安いけど…燃費は? 乗り心地は?? 小さいサイズのタイヤに代えるとクルマはどうなる

 大抵、安いグレードには小さいサイズのタイヤが装着されていて、上級グレードにはそれよりも1インチ大きいタイヤを履いているケースが多い。

 そうした1インチサイズが大きいサイズだと、見た目はいいが、乗り心地の面では1インチ小さいサイズの方がいい場合が多い。

 乗り心地を重視したい人には、1インチ小さいサイズを履きたいと思う人も多いハズだ。

 サイズの小さいタイヤは安価なことも多く、「ひとつ小さいサイズまでしか愛車に適合しないブランドがあるんだけど…もしこのブランドのタイヤが装着できるなら…」と、危ない計算をしたことがある人もいるのではないか(本企画担当はあります。断念しましたが…)。

 そこで、小さいサイズに代える=インチダウンすると、どんなことが起きるのか? 何か弊害はないのか? 自動車テクノロジーライターの高根英幸氏が解説する。

文/高根英幸
写真/ベストカーWeb編集部 横浜ゴム

【画像ギャラリー】インチダウンできる同じ車種でタイヤサイズの違うクルマ


タイヤ空気圧を変えただけでも乗り心地は変化する

新型フィットのベーシックとホームには185/65R15タイヤが装着されている
1インチ大きいサイズ、185/55R16はネスとリュクスに標準装備。クロスターは185/60R16サイズ。この2車種に乗って乗り心地が固いと感じた場合、ベーシックやホームの15インチタイヤに代えるのもありではないだろうか
タイヤの表記(出典:横浜ゴム)

 最近はフニャフニャに柔らかい=乗り心地が良いと感じる人は少なくなってきたようだが、乗り心地の「良い/悪い」は人によって好みが異なり、千差万別と言っていいくらい評価が分かれるものだ。

 クルマを購入して、その乗り心地が自分の想像や好みと違っているのなら、タイヤホイールを見直してみるのもいい。これも立派なチューニングだ。

 手始めはタイヤの空気圧を少し変えてみる、これだけで乗り心地に変化が生じることに気付くハズだ。

 20MPa(0.2kg刻みで空気圧を変えるだけで、乗り味が変化することが分かれば、季節による気温の上下動もあってタイヤの空気圧は変化するから、常に自分好みの空気圧をキープするようにするといい。

 ただし、あまり低い空気圧にしてしまうのは、路面のギャップなどを通過した際の衝撃でホイールのリムを傷めてしまうこともある。上下2割程度が調整幅だと覚えておこう。

 空気圧を下げると走行中のタイヤの変形量が増えて、転がり抵抗の増大に繋がり燃費を悪化させる原因にもなる。逆に高すぎてもあまり燃費低減効果はないし、アッパーマウントやハブベアリングなど足回りを傷める原因にもなるから注意しよう。

 とは言うものの、空気圧だけでは望み通りの乗り味を求めることは難しい。これは最後の微調整とも言える領域だからだ。

 乗り味を変えるには、タイヤ銘柄の変更、タイヤサイズの変更、タイヤ&ホイールの変更、サスペンションやボディのチューニング、シートの変更という選択肢がある。

 ここではタイヤ関連に絞り込んで話を進めていくが、基本的な考えとして、タイヤ外径を変えるのはタブーだということ。なぜなら、タイヤ外径はクルマの様々な機能に影響を及ぼすからだ。

 インチアップ&ダウンをするにあたっての基礎知識として、ロードインデックスとエクストラロード(XL)/レインフォースド(RFD)規格について少し解説しておこう。

 ロードインデックスは、タイヤ一輪が受け持てる荷重指数で、例えばタイヤ側面に215/45R17 87Wなどとタイヤサイズが書かれているが、この87がロードインデックス。インチアップする時は、なるだけこの数字が下がらないようにする必要がある。

ロードインデックス(出典:横浜ゴム)

 ところがあるタイヤサイズでは、インチアップするとロードインデックスが下がってしまうサイズがある。

 そのためタイヤ内部の構造を強くしてスタンダードのタイヤより空気を多く充填できるように作り、ロードインデックスを高く設定したタイヤが作られているのだ。

 それがLX/RFD規格のタイヤというわけだ。例えば205/50R16 91Vをインチアップする時、スタンダードなタイヤだと215/45R17 87WになるがXL/RFD規格のタイヤは215/45R17 91W XLとなり、ロードインデックスが合う。

 ただし 一般的なタイヤの空気圧の基準(上限)が240kPs(キロパスカル≒2.4kg/cm2)で設定されているのに対しXL/RFD規格のタイヤは、280kPsとなっているので、空気圧の充填量が変わってくるので注意が必要だ。

 これらはタイヤカタログの後ろのほうに書かれているので、参考にするといいだろう。

タイヤ外径を変化させることで起こる影響とは

 タイヤ外径を大きくする、ホイールのサイズはそのままでタイヤの厚みを増やすことは、乗り心地の向上につながると考えている人が多いのではないだろうか。

 しかし、程度問題ではあるものの、外径を大きくすることはクルマに様々な問題を生じさせる原因になる。

 ホイールをそのままにタイヤ外径を大きくすると、タイヤの重量が増えて、路面からの突き上げでタイヤホイールが揺さぶられるドタドタした乗り心地になってしまう。

 またフル転舵した時に、インナーフェンダーとタイヤが干渉してしまう問題が起こることもある。これはローダウンしてインチアップなどをした際にも起こり得る問題だ。

インチダウンのメリット、デメリットは?

ノートe-POWERにはガソリン車よりも1インチ大きい 185/65R15タイヤ を装着している
ノートの標準ガソリン車に標準装備される185/70R14

 タイヤの厚みを増やして乗り心地を改善したいなら、ホイールをインチダウンして、その分タイヤの厚みを増やして外径を維持することで実現できる。

 純正ホイールでもグレードによってホイール外径が異なる車種は多い。ベースグレードは小さめのスチールホイールで、上級グレードはインチアップされたアルミホイールが装着されている、というパターンだ。

 これはアルミホイール装着によるコストアップを抑えて、スチールホイールの重量増を抑えるためにベースグレードではアルミより小径のスチールホイールを組み合せるというもの。

 日産のノートを例に挙げると、ガソリンエンジン仕様のノートの標準タイヤは185/70R14だ。それに対してオプションで185/65R15が用意されている。

 そして、ノートe-POWERは185/65R15が標準タイヤだ。これはe-POWERのほうが車重が160~200kgも重く、走行中のタイヤに掛かる負担が大きくたわむ量も増えるので、ケーシング剛性の高い低扁平タイヤを選択しているのだ。

 またスチールホイールの場合、外径が大きいと重くなってしまうので、ガソリンエンジンのノートはコストも考えて14インチを選択しているという事情もあるだろう。

 乗り心地や走りの軽快感を優先して、ノートe-POWERのタイヤを後から、ノートのガソリン車に標準設定されている185/70R14タイヤに交換するのもありと言えばありだ。ただし、ノートe-POWERに185/70R14タイヤのオプション設定はない。

 とはいえ、ロードインデックス(タイヤ1本で支えられる、規定の条件下での最大負荷能力=最大耐荷重) は同じ(純正タイヤの場合)なので、強度的には問題ない。

 ちょっと個性的なアルミホイールを履いてインチダウンさせるカスタムの手法もあるし、タイヤのケーシング剛性(サイド剛性)が高いスポーティなタイヤを組み合せることで、より走りと燃費を両立させることもできるだろう。

 純正ホイールから、アフターマーケットのアルミホイールでインチアップした場合に、タイヤが低扁平となることで剛性が上がってしまい、路面からの衝撃がサスペンションに多く伝わるようになってドタバタした動きになってしまうケースもある。

 そんな場合はインチダウンすることで、しなやかな走りと快適な乗り心地を手に入れられる場合も多い。ホイールの小径化による軽量化と、タイヤの剛性低減による衝撃吸収性の向上が、乗り味を大きく変えるのだ。

 厚みを増やさずインチダウンだけを行なっても、バネ下重量の軽減になって低重心になりクルマの動きはキビキビと軽快になるが、これはタイヤ外径が小さくなってしまう。

 トータルでの減速比が大きくなる分、燃費が悪くなるしスピードメーターの誤差も生じてくる。それにフェンダーとタイヤの隙間が大きくなって、見た目にもスカスカしてカッコ悪いので、お勧めすることはできない。

 インチダウン最大のデメリットは、大径ブレーキが付かないこと。1サイズ小さなホイールを履かせるためにまず考えなければいけないのはブレーキとの干渉だ。

 では、メリットは何かといえば、例えば60偏平のタイヤを70偏平、82偏平にする必要はないと思うが、40、45、偏平あたりを50、55、60偏平にするのは、かなり有効なことがある。

 例えばスタッドレスタイヤ。純正サイズの関係で低偏平なスタッドレスを履かなければならないケースが多く見られるが、もしブレーキが干渉しないなら、40偏平を→45、50偏平に、あるいは45偏平を50、55偏平にし、それに合わせてホイール径も19→18、18→17インチにすると断然コントロール性がよくなる。グリップ限界が若干低くなる分扱いやすくなるともいえる。

 タイヤがよじれ、ねじれる等、変形する様子がわかりやすいと、グリップの変化を予測しやすくなるのだ。滑り出しも穏やかになる。なによりタイヤもホイールも安くなるのもユーザーにとっては大きなメリットだ。

 スポーティなクルマは、あまり性能ダウンは薦められないが、コンフォート性の高いセダンやミニバンなどは、純正サイズかタイヤ設定によってはインチダウンもありではないかと思う。

インチアップのメリット、デメリット

スポーティなノートNISMOには、195/55R16タイヤが標準装備。NISMO Sは205/45R17(NISMOにオプション設定)が標準装備

 ここで、インチアップのメリット、デメリットについても話をしておこうと思う。タイヤホイールを交換しようとするなら、純正タイヤよりインチアップしたいと思うユーザーは多い。少々飽きがきたクルマも新しいホイールを履くことで新鮮味が取り戻せるものだ。

 ドライバーの好みもあるが、やはりクルマによってインチアップしても限度はある。ここでは適正なインチアップについて考えてみよう。

 前述の通り日産ノートe-POWERの標準タイヤサイズは185/65R15(ノートのガソリン車は185/70R14)だが、外径が少々大きくなるが、物理的には215/35R19まで履くことは可能だ。

 しかしタイヤハイトは極端に薄くなるため、3年程度で乗り換えてしまうような飽きっぽいユーザーならともかく、長く乗るならクルマのダメージを考えると、ホイール径は17インチまでにしておいたほうがいい。

 そうなると225/40R17を選ぶユーザーもいるだろうが、205/45R17を選んだほうがバネ下が軽く、タイヤ代も安くなる。扁平率が高いと見た目がカッコ悪くなると思う人もいるが、タイヤ幅が細いので実際のタイヤハイトはほとんど変わらない。

 タイヤが重く大きいとドタドタした動きになって、乗り心地も悪化する場合もあるのだ。接地面積がやや減るので、グリップ力を高めたいなら225だが、そこは銘柄でもカバーできる部分だ。

 ホイールの種類は限られるが、195/55R16や205/50R16のほうがボディやサスペンションには優しいので、乗り心地や軽快感も重視したいなら、ホイールの選択肢は限られる(16インチは種類が少ない)が1インチだけのアップも考えてみることをお勧めする。

 また、タイヤの外径は純正サイズとほぼ同等にするのがセオリー。これは外径が変わってしまうと変速機やホイールの回転から検出している車速信号が実際の車速とズレてしまい、スピードメーターや燃費計の数値に狂いが生じてしまうからだ。

 さらにADAS(先進運転支援システム)を装備しているイマドキのクルマは、車速信号が非常に大事なパラメータなので、衝突被害軽減ブレーキの確実な作動などを考えれば、無闇に外径を変更すべきではない。

 もっと言えば、同じタイヤサイズでも銘柄によって実際には外径やタイヤ幅が微妙に異なるので、そのあたりも注意してタイヤ選びをすることだ。

前後でサイズを変えるのもタブーだが例外も

 インチアップやインチダウンを前後同時に行なう場合、外径を維持するのはスピードメーターの精度を維持するためと、インナーフェンダーなどとの干渉を防ぐため、というのは前述した通りだ。では前後でタイヤサイズを変えたい場合はどうなるか。これは基本的にはやってはいけない行為だ。

 タイヤの外径を変更すると、同じ車速で走ってもタイヤの回転速度が変わってしまう。

 これはスピードメーターの表示のために計測しているだけではなく、ABSやESC(横滑り防止装置)などがクルマの走行状態を把握するために各車輪の回転速度をモニタリングし続けているなど、様々な制御の基本情報として利用されている。

 誤作動や警告灯点灯などのトラブルを避けるためにも、タイヤ外径は純正比で2%程度、つまり前後の差も同様に2%以内にするべきなのだ。ちなみに同じタイヤサイズでも銘柄によって外径や幅が異なるが、まずこの範囲内に収まるので問題が起きることはない。

 ただし、前後でタイヤサイズを変える方法がない訳ではない。タイヤ幅を変えてパワフルなルックスを手に入れたいカスタムが目的なら、外径は維持したまま、前後でタイヤ幅を変えることは不可能ではない。

 例えば205/55R16が標準タイヤであれば、リアを225/50R16にしてホイールのリム幅も1インチワイドにすれば、リアビューでパワフルな印象を強調することができる。

 外径はほぼ同じままだが、タイヤの接地面形状が変わるので、前後のグリップバランスに変化が生じることもある。また太くしたリアタイヤは、当然重くなるのでサスペンションの負担は増えるため、乗り味にも変化が起こる。

前後異なるタイヤが装着したタイヤの場合は?

フロントが165/55R15、リア195/45R16と前後の外径も3%以上異なるタイヤを装着しているS660

 逆に前後異径サイズが指定のクルマは、そのバランスを変えないことが大事だ。例えば軽自動車ながら本格ミッドシップスポーツのホンダS660はフロントが165/55R15、リア195/45R16と外径も3%以上異なる設定がされている。

 これは重量バランスなどの問題からこのサイズ比にされているため、ハンドリング性能や各電子制御系の正確性のためにも、インチアップするとしてもこの前後バランスを変えないようにすることが大事だ。

 ただし、タイヤ銘柄を変更することでも乗り心地や快適性は改善できる。純正タイヤは市販品と同じ銘柄であっても、内部構造などを変更した専用品であるほどこだわったクルマも多いが、リプレイス用のタイヤは汎用品でもコストをかけている分、乗り心地や燃費性能、グリップ力など、目的に応じて特化した性能を与えられている商品も多い。

 自分好みの乗り味に仕立てることを楽しみとするなら、タイヤサイズや銘柄、リム幅、空気圧にこだわってみてほしい。

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