【何がいいの? 悪影響は?】クルマのホイールを換えるとどうなる? 利点と短所

鍛造アルミホイールは鋳造と比べて何がいいのか?

BBS製の鍛造アルミホイールR1-A。国内最高峰のレース、SUPER GTの実戦で投入されているホイールと、同一の思想で、同一の造形でつくられた究極のレース仕様
BBS製の鍛造アルミホイールR1-A。国内最高峰のレース、SUPER GTの実戦で投入されているホイールと、同一の思想で、同一の造形でつくられた究極のレース仕様
アルミホイールの製造法は鋳造と鍛造がある。鍛造は日本刀も同様だが金属を熱し、圧力をかけて鍛えながら成型していく。一般的な金属の製造法である鋳型に熱したアルミを溶かし冷却した後、型から外す鋳造と比べると鍛造は大量生産に向かない。BBSアルミホイールの場合、最大9000トンのプレス機を持ち、ビレットと呼ばれるアルミ素材を約450°前後に加熱し、1平方cmあたり4トン以上の圧力を金型に押しつけ成型を行う。空気の孔ができず、高い強度が得られるというメリットがある
アルミホイールの製造法は鋳造と鍛造がある。鍛造は日本刀も同様だが金属を熱し、圧力をかけて鍛えながら成型していく。一般的な金属の製造法である鋳型に熱したアルミを溶かし冷却した後、型から外す鋳造と比べると鍛造は大量生産に向かない。BBSアルミホイールの場合、最大9000トンのプレス機を持ち、ビレットと呼ばれるアルミ素材を約450°前後に加熱し、1平方cmあたり4トン以上の圧力を金型に押しつけ成型を行う。空気の孔ができず、高い強度が得られるというメリットがある

 クルマ好きならば、アルミホイールの製造方法が、鋳造よりも鍛造のほうがいいと聞いたことがあるだろう。

 鋳造は溶融させたアルミニウム合金を鋳型に流し込み、そのまま冷却して固める手法を採る。

 鍛造は同様に溶かしたアルミ合金を鋳型に流し込んだうえで、高圧をかけて成形・製造するということになる(上記写真参照)。

 鍛造製品が鋳造より性能面で優れるのは材料強度が高いことだ。

 「一般的に塑性変形域(加えた力を取り除いても変形が残る領域)に至る強度(=耐力)、破壊に至る強度(=引張り強さ)に優れる」(エンケイ資料から抜粋)とされ、圧力をかけて組成を変える(日本刀の鍛冶仕事を思い出してほしい)ことで鋳造よりも軽量かつ強靱な特性が得られ、荷重に対する強さ(変形しにくさともいえる)が増すということだ。

 製法に関して、乗り心地に関してアルミホイールを製造するうえで見逃せない要素として、スムーズにホイールが回転する指標となる高い「真円度」を実現するという課題もある。

 真円度が低ければホイールから振動などを生み出す原因となるため、製造時に高い精度が要求される。

 アフターマーケット品などを装着する際にバランス取りが細かく必要になるのは、個々の製品の真円度を高めるための処置といえる。

性能と価格の兼ね合いを見る

 スチールホイール(+ホイールキャプ)、アルミホイールの価格差について、純正品の価格については基本的に公表されていないケースが多いので、アルミホイールメーカーが製造している、アクアなどのコンパクトカーに設定された15インチホイールとクラウンなどに採用されている18インチホイールを比較してみることにする。

 3品はすべて1ピース構造だが、TE37のみ鍛造、ほかは鋳造品となる。それぞれ異なるデザイン/仕様が存在するため(TE37:6スポーク、PF07:7スポーク、LEONIS NAVIA:マルチスポーク)、厳密に比較することが難しいことをご了解いただきたい。

 ぞれぞれの製品名、重量(kg)、1本あたりの税抜き価格を掲載してみた。

●15インチホイール/5.5J、PF07のみ6J、タイヤサイズ:185/60R15)の場合
・RAYS VOLK RACING TE37 SONIC/4.45kg/4万3000円
・ENKEI PF07/6.6kg/2万8000円
・WEDS LEONIS NAVIA 05/5.46kg/2万8500円

RAYS VOLK RACING TE37 SONIC。スポークのワイド化に加え設置部をリム側に上げることで、強度・剛性を強化し、ハイパワー化に対応する操縦安定性を確保
RAYS VOLK RACING TE37 SONIC。スポークのワイド化に加え設置部をリム側に上げることで、強度・剛性を強化し、ハイパワー化に対応する操縦安定性を確保
ENKEI PF07。高速走行時の直進安定性やコーナリングの安定性を重視した特性
ENKEI PF07。高速走行時の直進安定性やコーナリングの安定性を重視した特性
WEDS LEONIS NAVIA 05。リム成型技術AMF製法により、鍛造ホイールにも匹敵する優れた材料強度を実現。さらにリムの薄肉化により大幅な軽量化にも成功した
WEDS LEONIS NAVIA 05。リム成型技術AMF製法により、鍛造ホイールにも匹敵する優れた材料強度を実現。さらにリムの薄肉化により大幅な軽量化にも成功した

●18インチホイール(8J、TE37 SLのみ8.5J、タイヤサイズ:225/45R18)の場合
・RAYS VOLK RACING TE37 SL/7.85kg/7万円
・ENKEI PF07/9.8kg~/4万円
・WEDS LEONIS NAVIA 05/9.04kg/4万3500円

 今回選択した3社の3製品を見ると、コンセプトを「スポーツ」、「スタンダード」、「ファッション」と捉えることもできそうだ。

 RAYSとENKEIはモータースポーツへの製品供給で得られた設計製造技術を前面に押し出す一方、WEDSは同社の製品を「スタイリッシュホイール」と呼ぶようにカスタマイズを中心に商品を展開している。

 日本製であることを強く主張するRAYSの価格が他の2社から突出しているのは、鍛造品として、設計開発などのコストとともに、“メイドインジャパン”のこだわりが生み出していることが想像される。

 対してENKEIは広く海外にも生産施設を展開しており、手頃な価格で幅広く高性能な製品をマーケットに供給することを主眼としており、それぞれの主張の善し悪しを問えるものではないだろう。

 RAYSの製品がほかの2つのメーカーに対して、鍛造品とすることで質量にして約2割の軽量化を実現、価格が1.5倍ほどに設定していることには、単体での“1kgの軽量化”を購入する側がどう評価、納得できるかということだ。

 一方で、カスタマイズカー向け製品を開発しているWEDSが、他の製品に関しても複雑な形状のスポークデザインを提案していることを見れば、こだわりの方向性が違うことは明らかだ。

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