■5ナンバーの功罪
●功績
(1)これは自動車メーカーというよりお国によるものだが、日本の道路や駐車場といったインフラは多数派だった5ナンバー車に合せたものが多いのは事実なので、5ナンバー車の方が運転しやすい、駐車しやすいという傾向はある。
しかしそれも狭路や5ナンバー車でギリギリ止められる駐車場といった本当に狭いところは別として、5ナンバーだった3代目レガシィに対し5ナンバー+α程度の全幅となる3ナンバー幅とした4代目レガシィのように「全幅が大きくなった分タイヤの切れ角が大きくなったので、実質的な取り回しは向上している」というクルマもある。
またカタログに載っている全幅や5ナンバーか3ナンバーかも大事だが、「ミラーtoミラー」と呼ばれる実質的な全幅となる左右のドアミラー間の幅は「3ナンバーのミドルクラスより5ナンバーのコンパクトカーの方が大きい」ということも珍しくない。
そのため総合的な取り回しや運転しやすさはクルマによるところが大きいのも事実だ。
(2)限られた枠でもいいクルマを造っていた
これは「目標や枠があると、その中で最大限以上のことを成し遂げる」という日本人のよき国民性によるところも大きい。
わかりやすい例としては昭和の時代のマークIIに代表される上級小型車(今になるとこの言葉自体が3ナンバー敬遠の象徴に見える)やクラウン、セドリック&グロリアといった高級車は、5ナンバー枠一杯という制約の中で大きく見えるスタイルや豪華なインテリアなどを持ち日本流の高級車という独自の世界観を持っていた。
●罪
ジャンルにもよるが、国際的な競争力やクルマに求められる要素が増えてくると、やはり5ナンバー枠に無理があったのも事実。
これはいくつも思い当たることがある。
典型的なのが5ナンバー時代の前述した上級小型車や高級車のエンジンだ。6気筒を積むこの種のクルマのエンジンは車重が軽くないこともあり、2.5リッターから3リッターのNAエンジンとのマッチングが本来ベストだった。
そういった仕様もあったが、それこそ自動車税が5ナンバー車の倍額になることもあり、主役にはなれなかった。しかし2リッターNAではパワー不足なため、そこで登場したのが「2リッターで3リッター並の動力性能を持つ」と主張する6気筒の2リッター+過給器付エンジンである。
しかしこの種のエンジンはATも含めた当時の技術では低速トルクが薄く、運転しにくく燃費が悪いなど、2.5リッターから3リッターの6気筒NAに対し「自動車税は安いけど、燃費やフィーリングが悪いのにコストは高い」という実に歪んだものだった。
また全長の長いクルマや2代目モデルまでのトヨタソアラのような趣味性の強いクルマだと、5ナンバーに納めると幅が狭くひょろ長く貧相に見え、5ナンバー規格が国際的な競争力を削いでいたのも事実だった。
さらに現在のカローラやカムリのような実用車でも時代の流れによって側面衝突に代表される衝突安全性などの要求値が高まってくると、やはり5ナンバー規格では対応が難しくなっていた。
こういったことを考えれば3ナンバー車を普通のものにする、普通のものになったというのはごくまっとうな話でもある。また5ナンバー規格の功罪というのはハイパワー車の280馬力規制の功罪と似たところも感じないだろうか。
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