OPECプラスで減産が合意されたが原油先物取引価格は史上初のマイナス価格
なぜ、ガソリン価格が13週連続で値下がりという状況になったのだろうか? 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて感染防止のために緊急事態宣言が出され、外出などの自粛が求められた結果、日本国内でのガソリン消費が急減していることもあるが、理由はそれだけではない。むしろ、別にあるのだ。
というのも原油価格の下落が止まらないからだ。2020年4月12日、OPECプラスは2020年5月から2カ月間、最大日量970万バレルの協調減産で最終合意した。
OPECプラスはサウジアラビアやロシアら20カ国で構成される産油国の集まりで、原油生産量は世界の約4割超を占める。
また、この合意とは別に、米国、カナダ、ブラジルなどOPECプラス以外の産油国が日量500万バレルの減産に寄与する見通しと報じられている。
OPECとロシアなどの産油国が歴史的合意で原油の減産を決めた直後には、やや上昇する局面も見られたのだが、まだまだ供給過多との見方が多く、再び値下がりが始まったのである。
そして、直近である5月限(※註)の取り引き最終日となる4月21日には、なんと原油の先物取り引き価格がマイナスになるという前代未聞の珍事があった。
※註:5月限の限はギリと呼ばれ、限月のこと。限月とは先物取引やオプション取引において先物の期限が満了する月のこと。5月に期限が満了する取引であれば5月が限月となり、5月限と呼ばれる
つまり1バレルの「買い」を入れると、売り手から約4000円を支払ってもらえることになる。取引中の安値は1バレル(159L)がマイナス40.32ドルにもなり、終値でもマイナス37.63ドルとなった。
これは史上初のことで、エネルギーであり様々な石油製品の原料である原油が1円の価値もないという状態になるとは、誰も想像できなかったことだ。
NYの先物取引所もマイナス価格を想定していなかったが、容認することを表明した途端、価格は急落し、あれよあれよという間に0ドルを飛び越えてマイナス価格へと突入したのだ。
ちなみに通常、原油先物価格として報道されるのは、2ヵ月後が引き渡しの6月限では20ドル前後となっていたが、5月限の取り引きが過ぎた今、価格は大幅に下降している。そのため、これも取り引き最終日には価格が乱高下する可能性が十分に高い。
取り引き最終日は、実際に原油を取り引きする企業にとっては最終価格であり、価格が上下した差額を利益として得ようとするトレーダーにとっても先物の権利を手放せる最後のチャンスなのだ。
4月21日は当初は10ドル前後で取り引きされていたが、マイナス価格が可能となるとトレーダーたちはまず原油を売って、値下がりしてから買い戻す行為を行なう事で利ざやを稼ごうとする。
これに過剰在庫に困って原油を売りたい供給元が応戦することで、原油価格は暴落したのである。
また4月22日の東京原油市場では取り引き開始直後から売り注文が相次ぎ、取り引きの中心となる2020年9月限の原油の先物価格は、一時1万7280円となり、21日の終値から6150円、26%あまり下落した。
東京原油市場で原油の先物価格が1万8000円を下回ったのは2004年2月以来、およそ16年2カ月ぶりのことだ。
ちなみにニューヨーク原油先物は、アジア時間22日朝の取引で上昇。21日に付けた21年ぶり安値から回復している。ただ、世界的な供給過剰は続くとみられ、記録的な低水準にとどまっている。
4月23日午前9時前から始まった東京原油市場でも、取り引きの中心となる9月限の原油の先物価格が1キロリットル当たり2万270円で、22日の終値より4030円、およそ24%上昇して取り引きが始まっている。
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