「走行距離税」は無理! 実現不可能だし導入すると大変なことになる理由

丁寧な議論と制度設計、実証実験を通じた社会的受容性の確保が不可欠

 税制の「受益者負担の原則」を考えれば、「走った距離に応じて税金を納める」というのは公平ではあります。現在の税制度において利用(走行)段階での課税のない電気自動車は、価格が高額であり、ある程度所得が高い人でなければ購入が難しく、不公平感は否めません。

 ただ走行距離課税が導入されることで利用段階での課税が高くなれば、最終的には物価高として消費者に跳ね返り、地方経済に痛手となることは避けられません。特に物流業界に対しては、これ以上の負担を強いることがないよう配慮しなければ、さらなる物価高騰を招くリスクもあります。

 ただ一方で、自動車産業が100年に1度の変革期を迎えているといわれる現状においては、利用段階に対する課税も含め、自動車関連諸税として、抜本的な見直しが必要なタイミングであることも事実です。政府は令和7年度の与党税制大綱において「データの利活用による新たなモビリティサービスの発展等、自動車の枠を超えたモビリティ産業の発展に伴う経済的・社会的な受益者の広がりや保有から利用への移行等も踏まえるとの考え方を踏まえつつ、公平・中立・簡素な課税のあり方について、中長期的な視点から、車体課税・燃料課税を含め総合的に検討し、見直しを行う」としており、車体課税に関しては、2025年4月に「自動車関係税制のあり方に関する検討会」を発足させ、制度設計に向けた業界団体からのヒアリングも重ねています。

 走行距離課税導入にあたっては、丁寧な議論と制度設計、そして実証実験を通じて地域社会や国民から理解を得ることが不可欠です。老朽化するインフラ整備などにかかる財源の確保も必要なのでしょうが、日本が世界で勝てる数少ない産業である自動車産業の発展を阻害するような制度とならぬよう、今後も注視が必要です。

ただ、自動車関連諸税の見直し自体は必要。日本の自動車産業の発展を阻害するような制度とならぬよう、今後も注視が必要(PHOTO:Adobe Stock_あんみつ姫)
ただ、自動車関連諸税の見直し自体は必要。日本の自動車産業の発展を阻害するような制度とならぬよう、今後も注視が必要(PHOTO:Adobe Stock_あんみつ姫)
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