近年ショッピングモールや、観光地に向かう高速道路のSA/PAでも、愛犬を連れたのクルマをよく見かけるようになった。
高速道路のSA/PAでは、ドッグランやペット用のごみ箱や水飲み場が設置されるなど、愛犬を連れてクルマで移動することがより快適になっている。
しかし、愛犬家にとって犬は家族。クルマに載せる際に「シートに縛り付けるなんてかわいそうでできない!」なんて人もいる。だが、その誤った判断で、運転者が逮捕されたり、愛犬が危険にさらされる恐れがあることを、きちんと知ってもらいたい。
今回は、ドッグライフプロデューサーとしても活動する自動車評論家の青山尚暉氏に、愛犬家が知らずにやってしまいがちな違反や、愛犬の正しい載せ方について詳しく解説してもらう。
文/青山尚暉
写真/Adobe Stock(anon@Adobe Stock)、HONDA、VOLVO
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■誤った愛犬の載せ方で逮捕される事案も発生
2020年のゴールデンウィーク中、愛犬とドライブをするのが大好きな愛犬家がドキッとするようにニュースがあった。
それは、5月2日、「札幌市で運転席側の窓から顔を出す犬を発見した警察官が、停車指示を出したものの逃亡しようとしたために逮捕」というものだ。2012年3月にも「山口県周南市内で、小型犬のトイプードルを膝の上に乗せて運転していたことから、運転手の男性を現行犯逮捕」というニュースがあった。
今では、犬は家族の一員、どこへ行くにも一緒……という愛犬家が、わが家を含めて増えている。高速道路のSA/PAにドッグランがあったり、ペット用のごみ箱があったり、さらには愛犬同伴型リゾートホテルが日本の有名リゾート地に林立し、ペットと店内で食事ができる高級レストランだって珍しくはない時代であり、日本でもペットとお出かけする環境が、ヨーロッパほどではないにしても急激に整いつつあるのである。
わが家はこれまで(新型コロナウィルスによる緊急事態宣言以前)、毎日のように近所の駐車場付きドッグランを訪れ、毎月のようにラブラドールレトリーバーとジャックラッセルの愛犬とともにあちこちへドライブしてきたのだが、ペットを正しくクルマに乗せている愛犬家は、実はごく少数だったりする。
本来は、後席やラゲッジルームに設置した、ベルトで固定した強固なクレートの中に乗せるか、チャイルドシート用のISOFIXアンカーとシートベルトを利用した犬用シートベルトを装着させるなどして、安全に移動させるのが、正しく安心できるペットの乗せ方だ。
が、先のニュースにあるように、愛犬を膝の上に乗せて運転していたり、後席にそのまま載せていたり、万一の際、エアバッグの展開でダメージを受ける可能性のある助手席に乗せていたりする危険な光景をよく見かける。
理由(言い訳)はさまざまだろう。小型犬で寂しがり屋だから、飼い主と離れて乗せると吠えるから……など。とはいえ、愛犬を膝の上に乗せて運転すれば、前方視界を遮ることはもちろん、運転に集中できず、急ブレーキを踏んだ時にフロアに飛び落ちてペダル操作に支障をきたすなど、極めて危険な行為になる。それは事故を誘発しかねない。
では、ニュースにあった逮捕は、どんな根拠で行われたのだろうか。それは、道路交通法第55条2項である。
そこには、「車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ ~中略~ 車両の安定を害することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない」と明記されている。
愛犬を膝の上に乗せ(窓から顔を出させる)ているのは、まさしく「運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げる行為」に該当する。もし警察官に現認された場合、逮捕もありうるということを知っていただきたい。
いや、逮捕されるだけで済まないケースもある。以前、知り合いが愛犬を膝の上に乗せ、窓の外に顔を出させて運転中、後方からトラックに勢いよく追突され、その衝撃で犬が窓から外に放り出され、別の後続車に轢かれて命を落とした……という悲惨極まりない事態もありうるのである。
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