【燃費向上より違うメリットが!??】なんちゃってハイブリッドに存在意義はあるのか

■燃費アップなし!? 足りない動力性能をマイルドハイブリッドで底上げする

 フォレスターとXVが搭載するスバルのe-BOXERは、水平対向エンジンに組み合わせるシンプルなハイブリッドシステムだ。モーターの最高出力は13.6psと小さく、4WDの2Lエンジン搭載車に採用している。ハイブリッドの優れた燃費を追求するなら、2WDの1.6Lエンジンに搭載しただろうが、スバルは走りの満足感を優先させて4WDの2Lエンジン搭載車にした。

e-BOXERを搭載したフォレスター。燃費が厳しい水平対向エンジンのため、マイルドハイブリッド化で航続距離が伸びて欲しいというのが消費者心理だろうが、スバルは走りの満足度を優先させた

 この意図は高速道路を低回転で巡航中、アクセルペダルを緩やかに踏み増した時にわかる。スバルのリニアトロニックと呼ばれるCVT(無段変速AT)は、アクセルのダイレクトな操作感覚を重視するから、わずかなアクセル操作ではCVTの自動変速をあまり行わない。

 そうなると、登坂路などでは低回転域におけるトルクの余裕が必要だが、2Lエンジンでは車両重量の割に物足りない場面もある。そこを補うのがe-BOXERのモーターだ。

 モーターは反応が素早く、アクセルペダルを緩く踏み増した瞬間に、駆動力が立ち上がる。エンジンが高回転域の時は、モーターの存在がエンジンパワーのなかに消えてしまうが、出力の下がった低回転域ではモーターの恩恵がわかりやすい。モーターの駆動力が加速を滑らかに立ち上がらせ、エンジン回転の上昇へ繋げてくれる。

e-BOXERの走行制御イメージ図。エンジン駆動をベースに、エンジンとモーターを制御する

 だが、e-BOXERは燃費数値があまりよくない。フォレスターのWLTCモード燃費は、2.5Lのノーマルエンジンが13.2km/Lで、2Lのe-BOXERは14km/Lだ。0.8km/Lの上乗せにとどまる。

 しかもWLTCモード燃費の郊外モードでは、2.5Lが14.6km/Lでe-BOXERは14.2km/L。高速道路モードでは2.5Lが16.4km/Lでe-BOXERは16km/Lだから、速度域が高いとe-BOXERの燃費数値は2.5Lよりも悪くなってしまう。郊外と高速道路はハイブリッドに不利な場面ではあるが、2Lのe-BOXERが2.5Lのノーマルエンジンに負けるのは情けない。

 とはいえ、この点を考慮してもe-BOXERは価格が安い。フォレスターに2.5Lを搭載するプレミアムは308万円、e-BOXERを搭載するアドバンスは、ドライバーの疲労などを検知するドライバーモニタリングシステムなども標準装着して315万7000円だ。e-BOXERにはモーターのほかに制御機能や駆動用リチウムイオン電池が搭載されるから、相応に高コストだが、燃費向上率が小さいこともあって価格はノーマルエンジン並みに安い。

 ちなみにトヨタなどのハイブリッドは、ノーマルエンジンに比べて価格が35~50万円高く、燃料代は燃費数値上で55~70%に抑えられる。ハイブリッドは価格が高い代わりに燃料代は安く、使用目的に応じて選び分けられる。

 ところがスバルのe-BOXERは、燃費数値が良好とはいえず、その代わりに価格もあまり高めていない。高速道路よりも市街地を走る機会が多く、なおかつe-BOXERの運転感覚や装備が気に入ったユーザーに適する。

 そしてXVは2Lのノーマルエンジンを廃止して、e-BOXERのみにした。スバルの開発者は「今後は国内でも燃費規制が厳しくなるため、e-BOXERの役割が重要になる。そこを見越してXVの2Lはe-BOXERに絞った」という。

 つまりスズキのマイルドハイブリッド、スバルのe-BOXERは、いずれも今後はベースエンジンとして搭載される。大量生産によってコストを抑え、すべての車種の燃費性能を底上げする。

本文で登場した車種以外では、2019年8月1日にマイナーチェンジしたセレナが、e-POWERを除くガソリンモデルをすべてSハイブリッド(マイルドハイブリッド)としている

 見方を変えると、今後もしばらくはエンジン搭載車が存続するわけだ。いきなり電気自動車の時代にはならない。低価格車はベースエンジンのマイルドハイブリッド、中級から上級の車種はフルハイブリッドという具合に、エンジンとモーターの使われ方が用途や価格に応じて細分化される。

【画像ギャラリー】燃費アップで表に出るより、裏方で支える。マイルドハイブリッドを搭載する現行モデルをピックアップ

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