本誌『ベストカー』にて、クルマにまつわる変わったもの、見慣れないものを取材する連載企画『これは珍なり(略して『これ珍』)』。数ある名(迷!?)企画の中から、今回はトヨタの誇る生産方式を農業に転用する取り組みをクローズアップ!(本稿は「ベストカー」2014年5月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:編集部
トヨタのノウハウを農業分野に応用するIT管理ツール「豊作計画」
自動車メーカーとしてのみならず、日本を代表する大企業といっていいトヨタ。そのトヨタの企業としての強みを支えているのが、工場での生産活動の運用方式のひとつである「トヨタ生産方式」だ。
極力在庫を持たずに必要なものを必要な量だけ、必要な時にジャストインタイムで生産するのが特徴で、使用した部品の補充を知らせる帳票のことを「かんばん」と呼ぶため、かんばん方式ともいわれており、世界中にその名を知られていることはご存じの読者も多いことだろう。
で、そのトヨタがこれまでの自動車事業で培ってきた生産管理手法や工程改善ノウハウを農業分野に応用することで、農業の生産性の向上を狙ったIT管理ツール「豊作計画」をこのほど開発した。
これが農林水産省の「先端モデル農業確立実証実験」に採択され、今年(2014年)4月から愛知県や石川県の米の生産農業法人9社に提供されているのだ。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をめぐる米国との協議で今後の農業への取り組みが注目されるなか、今回はトヨタのこの風変わりな稲作の側面支援策を取り上げてみたい。
「トヨタ×農業」取り組みの歴史
そもそもトヨタでは2011年から愛知県の米生産農業法人と共同で米の生産プロセス改善について取り組んできていた。
この豊作計画では、愛知県で複数の小規模農家や地主が大規模米生産農業法人に農作業を委託するモデル事業を行っていることに着目。
各農家や地主ごとに広い範囲で分断されている水田を集約的に管理して、農作業の効率化を主眼に開発されたものだという。2012年から2年間試行された結果、作業工数やミスが減ったことに加え、資材費の削減と経営管理面でのレベルの向上が認められたのだそうだ。
豊作計画は、具体的にはクラウドサービスとなっていて、米生産農業法人はスマホやタブレット端末などから簡単に利用できる。同システムでは、地図上に登録された多くの水田を複数の農作業者が効率的に作業できるように日ごとの作業計画が自動的に作成されるシステムになっている。
さらにこの作業計画は現場に向かう個々の作業員のスマホなどに配信され、GPSで各々作業すべきエリアを確認してから現場に向かうのだそう。
もちろん、作業の開始や終了時にスマホからボタンを押すことで共有データベースに情報が集約される。広域で作業している農作業員の進捗状況の集中管理、作業日報や請負先への報告なども自動で作れるというスグレモノだ。
また、農作業以外に乾燥や精米といった過程にも対応し、稲の品種や稲作エリア、肥料の条件、作業工数などのデータを蓄積することで、より低コストでおいしい米作りをサポートするというのだから、米を作る側にとってはいいことずくめ。
そこで、トヨタ広報部に今回の豊作計画開発のねらいについて聞いてみた。
「(豊作計画は)ディーラー業務をITクラウドによって最適管理している、ディーラー向け顧客連携ツール『e-CRB』を農業向けに転用したシステムです。弊社生産方式の工程管理の思想をクラウドの技術で可視化して管理しています。G-BOOKなどのテレマティクスで培ったクラウド構築ノウハウを使ったものです」
しかし、なんでまた農業だったのだろうか?
「もともと弊社の経営陣が農業への関心が高かったこともありまして、愛知県内の農業法人の集まりである稲作研究会などに関わっていたことが発端です。2009年から米作りと弊社の生産管理法を結びつける研究を続け、検討を重ねてきました。
農業法人の事業規模がディーラーよりはるかに小さく、個別のシステム導入が困難だったこともありますが、米作りの手法が各地域や農業法人で実にさまざまな違いがあったことも今回のクラウド導入への背景にあったんです」
稲作は通常、年に1回だからふつうに考えれば「カイゼン」は年1回だけど、この豊作計画なら複数法人や水田の情報を共有することでカイゼンのための速度が何倍にもなるってことか。
「そのとおりです。現在、豊作計画は米や麦、大豆に対応していますが、事業化については3年間の実証実験を終了し、将来的に対応する作物を増やしていくことで国内農業の活性化に貢献したいと思っております」
トヨタの“かんばん”がほかの産業にも波及していけば、きっと日本の未来は明るくなるに違いない。大いに期待したい!









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