。

(TEXT/石川真禧照)

 直列3気筒エンジンの魅力に着目し、地道に進化させてきたのは日本で、軽自動車の3気筒エンジンには傑作が多い。なかでも運転しやすく、環境性能も高いのがスズキのR06A型3気筒エンジンだ。NAエンジンでも低回転からトルクが素直に立ち上がり、軽快な走りを見せつける。排気量が660ccと小さいのに街中でフレキシブルに披露するのもチャームポイント。

 しかもアイドリングストップの作動時間は長いし、一度エンジンがかかってしまっても再びアイドリングストップできる確率も高い。エネチャージやエコクールなど、低燃費技術を満載し、実用燃費にも優れている。アルトエコは丁寧な運転を心がけ、信号を上手にクリアすれば誰でも30km/L前後も可能だ。

 が、世界中で売っているわけではないので次点に。また、ホンダが開発中の1L、3気筒VTECターボにも惹かれた。プロトタイプに乗ると驚嘆するほど感激したが、これまた量産車に搭載されるのは数年後になるようだ。じゃ量産の3気筒で最高のものは、となるとフォードのフィエスタに搭載されている1L3気筒ターボのエコブーストエンジンを推したい。

 2年連続でインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーに輝き、実際に走らせても軽快だ。高回転までストレスなく気持ちよく回り、小気味よい。滑らかさも3気筒レベルを大きく超えている。また、ターボが低回転から威力を発揮するから街中でも扱いやすい。

 燃費は日本の軽自動車の足元にも及ばないが、3気筒ターボのなかでは一級の実力の持ち主。洗練度が高く、気持ちいいパワーフィールを楽しめる。

(TEXT/片岡英明)

世界一の直3エンジンを搭載するクルマ
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